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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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第439話 意外と本番に強いタイプ

 迎えた振替休日となる火曜日。満は、イベント会場に姿を見せていた。


「あの、僕ステージ衣装とかないんですけど?」


 当日の朝になって、満はそんなことを言い出した。


「大丈夫よ。いつもの格好のままで大丈夫だから。こういう日のイベントなんだし、ね?」


「は、はあ……」


 イリスに言われて、満はため息交じりに反応をしている。

 とにかく、今日は午前中に行われるイリスのミニライブで、その前座として一曲歌うことになっている。満は自分の持っている服の中で、一番可愛いものを選んできてやって来ていた。


「スカートの下には一応レギンスを履いておいてね。これ、一分丈だけど持ってきてるから」


「あ、ありがとうございます。そっか、スカートだから……」


「そういうことよ」


 イリスからレギンスを受け取りながら、満は女の子は大変だなと改めて感じていた。


 受け取ったレギンスを着用した満は、ライブを前に最終確認をしている。

 イリスの事務所はあまりお金もないので、こういった地方のイベントにミュージシャンを雇って生演奏ということはできない。カラオケに歌を乗せるという手法を取っている。

 一生懸命に確認している間、イリスのバックダンサーからは冷たい視線を送られ続けている。

 彼女たちがこう思うのも無理もない。なにせイリスのバックダンサーを長く務めているからだ。それだというのに、イリスがぽっと出の少女に構ってしまっているのだ。心の中で面白くないと思うのは当然である。

 いくら満がイリスの後輩だからといっても、限度があるというものである。

 そんな彼女たちの元に、練習を終えた満がやってくる。


「今日もよろしくお願いします。ごめんなさい、僕のせいでイリスさんとの練習の時間を奪ってしまって」


「ええ、まったくよ」


「失敗したら許さないわよ」


 満が謝罪すると、ここぞとばかりにいろいろと言葉をぶつけている。


「分かっています。僕はあくまでも前座ですので、うまく皆さんにつなげられるように頑張ります」


 ところが、不満たっぷりな言葉をぶつけられても、満はまったくへこたれていない。むしろ、やる気十分になっているようだった。

 さすがこれまでアバター配信者コンテストやら配管工レーシングの世界大会など、大きな舞台を経験してきただけのことはあるというものだ。

 あまりにも真っすぐな表情を見せる満に、不満たっぷりだったイリスのバックダンサーは飲まれかかっている。

 目の前にいるのは十五歳の少女だというのに、堂々とした態度にたじたじだった。


「当然でしょ。前座なんだから、しっかりとやり遂げなさいよ」


「はい!」


 満は元気よく返事をしていた。


 そして、いよいよミニライブの時間を迎える。

 時間にして、お昼前の三十分間だ。これだけあればイリスの持ち歌はほぼ全部歌えてしまう。

 地元で地道に活動しているので、地元ではそこそこの知名度はある。だが、全国規模で見てみれば、まだまだその他大勢のアイドルの一人である。イリスは今日も気合いばっちりである。


「それじゃ、頼むわね、みち……ルナちゃん」


「はい。任せて下さい」


 イリスは満を激励しようとするも、ついつい本名の満と呼びそうになってしまう。恥ずかしそうに言い直しているものの、満は気にしないで元気よく返事をしている。

 会場には思ったよりも多くの人が集まっており、地元が送り出したアイドルの登場を待ち構えているようだった。

 いよいよ時間を迎えて、場内アナウンスが始まる。その終わる頃になると、音楽が鳴り始める。


「さあ、行ってらっしゃい、ルナちゃん」


 イリスに声をかけられて、満はこくりと頷いて舞台裾から出ていく。

 イリスが登場すると思っていた会場からは、どよめきの声が響いている。

 しかし、前奏が終わっていざ歌い出すと、そのどよめきは一気に静まり返る。満の全力の歌唱に、聞き入ってしまったのだ。

 バックダンサーたちは驚いており、これまでのこともまぐれじゃなかったんだと目を丸くしている。その姿を見ながら、イリスはとても誇らしげにしている。


 しっかりと歌い終えた満は、しっかりと両手でマイクを握りしめながら、締めとなる言葉を喋り始まる。


「本日はみなさん、イリスさんのミニライブにお越し下さいましてありがとうございます。僕は前座を務めさせて頂きました、ルナと申します。それでは、ここからイリスさんのライブをお楽しみください」


 最後にマイクを握った手を前に下ろし、しっかりと深く頭を下げる。そして、イリスが待ち構えている舞台裾の方へと、笑顔のままそそくさと下がっていった。


「イリスさん、よろしくお願いします」


「オッケー。ルナちゃんが作ってくれた流れ、しっかりと活かさせてもらうわよ。みんな、頑張りましょう!」


 満からマイクを受け取ったイリスは、バックダンサーたちに呼び掛ける。

 少し戸惑っていたバックダンサーたちだが、イリスの呼び掛けにしっかりと応えていた。


 こうして、満が前座を務めたイリスのミニライブは、思った以上の盛り上がりを見せて、無事に終了することができたのだった。

 この企画をしたイリスは、実にほくほくとした笑顔を浮かべていたそうな。

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