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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
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第67話 クリスマス合同配信・後編

 依頼していた衣装に着替えた光月ルナが画面に戻ってくる。


『おっ、ルナちのクリスマス衣装だ』


『お清楚だなぁ』


「うわぁ、ルナちいいなぁ。レニちゃんも新しい衣装が欲しくなっちゃったよう」


 光月ルナの姿に、真家レニもリスナーもかなり大きな反応を見せている。なにせ、活動を始めてからようやく二か月という新人アバター配信者がこれだけ多くの別衣装を持っているのだから。この待遇、この業界では破格なのである。


「い、いかがでしょうか」


 満は恥ずかしそうにリスナーたちに問い掛けている。

 赤くなるエフェクトまでつけてもじもじとする姿に、リスナーたちは大興奮しているようだった。


『ルナちかわいい』


『普段の黒い衣装もいいけど、赤い色も似合うな』


『これをすぐ用意できたパパママ、本当に同じ人間か疑いたくなる』


『人間だよ(笑)』


 一部冷静なリスナーもいたようだが、世貴がすぐにツッコミを入れていた。

 光月ルナのクリスマス仕様の衣装にしばらくは驚きばかりだったものの、どうにか落ち着きを取り戻す。

 雪の降りしきる光月ルナの屋敷の庭園。

 リスナーのやり取りの間に、画面の中では思わぬ動きがあった。


「うわぁ、すごい。この雪触れるし塊にできるよ。すごいすごい!」


『mjk!』


『なにその変態技術』


『ええ・・・(困惑)』


 画面の中の雪が触れて固められると分かった瞬間、真家レニは配信を忘れて雪玉を作り始めた。

 はしゃぐ真家レニに焦る満だったが、配信をここで止めるわけにもいかないので質疑応答を再開する。


「えと……、真家レニ様がはしゃがれていますので、僕だけでも進行しますね。質問は受け付けていますが、なにがございませんかしら」


 後ろでは、真家レニがいよいよ雪だるままで作り始めた。

 しかし、このヴァーチャル空間で雪だるまが作れるとは、この短時間でどんなプログラムを組んだのやら。


『それじゃ、質問いくぞ』


『おお、勇者だ』


『骨は拾ってやる』


 リスナーたちも自由だった。この状況には満も苦笑いである。きっちり光月ルナのアバターにも反映される苦笑いである。


『ルナちの憧れのアバター配信者を教えてください』


『おwいwそwれwはw』


『分かり切った答えが返ってくるぞ』


 なんともまぁ、即答できるレベル質問だった。


「もちろん、真家レニ様ですわよ。僕のこれまでの配信を見ていれば、知らなくても察せれると思いましてよ?」


『ですよねー』


『知ってた』


『レニちゃんの配信にかぶらないように時間設定してるもんな、ルナちって』


 そう、その通りである。

 そもそも満が真家レニのファンであり、その配信を逃さず追っている。真家レニの配信日が水・金・日としっかり把握済みなので、満は月・木・土と配信曜日をずらしているのである。

 開始時間を21時にしているのも、真家レニの真似である。吸血鬼にとっての朝だからという理由もあるが、真家レニの真似の方が比重としては大きいのである。

 リスナーたちもさすがに気が付いていたようだ。


『レニちゃん以外だとどうなんだろう』


 当然出てくる質問だった。しかし、これには満は答えられなかった。

 なぜなら、真家レニ以外のアバター配信者は、酷い言い方をすればアウトオブ眼中なのである。


「ごめんなさいませ。真家レニ様以外はこれといって疎いのですわ」


『まぁ吸血鬼だし仕方ない』


『最初からレニちゃん一筋なのが透けてるから問題ない』


『これから見分広げればおk』


 リスナーたちも非常に優しかった。おかげで満も気が楽というものである。

 しかし、アバター配信者をする上で他のアバター配信者に対する知識がないというの問題なのではとは思った満。冬休みに入っているから、少しは見分を広げておこうとは思ったのだった。


「見て見て、雪だるまができたよ!」


 満が考え込んだところに、真家レニの明るい声が響き渡る。思わずびっくりしてしまうというものだ。

 画面をじっと見てみると、確かにそこには雪だるまができていた。ヴァーチャル空間とは思えないくらいにしっかりとした雪だるまが。


『レニちゃんwwww』


『なんで仮想空間で雪だるまが作れるんだよwww』


『これをプログラミングしたやつは間違いなく変態だwww』


 コメント欄に大量に打たれる『w』の文字。リスナーたちは立派な雪だるまに抱腹絶倒といった感じである。

 真家レニは実に自由だった。なんとなくではあるが、彼女が人気アバター配信者になっているのが分かった気がする満なのであった。


「えっと、もう時間はいいかな。ずいぶんと長くなっちゃったな」


「本当ですわね。いつもの一時間を大きくオーバーしておりますわね」


 時計を確認する満。すでに夜の10時半を回っていた。

 いろいろと世貴の作ったものを披露していたら、思った以上に時間が過ぎてしまっていたようだ。


「それではそろそろ配信を終了させて頂きますわ。本日の配信は僕たち双方のチャンネルにアーカイブをアップしますので、いつでも見返して下さいませ」


『りょ』


『おこk』


『アーカイブたすかる』


 実に好意的な反応を見せるリスナーたちである。本当にリスナーにも恵まれたなと思う満なのであった。

 なんだかんだと大騒ぎだった真家レニとのクリスマス合同配信は、こうして無事に終了することができたのだった。

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