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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
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第61話 真夜中の満

 真夜中、満は自分部屋に敷いてある布団の中で目を覚ます。

 真っ暗の部屋の中、どうにかスイッチを見つけて部屋の明かりをつける。

 映し出された真っ黒なパソコンのモニタには、男の自分の顔が映し出されていた。服装もちゃんと男物になっていた。


「あれ、女の状態のまま寝ちゃったと思ってたんだけど?」


 自分の状態に思わず首を捻る満である。

 いくら思い出してみても、夕方に吸血鬼ルナの姿で帰って来てからの記憶がさっぱりなかった。


(うーん、気を失って、その間にルナさんが動いていたのかな。それなら男に戻っているのも納得がいくかも……)


 いろいろと考えてみたものの、何も分からなかったのでそう結論付けた満なのであった。

 ひとまず、目が覚めてしまった以上は顔を洗ってくる。

 パソコンを起動していろいろチェックを行う満だが、どうやら昨日は配信はなかった模様。過去に吸血鬼ルナが勝手に配信していた時があったので、ちょっと身構えてしまったようだ。

 チャンネルの状況を確認すると、順調に再生数が伸びている。この調子なら、先日届いた収益の見込み金額から算出するに、あっという間に世貴と羽美からの投資額を回収できてしまいそうだった。


(うーん、さすがに怖いな……。中学生がこんな金額を稼いじゃっていいのかなぁ……)


 毎日働いてくれている父親に申し訳なくなってくる満なのである。

 チャンネルの確認を終えて、満は今度は世貴に用意してもらったメールアドレスのチェックをする。そこには新しいメールが届いていた。


「えっと、差出人は……世貴兄さんからだ」


 メールを確認すると、中身は朝に送った3Dモデルの件だった。

 配信で使っているクロワとサンの販売登録が完了したらしい。相変わらず早い。審査もあったはずなのだが、ものすごいスピード登録である。

 ちなみに、登録が終わった瞬間にそれぞれ一体ずつ売れたそうな。単価1万らしいが、すぐに買い手がつくとは恐ろしいものである。ファンでもいたのだろうか。

 しかし、それは同時に、クロワとサンは光月ルナの専売ではなくなったということを示している。こればかりはちょっと寂しくなってしまう満なのであった。

 とはいえ、クロワとサンが売れることで、あの兄妹が満に対して投じたお金が回収できるのならヨシとしよう。満は気持ちを切り替えた。

 改めてチャンネルの通知を見てみる。通知の表示は消えていたのだが、どうやら新着のサイト内メールがあったようだ。

 差出人は真家レニである。どうやら光月ルナは、すっかり真家レニに気に入られているようだ。


『やっほー、ルナち。レニちゃんだよ。

 次回のコラボ配信のお誘いだよ。

 12月24日か25日にクリスマス配信をしようと思うの。一か月記念配信でこっちに誘ったから、クリスマスはルナちのお部屋でしようと思うの。

 都合のいい日を教えてくれれば、レニちゃん調整するよ。

 それじゃ、お返事待ってるね』


 相変わらずのマイペースで強引なお誘いだった。これが真家レニといえば真家レニなのである。

 でも、満にとっては嬉しい話である。突然配信に乱入したのがきっかけとはいえ、ファンであるアバター配信者と一緒に配信が行えるのだ。それは僥倖であったし、今もなお続いているので満は幸せな気分に浸れてしまうのである。

 すぐさま返事をしたいところだが、満はつい手を止めてしまう。

 それは時間のせいだった。

 今は時計を見てみると、真夜中の3時になるかどうかという時間だった。

 思い悩んだ満だったが、チャンネルのメールであるなら問題ないかと思い、真家レニのメールに返信を送ることにした。


『真家レニ様へ

 お誘いありがとうございます。つきましては、コラボ配信の日時に関しましては、25日を指定させて頂きたく思います。

 僕自身がまだPASSTREAMERのシステムに慣れておりませんので、少々余裕を頂きたく思います。

 開始時刻は、夜9時ということでよろしいでしょうか。

 当日を楽しみに待っております』


 まともに返事が書けているのか気になってしまう満だが、えいやっと勢いで送信のボタンをクリックしていた。

 メールを送った満は、勉強でもしようかと教科書とノートを引っ張り出す。今日も宿題が出ていたのだから仕方がない。


「あ、ルナさんってば……」


 ノートを開いた満は驚いている。なにせ、もう宿題が全部終わっていたのだから。どうやら吸血鬼ルナが全部済ませてしまっていたようなのだ。

 宿題が終わってしまっているとなると、いよいよやることがなくなってしまった。満は何をしたらいいのか困ってしまう。


「うん、二度寝しよう」


 やることがないなら起きていても無駄である。

 そう結論付けた満は、再び布団に入ることにしたのだった。

 ファンである真家レニの動画、基本的に全部配信を見ている。アーカイブだってちゃんとすべて視聴し終わっている。本当にやることがないのである。

 満の意識はなかったとはいえ、今の自分の体はルナ・フォルモントと共有している。彼女が活動していたのなら、体には疲れがたまっている可能性もあり得る話なのだ。

 そんなわけで、いつもの起床時間まで3時間、満は目覚ましをセットして二度寝をしたのだった。

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