第419話 ゲーム大会の配信を終えて
「そんなわけでして、ブイキャスの新年ゲーム大会はいかがでしたでしょうか」
すべての予定が終了して、華樹ミミが締めに入っている。
『いやぁ、久しぶりのぴょこまいで満足』
『得意不得意が見られて、実によかった』
『タクミ様が意外とおいしいところをさらっていてワロタ』
「ぐぬ……」
辛辣なコメントも飛んできて、蒼龍タクミは少々不本意のようである。
この反応には、四期生であるマイカたち以外は、おかしくて笑っているようである。
「それでは、ブイキャスの新年ゲーム大会は、この辺で終わりとさせていただきます」
「リスナーたちの今年がいい年になるといいな!」
「お時間となりましたので、これにて終了いたします。今年も、私たちブイキャスをよろしくお願いしますね」
「ありがとうございました」
『おつかれ~』
こうして、無事に配信が終了したのだった。
実に二時間半にもわたる配信となってしまったので、みんなは疲れた様子で休憩室へと向かっていった。
「いやぁ、30分もオーバーしちゃいましたね」
「まっ、予想の範疇だろうよ。第一、あそこで延長戦とか言い出したケンが悪い」
「仕方ないだろう。あのまま終わっていたんじゃ、みんなきっと不満だっただろうからね」
「まあまあ、みなさん落ち着きなさいよ」
時間が延びた原因を巡って、男性陣が口論になりかけている。
そこに、華樹ミミが両手を叩きながら割って入っていた。
「確かに、腐乱ケンが延長を言い出したことで延びちゃいましたが、おかげで大盛り上がりでしたからね。結果オーライということで、ここはひとまず胸三寸にしましょう」
「ぐぅ……」
「まっ、ミミさんにそう言われてしまえば、納得するしかないですね」
さすがは通称ブイキャスのまとめ役である華樹ミミである。彼女が言葉を発すれば、まとまらないものもまとまってしまうのである。
「あれ? そういえばふぃりあさんは?」
「そういえば見えないですね」
その中、マイカとぴょこらが自分と同期の泡沫ふぃりあの姿がないことに気がついた。
「そういえば、確かにいねえな」
「ああ、ふぃりあさんならどこにいるのか、私は知っていますよ。すぐにここに来ると思いますので、待っていましょう」
「ふぃるむが言うのなら、そうするか」
どうやら、瀬琉ふぃるむが二人がいない理由を知っているみたいだ。なんだかよく分からないが、その言葉を信じて休憩室で待つことになった。
「お待たせしました」
外から声が聞こえてくる。
「今日の配信のことを聞いて、朝早くから来て給湯室をお借りしたんですよね」
「まったく、聞かされた時は耳を疑いましたね。まあ、今日の配信の打ち上げとしてはいいかと思いますけど」
ふぃるむの言葉通り、泡沫ふぃりあがしばらくして戻ってきた。今日は一人でブイキャスの配信を手伝っている犬塚も一緒だった。
その手には、カセットコンロと鍋が持たれていた。
「寒い時は、みんなで囲んで鍋をつつき合うものです」
「とはいっても、具材を放り込んで加熱するだけの手抜きもいいところの鍋ですけれどね」
「おう、それでもいい。ちょうどみんな腹が減ってるだろうからな」
「食費が浮くので助かりますね」
「ふぃるむ、本音がだだ漏れだぞ」
鍋のセッティングが行われる中、思わず飛び出した瀬琉ふぃるむの本音に、みんなが大爆笑である。
カセットコンロに鍋をセットしてしばらくすると、ぐつぐつと煮立ってくる。
「よーし、今日の配信、お疲れ様だぜ!」
「おつかれさまー!」
蒼龍タクミが音頭を取って、一緒に鍋を食べ始める。
「そういえば、マイカちゃんとぴょこらちゃんは、受験はどうなのかしら」
「あっ、ちゃんと勉強はしてますよ」
「もちろんよ。進学は地元の高校だし、よっぽどのことがない限り、落ちることはまずはないわ」
華樹ミミが話を振ると、マイカとぴょこらはそれぞれ答えていた。ぴょこらの答えからは自信があふれ出ていた。
「マイカちゃんも地元の高校?」
「はい、そうです」
ふぃりあの質問に、マイカは素直に答えている。
「ということは、ぴょこらちゃんは私の後輩ということになるのかしらね」
「あれっ、ミミ先輩って私と同郷だったんですか」
「そうよ。卒業生名簿でも図書室で探せばすぐ分かると思うわ」
「いや、さすがに個人情報なので、そこまでする気にはならないわ……」
華樹ミミがしれっと答えれば、さすがのぴょこらもおそれ多いと思ったのか遠慮しているようだった。
「高校への進学だと、同じ中学のやつはほとんど一緒だから、あんまり悲壮感もねえよな」
「ですね。私の場合、学年全員がそのまま高校に進学したので、本当に高校生になったのか疑っちゃいましたよ」
「それは確かに、疑いたくもなるな」
瀬琉ふぃるむの証言を聞いて、蒼龍タクミも苦笑いである。
「まあ、いろいろ環境が変わるかもしれないが、無事に受験をパスできるように心より願っているよ」
「はい、ありがとうございます。頑張って幼馴染みと同じ高校に通えるようにします」
「あらあら、それは頑張ってもらわないとね」
マイカがうっかり口走ってしまったがために、華樹ミミがかなり興味を示したようだった。
華樹ミミの反応に、マイカはきょとんとした顔をしている。
その隣では、何やってるのよと言わんばかりの顔で、ぴょこらがドン引きしていた。
そんなこんなで、Vブロードキャスト社の新年ゲーム大会の配信は無事に終了した。
笑いあり、驚きありの配信となったが、それぞれに満足した様子で帰宅の途についたのだった。




