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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
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第9話 二回目の配信

 日曜日の夜、満は二度目の生配信を行うことを決めた。SNSを使って告知もしたし、あとはただ時間を待つばかりだった。


「うう、緊張してきたぁ……」


 夜の9時を間近に控えて、満は部屋の中で緊張している。なにせ生配信は二度目だ。緊張で手が震える中、必死に一人で配信の準備を行っていく。

 今回の生配信は、朝に上げた飛行モーションの動画を実際にやってみせるという内容である。ついでに、屋敷の全体像も見せる予定だ。

 データを作った世貴に確認しをしてみたところ、屋敷から離れないならいいよという許可をもらっている。さすが飛行モーションを作っただけあって、屋敷の外もある程度は作り込んだらしい。ただ、屋敷の近くのデータしかないので、このような注意をされたわけである。

 最終的なチェックも行って、いよいよ二回目の生配信の開始である。


「おはようですわ、みなさま。私、光月ルナと申しますわ」


 部屋の中で突如としてお嬢様言葉で話し始める満。


『おはよるな』


『おはようー』


 リスナーから挨拶が返ってくる。

 今日の配信のスタート時点での同接は12人。ささやかながらにも二桁スタートである。


『私?僕じゃないんだ』


 すぐさまツッコミが飛んでくる。

 初回の生配信で緊張した満は、思わず一人称を『僕』と名乗ってしまったのである。

 それをしっかりと突っ込まれてしまった満は、思わず身を引いてしまう。

 もちろんその行為はアバターにも反映されていた。


「み、みなさま、一人称は『僕』のお方がよろしいと仰るのですかしら」


『もちのろん』


『僕っ娘はあはあ』


『僕の方が可愛げがある』


 なんということだろう。視聴者全員が一人称『僕』を推してきたのである。四面楚歌の満、はたしてどうしたものだろうか。


「わ、分かりましたわ。全員がそうとあっては、断れませんわね。今後は『僕』ということに致しますわ」


『88888888』


『やったぜ』


 なんてこった、味方はどこにもいなかった。

 もう一人称の事は諦めた満は、気を取り直して配信を再開する。


「それでは、僕の住みますこの屋敷をご案内致しますわ」


 咳払いのモーションをした後、満は飛行モードへとルナを変身させる。

 ぶわっと宙に舞い上がり、背中の羽がばたばたと動いている。よくも本当にこれだけの動きを放り込めたものだ。何度見ても満は感心してしまう。


「僕の動画を見て下さっているとして、屋敷の中はある程度簡単にしてしまいますわ。ですので、本日のメインは屋敷の外側となりますわよ」


 飛行モードのまま、屋敷の中を自室から玄関に向けて移動する。


『うおお、すげぇ』


『なんだよ、この屋敷の作り込みは』


『このモデラーを紹介してくれ』


『それだったら俺ですよ』


『ファ?!』


『本人降臨キターー(゜∀゜)ーー!』


 満がルナの操作に一生懸命になっている間、世貴が反応したらしく、コメント欄はお祭りになっている。

 しかも、その瞬間に接続数が増えていく。自分が原因じゃなくて増えていくものだから、満はちょっと不満のようだった。


「みなさま? 僕を放っておいて雑談とはいい度胸ですわね」


 ちょっと怒っているっぽく発言する満。


『すまなかったな、ルナ。俺の作った世界をたっぷり見せてやってくれ』


「まったく、この世界をご用頂いたのは感謝致しますわ。ですが、今は僕の世界なのですよ?」


 玄関から飛び出し、一気に上昇するルナ。

 上空からの映像に視聴者たちは思わず釘づけになってしまう。

 ルナも生配信で眺めてみて、屋敷の大きさを実感する。あと、まったく画像に乱れもないものすごい事だった。


『すげえな、これを一人で作ったのか』


『この背景で配信できるとかうらやましいぃぃぃ!』


 自分のことよりも世貴のことで盛り上がっていることに、モヤモヤを感じる満である。

 こうなってくるとヤケだった。ルナを操作して、屋敷を一周してみせる。

 細かいところまでしっかりと作り込まれていて、実質一週間で作ったとは思えないクオリティだった。

 複雑な気持ちで飛行機能と屋敷のお披露目を終えたルナは、屋敷の自室まで戻っていった。


「とまぁ、僕がこうして配信ができるのは、これを作って下さった方がいらっしゃるからですわ。そうでなければ、僕はみなさまの前に出ることもできずさまよっていたことでしょう」


『たしかに』


『毎秒配信して(はぁと)』


 なんか妙なコメントも出てくるようになった。人数が増えるのは嬉しいものの、なんとも複雑な気持ちである。


「お気に入り頂けたのでしたら、評価とチャンネル登録をお願い致しますわ。ただ、僕は気まぐれ、次の配信はいつになるか分かりませんわよ。SNSでも見て頂けると助かりますわ」


『りょ』


『くぅぅ、この宣伝上手!』


『(登録のボタンが)あるのがいけない!あるのがいけない!』


 なんかどっかで見たようなコメントまで飛び出ていたけれども、満は落ち着いて締めの挨拶をする。


「それではみなしゃ……みなさま、お付き合い頂き感謝致しますわ。ごきげんよう」


『ごきげんよう』


『乙』


 最後の最後で噛んでしまったものの、配信終了のボタンをクリックして、この日の配信を無事終えることができた満なのであった。

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