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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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第428話 打波先生と香織

 放課後、満や風斗と一緒に帰った香織だったが、帰ってからしばらくすると一台の車が家の前に止まった。

 そうかと思えば、家の呼び鈴が鳴らされる。


「はい、どちら様ですか?」


 香織の母親が対応に出る。


『すみません。花宮さんのお宅でしょうか。私、担任の打波と申します。香織さんはいらっしゃいますでしょうか』


「は、はい。どうぞ、お入り下さい」


 いきなりの家庭訪問に驚いた母親は、打波先生を家に招き入れてしまう。


「ちょっと、打波先生。なんで家まで来てるんですか!」


 母親の呼ばれて一階に降りてきた香織は驚いた声を出している。そりゃ、担任がいきなりやってくれば驚くのも無理はない。


「なんでって、今日は配信を行う約束ではないですか。だから、挨拶がてら私が迎えに来たんですよ。森さんたちには連絡を入れてあります」


「ちょっと、勝手に話を進めないでくれませんか? ただでさえ、教師と教え子ですよ?!」


 母親を前にくつろいでいる打波先生に、香織は本気で怒っているようだ。


「えっ、どういうことなの?」


「えっとですね。このことはどうかご内密に願いますが、私は香織さんと同じブイキャス四期生の泡沫ふぃりあと申します。その縁もありまして、今日はこうして家を訪ねさせて頂きました」


 母親が驚いていると、打波先生は正体をばらしていた。さすがにこれには母親はびっくりである。


「なんで知ってるんですか!」


「それは、教師特権ですよ」


「住所録を見ましたね?!」


 香織は打波先生に対して攻勢を緩めなかった。しかし、そこは大人の余裕か、笑いながら香織の対処をしていた。


「まあ、いいじゃないですか。私だって学校に知られるつもりはないですからね。とりあえず、会社に向かいましょう」


「はあ……、分かりました」


 何を言っても無駄だと悟った香織は、おとなしく打波先生の言うことを聞いていた。


「アバター配信者としては同僚になりますけど、だからといって、成績を甘くつけたりなんかはしませんからね。公私混同はよろしくないですからね」


「それは当然ですよ。それじゃ、お母さん、行ってきます」


「ええ、行ってらっしゃい。打波先生、娘をよろしくお願いします」


「はい、お任せ下さい」


 今日が配信を行う日なのは香織から聞いて知っていたので、母親も打波先生に任せることにしたようである。


 こうして家を出発した香織は、打波先生の運転する車の助手席に座っている。

 しばらくは黙っていたものの、中心部を抜けたあたりからようやく話を始めている。


「打波先生」


「なんですか、花宮さん」


「もしかして、去年の配信が少なかったのは、このためだったんですか?」


「ええ、その通りですよ」


 香織がおそるおそる話しかけると、打波先生はその質問を肯定していた。


「中学生なのは知っていましたからね。ちょうど高校生になるこの時期を狙って、採用試験を受けたんですよ。どこの高校を受け持つかは選べませんが、希望を言えばある程度融通してもらえることはあります。マイカちゃんかぴょこらちゃん、どちらかの学校を受け持てればいいなとは思っていましたね」


「そ、そうなんですね……」


 打波先生の話を聞いていて、なんともいえない気持ちになる香織である。

 とはいえ、知っている人がいるというのはある意味心強いものだ。香織はそう思って気持ちを切り替えることにした。


「ですが、さすがに教師と教え子ですから、あんまりなれなれしく交流はできません。そこだけはお互いに気をつけましょうね」


「はい、分かっています」


 双方お互いに納得がいったところで、打波先生は一度車を止める。それというのもお昼を食べるためだ。

 今日の配信は一応お昼からなので、それまでに腹ごしらえをしておきたいからだ。


「そういえば、花宮さんは今日の話は聞いていますか?」


 ファミレスに入って注文を終えたところで、打波先生が香織に確認をしている。


「いえ。配信するから集まって下さいとしか聞いていません」


「そうですか。私もそれしか聞いていないんですよね。予定が空いているかと確認された後、空いていると答えたら集合時間を指定されただけで、内容は何も聞けていないんですよね」


「先生もですか。一体何をするつもりなんでしょうね」


 お互いの話を聞いて、ちょっと不安になってしまう香織である。


「まあ、今日は行きますと答えてしまった以上、どんな配信になるかは分からなくても行かなくてはなりません。それが私たちの役目ですからね」


「はい、そうですね」


 打波先生に言われて、香織も力強く頷いている。

 Vブロードキャスト社のアバター配信者として、やるだけをやる。応募した時からずっと持っている気持ちだ。それゆえに、内容が分からないとしても、ちゃんとやり切ろうと張り切れるのである。

 ひとまずの食事を終え、二人は再びVブロードキャスト社の建物を目指して向かっていく。


 今日は高校生になってから初めての配信だ。それゆえに香織もかなり気合が入っている。

 駐車場に止まった車から降りた香織は、一度深呼吸を行う。


「よしっ!」


 気合いを入れ直すと、打波先生と一緒にVブロードキャスト社の中へと足を踏み入れるのだった。

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