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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
73/321

第73話 光月ルナの元日配信

「あけましておめでとうございますですわ、みなさま。光月ルナが新年のご挨拶を申し上げますわ」


 何を思ったか、満は元日の夜に配信を行っていた。

 新年特番に特に興味を引かれなかったようで、やることを持て余した結果がこれである。


『あけおめ、ルナち ¥5,000』


『隙あらばお年玉スパチャ ¥2,000』


『お前らwwww』


 新年の挨拶だけでスパチャが飛んでくる。光月ルナの中の人である満は中学生なのでお年玉は嬉しいものの、本当にこれでいいのかと悩まされていた。

 今日も真家レニの配信はないらしく、さらに光月ルナの配信に人が集まっていた。

 元日の夜だというのに同接15000は、ちょっと首を捻りたくなる満なのである。

 しかし、それだけ自分の配信を楽しみにしてくれているというわけで、この事は嬉しく思う満なのであった。


「クロワ、サン。あなたたちも挨拶なさい」


 満はそういいながら、クロワとサンにお辞儀する操作を加える。

 すると、クロワとサンが可愛く頭を下げていた。


『かわええなぁ』


『ワイ、このペット買ったけどマジでかわいいで』


『うpれくだいさ』


『可愛いのはいいんだが、バリエーション欲しいな』


『よし、作ってやる。バレンタインまで待ってくれ』


『まwwたwwかww』


 リスナー同士の会話の真っ只中に、また世貴が出没していた。

 なんで正月から顔を出しているのだろうか。普通実家に戻ってないのかなと不思議がる満である。


「ま、まあ、この子たちの可愛さは素晴らしいですからね。ご購入された方々も可愛がっていただけると嬉しいですわ」


 リスナーたちが盛り上がる中、満は話を切り替えようとしている。


「本日は、先日お見せ致しました雪で遊ぼうかと思いますわ。真家レニ様には負けていられませんわよ」


『お、対抗心バリバリだ』


『あの変態物理演算を見られるのか』


『いいぞ、もっとやれ』


 楽しみにするリスナーが多いようなので、満は早速庭園へと移動していく。

 庭園に移動すると、まだ背景を変えていなかったこともあって雪が深々と降り積もっていた。


「かなり積もっておりますわね」


 庭園にはかなりの雪が積もっていた。配信していない間にリセットされるかと思っていたようだが、そうではなかったようだ。

 庭園に足を踏み入れれば、雪に足がめり込んでいく。リアルに降り積もった雪と同じようだ。世貴のこだわりが酷すぎる。


『膝まで埋まってるぞwwww』


『さすがにやりすぎだろ、これは』


 膝まで積もった雪はかなり抵抗がある。満はモーションキャプチャで普通に動いているのに、画面の中のルナの動きになかなか反映されない。


「困りましたわね。思うように動けませんわ」


『リアルにしすぎだろww』


『本気でこれは変態の所業だな(褒め言葉)』


『埋もれるのなら戻ろう、ルナち』


 さすがに動きが悪くなってきたのか、リスナーたちが心配になってきたようである。


「おほん、これでは庭を散策できませんわね。困りましたわね」


 本気で困る満である。本当は雪降る庭園でいろいろと遊びたかったのに、これでは何もできないのである。


『ルナち、雪に埋もれたお屋敷を見たいでござる』


 突然リスナーの一人が変なことを言い始めた。


『お、それいいな』


『雪で真っ白になったお屋敷か、見てみたい』


 リスナーのコメントに、満は思わず困惑してしまう。

 でも、雪を降らせて続けている以上、満自身も気にならないといえばうそになる。


「分かりましたわ。それでは、今お屋敷がどうなっているかお見せ致しましょうか」


 満は光月ルナを飛行モードに変える。

 すると、画面がふわっと浮き上がったかのように視点が高くなる。

 そのまま、空に浮き上がって空から見下ろす視点になる。


「あら、いけませんわね。画面が僕の視点になっていますわ。ちょっとお待ち下さいませ」


 満はカメラの位置に変更を加える。雪で真っ白に染まる屋敷をバックに、真っ黒の光月ルナの衣装がよく映える。


『真っ白の世界にルナちの衣装が目立つ』


『美しいな』


『眼福眼福 ¥10,000』


 なぜか何もしゃべっていないのに、スパチャが飛んでくる。

 なんとも言えない気持ちになりながらも、満は雪の積もった屋根に降りる。さすがに音も感触もないのに、不思議と雪を踏みしめた気になる。

 満はしゃがみ込むと、雪を触り始める。


『ルナち?』


『なにしてるんだろ』


『嫌な予感しかしないぞ』


 次の瞬間、振り向いたルナから雪玉が飛んでくる。

 カメラはないのでそのまま飛んできて、画面が一瞬雪で真っ白になった。


『うっは、本当に雪玉をぶつけられた気分だ』


 思わず状況に、リスナーたちも困惑しているようだった。

 それにしても、仮想空間においてこの雪の本物っぽさはシャレにならないものである。作った人間は本当に同じ人間なのかと疑いたくなる、満とリスナーたちなのである。


「うふふ、それでは本日はこのくらいで配信を終わりますわね。今年もみなさま、光月ルナのチャンネル『フルムーンライトch』をよろしくでしてよ」


『よろるなー』


『おつるな~』


 最後は屋敷の屋根の上から雪玉を投げつけるという場面で、光月ルナの元日配信は終わったのであった。

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