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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
92/318

第92話 締めは配信で

「はぁ……、疲れたぁ」


「お疲れ様、満。今日は満の好きなものを作ってあげるわよ」


「やったぁっ!」


 買い物してきた袋を台所まで運んできた満は、その場で座り込んでいた。しかし、母親からの言葉で喜びでぴょんと跳び上がっていた。

 だが、満は気が付いていなかった。今座り込んでいた姿勢が女性に多い姿勢であることに。


「お母さん?」


 くすくすと笑っている母親の顔を見て、満が不思議そうな顔をしている。


「なんでもないわ。お風呂にでも入ってきなさい」


「はーい」


 満は母親に言われて、お風呂の準備を始める。

 別に女性のままお風呂に入るのは今回が初めてではない。ところが、満の感覚というものは不思議である。服装には抵抗があるのに、不思議と平然とお風呂と入っているのだから。羞恥のポイントがちょっとずれているようだった。

 母親も母親で特に気にしない感じで、買ってきた食材を順番に冷蔵庫などへと片付けていった。


 その後、いつものルーティンで過ごした満は、夜9時を迎える。

 今日は月曜日なので、光月ルナの配信予定日である。

 買い物に行っていたので配信予告をしていなかった満は、夕ご飯の後にそれを思い出して慌てて配信予告をしていた。


 そして、夜9時を迎える。


「みなさま、おはようですわ。光月ルナでございます」


『おはよるなー』


『おはよるな~』


『あれ、今日のルナち、ちょっとお疲れ気味?』


「えっ、そんなことはありませんわよ。僕は普段通りですわよ」


『そっかぁ、うん、ごめん、気のせいだったよ』


「いえいえ。ご心配頂けているということは、嬉しいですわよ」


 満はコメントとやり取りをしている。


『ルナちは優しいなぁ』


『ルナちは可愛いなぁ』


『ルナちは見てて楽しいなぁ』


 リスナーたちがアバターのルナを褒めてくる。今の満はルナとほぼ同じ顔なので、ちょっと嬉しくなってきているようだった。


「さて、本日の配信の話題は、昨日のブイキャスの新人たちのことですわね。僕もあの配信は視聴しておりましたので」


『ルナち、早起きしてたんやな』


『まだ明るい時間の配信やのに見てたのか・・・』


「はい。やはり新しい方が出るとなると気になりますのでね。部屋中のカーテンを閉め切って、暗がりの中で拝見いたしましたわ」


『草』


『そこまでするくらい気になっているとは思わんやん』


 昨日のVブロードキャスト社の新人アバター配信者のお披露目配信を見ていたという話を聞いて、リスナーたちが実に微笑ましそうな反応をしている。


『で、ルナちは誰が気になったんだ?』


『ワイも知りたいな』


 リスナーたちから、新人四人の中で誰が気になったかを問い掛ける質問が飛んでくる。

 まぁ昨日の今日だし、話題として出してしまった以上は、この質問が飛んでくるのは想定の範囲内だ。満はとても落ち着いている。


「そうですね。やはり、鈴峰ぴょこら様と黄花マイカ様でしょうか。可愛らしさという点においてとても興味を引かれましたわ」


『やっぱルナちも可愛い系かあ』


『まぁ、レニちゃんのファンという点からして分かりきってたな』


「なんですか。まるで僕が可愛いものにしか興味がないように仰っていませんか?!」


『いまさら~』


『周知の話だゾ』


 リスナーたちの反応を見て、満はどうしたらいいのかと困っている。


「まったく、みなさんってば僕をからかわないで頂けませんかね。それでは、拝見した限りの四人の印象を話してまいりますわ」


『おっ、ルナちの評価だ』


『ルナちからすれば、初めての自分より後に誕生したアバ信だからな』


『wktk』


 咳払いの動作をしながら片目を閉じてちらりと見るルナの姿に、リスナーたちはとても過剰に反応している。


「あら、僕の後ってこれが初めてなんですのね」


『そうだよ』


『知らなかったのか』


 なんとびっくりだった。

 光月ルナが登場した後には、実はアバター配信者は新規で現れていなかったのだ。


『さすが吸血鬼やな』


『世間とずれてるね』


『ルナちから半年ほど、本当に新規のアバ信は出とらんのよ』


「へえ、そうなのですね。みなさま、よくご存じですのね」


『まぁ、俺らはアバ信を愛でるのが役目だからな』


 とあるリスナーのコメントに同意するコメントが大量に打ち込まれていく。

 そのコメントを見て、満はつい嬉しく思ってしまう。


「本当に、みなさまの愛情には感謝致しますわ。それでは、僕によるブイキャスの新人たちの印象をお話致しますわね」


『すまん、話の腰を折ってしまった』


「いえいえ、構いませんわよ。いろいろ教えていただき、本当にありがとうございます」


『ルナちはええ子やなぁ・・・』


 いろいろと話が脱線しまくったものの、満は日曜に見たブイキャスの新人アバター配信者たちの印象を語っていた。


「僕としては、みなさんを応援したいところですね。なにせ、立場は違えど、同じアバター配信者なのですから」


『ルナち、マジ天使・・・』


『吸血鬼やぞ』


 満が評価の締めに正直な気持ちを話すと、リスナーたちは感動とツッコミの言葉を大量にコメントしていた。


「それでは、ちょっと長くなってしまったですが、これにて本日の配信は終わらせて頂きます。みなさま、ごきげんよう」


『おつるなー』


『おつるな~』


『ルナち、次楽しみにしてる』


 この日の配信を終えて、ようやくドタバタした一日を終えた満なのであった。

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