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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
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第5話 前準備はしっかりと

「はっ!」


 満は体の震えで目を覚ます。


「やっば……、寝落ちしてたんだ」


 口からよだれを垂らしながら顔を上げる満。目の前には煌々と明るく光るパソコンのモニタがあった。

 寝ぼけた状態ながらに状況を思い出していく満。

 その中で、パソコンのモニタに表示された時間を確認する。朝の4時を回ったばかりだ。

 満の記憶では1時過ぎまで作業をしていたはずなので、2時間半ほど寝ていたことになるようだ。

 どうにか目が覚めてきた満は、作業がちゃんとできているかを確認する。眠い中作業をしていたので、変なことをしていないか気になって仕方なかったのだ。

 どうにかでき上がった10分にも満たない動画は、問題なくでき上がっていた。ほっとすると同時に、何とも言えない恥ずかしさが満に襲い掛かってくる。


「うわぁぁぁ、僕が喋っているのに僕じゃないみたいだ。アバターが吸血鬼だからそれをイメージした喋り方をしてみたけど、……ああ、恥ずかしいや」


 真っ赤になりながら顔を覆う満である。冷静な状態で自分がやったことを思い出してみて、今さらながらに恥ずかしさに悶えているのだ。

 しかし、ここまで来て投稿しないという選択肢は満にはなかった。しかし、初めての配信を生放送でやると決めた以上、公開するのはそれより後だ。


「金曜日の夜に初配信をして、土曜と日曜で新しい動画を作るとしようかな。スマホ越しに相談に乗ってくれた二人にも悪いしなぁ……」


 満は椅子にもたれ掛かって天井を見上げながら呟いている。

 やめるのは簡単だ。しかし、総額云十万という投資をしてもらった以上、それは恩を仇で返すことにしかならない。


「学校でもう一回風斗と相談しようかな。とりあえず、今から宿題しようっと……」


 動画編集でし損ねていた宿題を、目が覚めたついでで済ませる満。そうしている間に、夜が明けたのだった。


 登校した満は、風斗と早速話し合うことにする。


「そっか、動画できたか」


「うん、自己紹介の生配信をしてから投稿しようと思うんだ」


「まあ、その方がいいよな」


 満の話を聞きながら、風斗は腕を組んで何度も頷く。


「ところで、チャンネル名は決まったのか?」


 かと思うと、思い出したかのように満に問い掛けていた。


「決めたよ。自分の名前とキャラのイメージから取ってみたんだ」


「へえ、なんていうんだ?」


「だーめ、ここじゃ教えない。風斗のいとこにも教えたいから、あとでSNSで送るよ」


 満が直接話してくれないものだから、風斗はちょっとばかりふて腐れていた。

 まぁ、これだけ不特定多数がいる中でいうわけがないというものだ。なにせ、女性アバターで配信をするなど、他人に知られたくないのだから。

 風斗は配信の方にばかり気を取られていて、どうやら満の気持ちに気が付けなかったようである。


(配信を始めれば、僕もいよいよアバター配信者の仲間入りかぁ。レニちゃんと共演できたりするのかな)


 満も満でまた邪なことを考えていた。

 そもそもアバター云々は抜きにしても配信者になる決意をしたのは、人気アバター配信者である『真家レニ』の影響によるものだ。ならばアバター配信者を始める満にとって、彼女が目標になるのは当然の話である。


 放課後、家に帰った満は早速パソコンを立ち上げる。

 画面が表示されると自分が登録した動画配信サイトのマイページを開く満。

 チャンネル名と説明文だけが書かれた殺風景なページには、動画のひとつも表示されていない。実にまっさらな新人らしいページである。

 マイページを確認すると、次は自分のアバターを確認する満。


「あっそうだ。サイトバナーとか作ってなかったや。今から作ろうっと」


 自分が操ることになる吸血鬼のアバターをぐるぐると回転させながらいい構図を探す満。

 これ以上おんぶにだっこにはなりたくないので、自分でどうにかしようというわけだ。

 配信用の背景である古びた洋館の映像を出してみるものの、どうもしっくりこない。

 仕方なくモーションキャプチャを装着して、動きながらいい画像を模索していく。

 納得のいく瞬間をスクリーンショットにおさめようとこだわっていると、これまたかなりの時間を費やしてしまった。しかし、そのかいあって、さっきまで殺風景だったチャンネルは少し賑やかになったようだった。


「これでちょっとは見れるようになったかな」


 やり切った表情で画面を見ていると、満はふと気になったものを見つけた。


「うん? なんでもうチャンネル登録者がいるんだろう」


 そう、まだ1つも配信をしていないというのに、チャンネル登録者が『3』になっていたのだ。思わずどういう事なのか首を捻る満。だが、その答えはすぐに分かった。


『満、世貴にぃや羽美ねぇに連絡入れたら、登録してくれるってさ』


 スマホを確認すると、風斗からそんなメッセージが届いていたのだ。まったく持つものは友人だとはいうけれど、思わず笑ってしまう満なのだった。

 このおかげで気が軽くなったのか、金曜日の初めての配信に向けて満の気合は十分となったのだった。


 いよいよ、配信を行う金曜日がやってきた。

 アバター配信者『光月ルナ』の初回配信の時は、もうすぐそこまで近付いてきていた。

 満は緊張のあまり、モニタの前で何度も深呼吸をしながらその時を待ち続けた。


 ……時計が夜9時を示す。

 満は配信開始をクリックして、いよいよその時を迎えたのだった。

 新人アバター配信者『光月ルナ』の結果はいかに?

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