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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
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第44話 気になるあれこれ

 翌朝、月曜日を迎えた満はいつものように目を覚ます。

 毎日のルーティンで、光月ルナのチャンネルとSNSをチェックするが、その時に飛び込んできた数値に目が飛び出る勢いだった。


「えっ、リポスト2534?!」


 SNSに上げた、昨日のペット動画の投稿が結構拡散されていた。そのせいで通知がたくさん来ていて、スマホの電池がずいぶんと減っていた。

 このままでは充電が尽きてしまうと、満はSNSの通知を切ってすぐに充電を始めた。何気に2000リポスト超えは初めてだし、満は朝っぱらから戸惑いを隠しきれなかった。


「し、心臓に悪すぎるよ……」


 大きなため息とともに、満はゆっくりと顔を洗いに一階へと降りていった。


 学校へとやって来た満は、いつものように風斗と話を話をしている。


「まったく、すっかり人気になってるな、満」


「僕が一番驚いてるよ。きっかけはレニちゃんだけど、あの後も順調に登録者数増えてるんだもん」


 満は肘をつきながら大きな息を吐き出している。

 実際、アバター配信者光月ルナのチャンネル登録者素は順調に増えていっている。三万人にまで乗ってしまったので、新人かつ個人勢としてはかなり桁外れな数値になっていた。

 この数値を誇るアバター配信者の中の人はまだ中学一年生というのだから、世の中というものはよく分からないものである。


「お嬢様系でミステリアス、一人称が僕の吸血鬼。デザインをいとこに頼んで正解だったな。作戦勝ちってもんだよ」


「もう、風斗……。他人ごとだと思っていい加減だなぁ」


 満は露骨に不機嫌そうな表情を浮かべている。風斗はそんな満を宥めるので精一杯だ。

 結局満の機嫌は直らないまま、その日の授業が始まってしまったのだった。


 昼休みを迎えると、風斗は以前女になってしまった満と一緒に逃げ込んだ屋上の出入り口の前へとやって来る。ちょっと込み入った話になるからだ。


「それで、チャンネルの収益ってどのくらいになりそうなんだ?」


「ここに誘っておいてそれを聞くわけ?!」


 風斗が切り出した内容に、思わず大声が出てしまう満だった。

 確かに人前でする話ではないけれども、開口一番がそれでは叫びたくなってしまうものである。


「そりゃそうだろ。お前はいろんな人に借金をしてる状態だ。確かに俺も過剰な投資だとは思ったけどさ、お前は恩も返さずに全部自分の懐に入れるつもりか?」


「うっ……。そ、そんなわけないだろう?」


 風斗に言われた満はぐうの音も出ない。

 確かに世貴と羽美の投資は向こうが勝手にやってことだが、そのおかげで今の光月ルナがあるというもの。

 それに加えて、追加で依頼を出した以上はその報酬を払わないといけない。現在の満は借金まみれなのである。


「はあ、次の動画のネタを考えなきゃダメだなぁ……」


「それよりも俺の質問に答えろよ、どのくらいになるんだよ」


「計算方法を知ってるの? 分からないんだったらサイトからの通知で確認するしかないよ。僕だって知らないんだから」


「う~ん、まぁ確かにそうだな……」


 ジト目で風斗に尋ね返すと、風斗はそれ以上の追及をしてくる事はなかった。ごまかすような態度の風斗には、ほとほと呆れてしまう満である。


「そういえばさ、聞いていいか、満」


「なんだよ、風斗」


 風斗は話題を切り替えてきた。


「満の女の時の姿って、あの吸血鬼なんだよな」


「うん、そうだよ」


「だったらさ、なんで太陽の下で平気なんだ? 吸血鬼は太陽の光に弱いっていうのにさ」


「確かにそうだけど、多分、僕の体基準だからじゃないかな。見た目こそ吸血鬼の姿になっているけど、体自体は僕なんだし」


 風斗の質問に、少し考え込んだ満はそのように答えていた。

 つまり、満の体を借りて姿だけが変化しているから、太陽に当たっても平気なんじゃないかというのが満の考えのようだった。


「そうかな、そうかも?」


 風斗はなんとも言えない反応を示している。納得しているのかしてないのか分からない。


「それはそれとして、収益化の振り込みは年明けなんだよね。今月分の収益の確定が来月の中旬で、申請して振り込まれるのがそこから二か月後なんだよ」


「収益の確定は早いけど、振り込みには時間がかかるんだな」


「それは僕も思うよ。……世貴兄さんたちに相談したら、大体の収益の金額が分かるかな?」


「それはいいアイディアだな。あとで送ってみるか」


 満がふと思いついたことに風斗が乗っかっていた。迷惑だからやめろという満なのに、風斗は面白そうだからと止めようとしなかった。

 結果、昼休みが終わる前に、世貴に対して収益化の概算を依頼するというとんでもメールが送られてしまったのだった。


「なんで僕のスマホから送るんだよ」


「むしろ満のじゃないとダメだろ。満に関係した話なんだからよ」


 キーンコーンカーンコーン……。


 言い争っていると、午後の授業の予鈴が鳴り響く。

 さっさと行かないと午後の授業に遅れるので、特大のため息だけついて、満は黙ったまま教室へと向かっていった。

 はてさて、今日の分までで、アバター配信者『光月ルナ』の収益金額はいくらになっているのか。その概算はその日の夜には送られてきて、その数値に満は腰を抜かしていたのだった。

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