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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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第420話 お姉さんからのアドバイス

 帰り道でのこと、香織は華樹ミミこと星見の運転する車で家まで送ってもらっている。


「すみません、星見さん。家まで送ってもらっちゃって」


「いいのよ。同じブイキャスの仲間なんだし、わざわざ親御さんの手を煩わせるわけにはいかないわ」


「でも、やっぱり悪い気がしますよ」


「もう、遠慮しないの」


 助手席で遠慮がちな反応を示す香織に、星見はつい笑ってしまっていた。


「香織ちゃんは三月に受験があるのよね」


「はい。いよいよ私たちも高校生になるんですね。ブイキャスに合格してからというもの、もうそんなに経ったのかってびっくりしちゃいます」


「そうね。時間が経つのは本当に早いわ」


 香織たちがVブローとキャスト社の新人アバター配信者となってから、もう二年の月日が流れている。本当にそんなに経ったのかと驚かされる事実である。


「香織ちゃんは、将来の夢はあるのかしら」


「夢……ですか?」


「ええ、夢よ。こういうのになりたいとか、あんなことをしてみたいとか、一度くらいは思ったことがあるでしょう?」


「あ、はい……」


 夢の話をされて、香織はどういうわけか顔を赤くして下を向いてしまった。

 この態度を見て、星見はちょっと気が付いてしまったようである。


「なるほどねぇ。お嫁さんが夢とは、今どきの子としては珍しいかな」


「わわっ、なんで分かっちゃったんですか?!」


 星見にズバリ言い当てられて、香織は慌ててしまっている。


「私もそういうクチだったからなぁ。大人になったら好きな人と結婚して、幸せな家庭を築くんだって、本気で思っていたもの。現状は見ての通り、いまだに独り身なんだけどね」


「ほ、星見さんって結婚されてないんですか? い、意外です……」


 星見の話を聞かされて、香織はとても驚いている。

 星見が演じる華樹ミミというアバター配信者は、ブイキャスをまとめ上げるリーダーだ。それほどの活躍がありながらも、まだ独身というのが香織には信じられなかったようである。


「まあ、今はアバター配信者っていう仕事が恋人のようなものよ。半分、ブイキャスに就職しているようなものだしね」


「あっ、そういえば面接官をされていますもんね」


「ええ。最初こそなし崩し的だったけど、今では活動の一環になってしまっているわ。世の中、どうなるか分からないものね」


 星見はそう言いながら笑っていた。


「……香織ちゃんは、好きな人はいるの?」


「えっ?」


 唐突な質問に、香織は再び顔を真っ赤にしてしまう。実に分かりやすい反応だ。


「いるのね。当ててあげましょっか」


「え、ええ? や、やめて下さいよ……」


 運転をしながら、横目で香織に話しかけている星見。当てようかなんて言うから、香織は本気で恥ずかしがりながらうろたえている。


「そうね。からかうのはあんまりよくないか」


 香織の慌てようを見て、星見は思いとどまったようだ。


「でも、人生やブイキャスの先輩としてアドバイスはしてあげられるわ。あまり、状況に流されないようにね。時には自分から動かなきゃ」


「は、はい」


 星見に言われて、香織は前を見てしっかりと返事をしていた。

 その表情を見た星見は、安心したかのように笑っていた。


 そうしている間に、星見の運転する車は香織の家に到着する。

 助手席の扉を開けて、香織は車から降りる。


「それじゃ、香織ちゃん。受験、頑張ってね」


「はい」


「それと、告白するなら、早めの方がいいわよ。間にはバレンタインもあるんだし、思いっきりいっちゃいなさい」


「も、もう……、星見さんってば!」


 意地悪そうに笑いながらアドバイスを送ってくるものだから、香織はちょっと怒っているようだった。だが、星見はくすくすと笑い続けている。

 しばらくすると、家の扉が開いて母親が出てくる。


「これは星見さん、わざわざ送ってきて下さったんですか?」


「ええ、今はスタッフの数が少ないですし、私は運転できますから、先輩としてこのくらいはしませんとね」


「お電話くださったら、迎えに行きましたのに……」


「いえ、私たちの都合をそこまで親御さんに押し付けたりしませんよ。ですので、これからも配信の後は、私やスタッフが送り届けますのでご安心下さい」


「あ、ありがとうございます」


 Vブロードキャスト社の雇用者としての責任だからと、母親の申し出をすっぱりと断る星見である。


「それでは、私はこの辺で。受験が終わったら、また配信でお会いしましょう」


「はい、ありがとうございました」


 挨拶を終えると、星見はそのまま車を走らせて帰っていった。遠回りだというのに、本当にお疲れ様としか言いようがない。


「自分から動く……か」


 星見が去っていく様子を見守りながら、香織はぽつりとつぶやいている。


「うん、そうだよね。私、頑張ってみる」


「どうしたの、香織。急に気合いを入れて」


「お母さん、なんでもないよ。それよりも早く中に入ろうよ。外は寒いんだし」


「ええ、そうね。それじゃ、お風呂を沸かすからゆっくり休んでなさい」


「はーい」


 配信を終えて家に戻ってきた香織は、なにやら決意を固めたようである。

 星見に言われた言葉を、しっかりと心に刻みつけながら……。

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