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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
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第51話 存在価値

 光月ルナのチャンネルのメール箱に、真家レニから連絡が入る。


『やっほー、ルナち。

 来週いよいよコラボだね。レニちゃんに全部任せて大丈夫?

 大丈夫なら、あっと驚く配信にさせてもらうから、楽しみに待っててね~』


 満はコラボ配信のことを全部真家レニに投げてしまっていた。

 それというのも、満は配信者としてはまだひと月という若輩者であることが大きい。ここは先輩のご厚意に預かっておくべきだろう。

 メールを読み終わって次の作業と思ったところに、もう一度真家レニから連絡が入る。


『当日は直前に部屋のパスを発行しますね。レニちゃんのお屋敷にご招待なのですよ。

 内容も直前までは極秘。ルナちでも教えられないからごめんなさいね。

 そうだ。レニちゃんでも告知はしておくけれど、ルナちも配信の告知よろしくね☆』


 メールの内容を見て、満はつい笑ってしまう。

 真家レニが画面の向こうで楽しそうに文面を打ち込んでいる姿が思い浮かんだからだ。


「もう、レニちゃんってば真面目だなぁ。やっぱりアバター用の演技なのかな、あれって」


 普段の配信の時の様子とのギャップに、思わず笑みをこぼしてしまう満なのである、


 それにしても、SILVER BULLET SOLDIERの配信の時のやらかし以降、真家レニはずいぶんと光月ルナに構ってくる。

 いくらやらかしのお詫びとはいえ、ここまで絡んでくるのは珍しいと思われる。

 満自身は思ってもいない話ではあるものの、風斗やそのいとこたちと連絡を取り合った結論として、そのような知見を得たのである。

 満としても、真家レニはあくまでも憧れの一人にすぎない。今度のコラボを終えたら、少し距離を取ろうかと考えている。


「レニちゃんは悲しく思うかもしれないけど、僕もアバター配信者の一人として独り立ちしなきゃいけないもんな。いつまでも先輩の好意に甘えてちゃいけないよね」


 満は決意を固めたようだった。

 その時、スマホがぶるっと震える。

 なにかと思って覗けば、真家レニのいつもの配信告知だった。


「そういえば今日は金曜だったな。レニちゃんは水曜、金曜、日曜の21時からの固定だから、分かりやすくていいよね」


 配信告知を眺めながら、ついクスッと笑ってしまう満である。

 改めて自分のチャンネルの数値を見てみる満。

 昨日の吸血鬼ルナが勝手に行った配信のアーカイブは、すでに3万再生を突破していた。一日でこれである。

 動画としては30分もあるというのに、どうしてこれだけ動画が伸びているのか、満はちょっと理解に苦しんだ。

 興味を引かれた満は、ちょっと動画コメントを見てみることにする。

 そしたらば、ひたすらクロワとサンの姿に酔いしれるコメントが大量に書き込まれていた。


「僕単体が映っているよりコメントも多いじゃないか。ペットってこんなに強いわけ?!」


 理解が追いつかない満である。

 ちなみにこの日の朝に満が作ったペットだけの動画も3万再生を超えていた。この動画、時折光月ルナの手や足が映り込むくらいである。ほぼ全編においてクロワとサンしか映っていない。

 ますます理解に苦しむ満である。


「どうしよう。クロワとサンを一般に売り出したら、僕の配信の特徴が無くなっちゃわない?!」


 そこに気が付いてしまう満である。これは実に由々しき事態だった。

 慌てた満は、すぐさま世貴に連絡を入れようとメールを打ち込み始める。打ち込みながらちょっとずつ落ち着いてきた満は、その手をぴたりと止める。


「うん、なにも止める必要はないよね。クロワとサンは僕のチャンネルが初めてなんだ。これは揺るがない事実だよね」


 そう、初出演したチャンネルというアドバンテージに気が付いたのだ。後追いが出てきたとしても最古参ということでいいじゃないか。満はそう考えたのだった。

 すっかり頭の冷えた満は、販売しない旨の文言を全部削除して、販売に前向きなコメントに書き換えていた。

 世貴へとメールを送った後、満は時計を確認する。真家レニの配信まではまだ時間がある。


「よし、それじゃ宿題を済ませちゃおうか」


 満は気合いを入れると、真家レニの配信時間まで宿題を済ませて時間を潰したのだった。

 真家レニの配信は、最近見たドラマの感想トークだった。どうやら真家レニの中の人はドラマを録画してまで見ているらしい。

 満はドラマを見ないために、話している内容がまったく分からないし、俳優の話に及んでも誰一人分からないという結果になってしまった。


(うーん、これだけ話の引き出しが多いのも、レニちゃんが人気の秘密なのかな)


 お絵描きは上手だし、FPSもトップクラスの腕前。それに加えてトーク力もあるときたものだ。

 満は真家レニが人気な理由をなんとなく察したようだった。


「うん、やっぱりレニちゃんは僕の永遠の目標だよ」


 憧れはやっぱり憧れのまま変わらないようだった。

 真家レニの配信が終われば、時間的には夜の10時を回る。

 今日はお風呂に入り損ねていた満は、ゆっくりとお風呂に入ると学校の準備だけをして眠りについた。

 光月ルナのデビュー一か月まであと五日。真家レニとのコラボ配信はどのようなものになるのか、満は夢見ながらその日を待つのだった。

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