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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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438/444

第438話 イリスとの約束だから

 あっという間に、月曜日。

 朝の配信を終えて朝食を食べていると、家の前に一台の車が止まった。


 ピーンポーン……。


 唐突に呼び鈴が鳴る。

 母親が出ようとするも、何かを直感した満は自分で出るといって、インターホンへとやって来た。


「はーい、どちら様ですかというか、環さんですよね」


『はい、その通りです。本日のイベントのためにお出迎えにやってきました』


 そう、やって来たのはイリスのマネージャーである環だった。

 彼女がやって来た理由はひとつ。イリスがお呼ばれしている子どもの日のイベントに満を参加させるためである。

 満が置かれている状態の調査を約束したので、その見返りとしてのイベントへの参加である。ちなみに、満が参加した去年のイベントもなかなか好評だったようである。

 今日のイベントは、去年同様のトークショーである。翌日にはイリスのミニライブもあり、そちらにも参加せられる予定となっている。


「本当にいいんですかね。僕みたいな素人を担ぎ出して」


『構いませんよ。あなたはあの配管工レーシングの世界大会で一躍有名になったのですからね』


「あれだけで呼ばれるの? ちょっと人材不足すぎない?!」


 確認するように問い掛ける満だったが、環から返ってきた答えに思わず表情を歪ませてしまっていた。

 しかし、自分のこれからがかかっている問題を調べてもらうので、満には到底拒否するような気持ちにはならなかった。ほぼなし崩し的に参加せざるを得ないのである。


「今は朝食の最中ですので、ちょっと待ってて下さいね」


『はい、待たせていただきます』


 最後にそう言うと、満はインターホンを切っていた。

 再び食卓に戻ると、しっかりと朝食を食べて、出かける準備をする。


「お待たせしました」


「おはようございます、ルナさん。それでは、参りましょうか」


「はい」


 満は母親に出かける挨拶をすると、環の乗ってきた車へと乗り込んで、駅前のイベント会場へと向かっていった。


 会場に到着すると、控室に満は案内される。

 そこには去年とまったく変わらない顔ぶれが待っていた。


「やあ、君は去年も来ていたね」


「去年は配管工レーシングの世界大会に出てなかったね。調子が悪かったのかい?」


「おはようございます。いやぁ、実は世界大会は強すぎるってことで出禁を食らってしまいまして……。えへへ」


 声をかけられた満は、去年とは違ってかなりスムーズに対応できているようだ。


「そうか。君のプレイ動画を見せてもらったけど、確かにあれでは出禁を食らっても仕方がない。不可能をあれだけ連続成功させているんだからね」


「うんうん。参加者が減ってしまうと、主催も困るからね」


 満が素直に話をすると、他のトーク所参加者からも同意と同情の両方の声をかけられてしまう。これには満も苦笑いである。


「まったく、ルナちゃんってばいろいろ規格外なんだから」


 イリスにも笑われてしまう満なのである。


「とりあえず、今年も今日と明日の二日間、私と一緒によろしく頼むわね」


「はい、イリスさん」


 イリスが右手を差し出してきたので、満も右手を出してがっちりと握手をする。


「おや、ずいぶんと仲良しのようだね」


「中学と高校の後輩ですからね。ねっ、ルナちゃん」


「は、はい。えへへへ……」


 イリスに紹介をされて、満は照れくさそうに笑っている。

 なんにしても、この二日間はイリスに付き合ってのイベント参加である。

 控室がこの和やかなムードだったこともあり、トークショーは無事に終わらせることができた。

 問題は翌日にあるミニライブだ。なにせイリスはこれまでの間に新曲を出している。満もチェックはしているとはいえ、完全に知っているわけではないのだ。


「それじゃ、午後は私たちと一緒にライブに向けての打ち合わせね」


「はい!」


 お昼を食べてから、満はイリスたちに連れられて体育館へと向かう。

 到着すると、イリスのバックダンサーたちが待っていた。


「ちょっと待って。またその子が参加するの?」


「ええ。今年はちょっと事情があってね」


「冗談じゃないわ。その子が出たら、私たち、かすんじゃうんじゃないの」


「そうよ、私たちは反対よ」


 イリスが話をするも、バックダンサーたちは満のことを認めようとしていないようだった。これはなんとも雲行きが怪しくなってきたようだ。


「イリスさん、これだったら僕は出ない方がいいんじゃないかな?」


「いいえ、参加はしてもらうわよ。とはいえ、ここまで反発されるとね……」


 思わしくない状況に、イリスはずいぶんと考え込み始めた。

 しばらく考えた結果、イリスはとんでもないことを思いついたようである。


「そうだわ。私の前座として一曲歌ってみるのはどうかしら」


「え、ええええ~っ?!」


 予想外の提案を受け、満はとんでもない声を出している。


「だって、み……ルナちゃんには私のイベントを手伝ってもらうことにしてるんだもの。バックダンサーと一緒に無理っていうのなら、出番を何とかねじ込むしかないわ。それこそ、文化祭で一緒に歌ったあれでいいじゃないの」


「あの時の歌ですか? ……まあ、それならいいですけど」


 イリスの機転を利かせた提案を、満は渋々受け入れることにした。

 だが、文化祭で歌った曲というと、半年前に一度歌ったきりである。それゆえに満はちょっと不安を感じているようだった。

 にこにことイリスがしてやったりと笑う中、翌日に向けた特訓が始まることとなったのだった。

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