第416話 ブイキャス配管工対決・その2
勝負は二周目に入っている。
マイカが光月ルナしか成功させたことのないショートカットを成功させて、再び首位に躍り出る。
しかし、すぐ後ろにはぴょこらの操るゴーリーが既に迫ってきていた。
ショートカットの着地地点から少し進めば、様々なアイテムを入手できるワンダーポイントが待ち構えている。ここで入手できるアイテムによっては、いくらでも順位をひっくり返せる可能性があるというわけだ。
(いいアイテム下さい!)
マイカは祈るようにしてチェックポイントを通過する。
ピコピコという音を立てながら、マイカのアイテムボックスの中のアイテムの抽選が行われる。
ピコンピコンという音とともに選ばれたアイテムに、マイカはちょっとだけがっくりする。
『赤マッシュかぁ』
『一瞬だけの加速だから、あんまり期待できんな』
見ているリスナーたちもがっくりしているようだ。
「赤マッシュね。避けきれるかしら?」
ほぼ後ろにつけているぴょこらが、マイカのアイテムを見て笑っている。
そのぴょこらが引いたのは、一周目に続いて追尾機能のある赤メットである。
『うっわ、なんて引きなんよ』
『マイカちゃんに対して、敵意強すぎwww』
『ミミたそとふぃりあままが完全に蚊帳の外やんwwwww』
リスナーたちはまったくもって冷静である。
そう、プリンを使っている華樹ミミとミドルを使うふぃりあは、二人の後方でのんびりと進んでいたのだ。現役中学生であるマイカとぴょこらとは違い、配管工レーシングにはあまり親しんでいないらしく、かなり慎重に操作しているためこの状態になっているというわけだった。
「まったく、ミミのやつときたらテレビゲームはさっぱりだな」
「仕方ありませんよ。それを言うなら私たちだって、テレビゲームにはあまりなじみがないじゃないですか」
「そうだよ、タクミ。それにしても、この二人と後でやることになるのかと思うと、ちょっとぞくぞくするね」
「おいおい、ケン。ずいぶんと黒い笑みを浮かべてるじゃねえか」
観戦している男性陣は、それぞれの感想を持ちながらレースを見守っているようである。それにしても、腐乱ケンはかなり自信がありそうな感じに見える。
だが、今はまだ女性陣のレース中だ。話もそこそこに、男性陣は観戦に戻っていた。
ぴょこらは赤メットを使うタイミングを見計らっている。
(まだ使うには早いわ。多分、マイカは二回目のショートカットも狙っているはず。使うなら、そこね)
マイカの操るハッカンの後ろにつけるぴょこらが操るゴーリー。じりじりとその差を詰めにかかっている。
だが、最高速はゴーリーの方が圧倒的に速い。だというのに、ぴょこらは抜かさずに後ろにつけてじりじりと焦りを誘っているようだ。
「こいつは、完全にタイミングを狙ってやがるな」
「多分、ショートカット潰しだろうね」
「ぴょこらっていたずらっ子設定だけど、しっかりと見てるから怖いよな」
「それそれ」
観戦している男性陣は笑っているようだ。
そうしている間に、二周目が終わる。
最初のコーナーに差し掛かった時、ついにぴょこらが動いた。
「悪いけれど勝負だからね」
その言葉とともに、タイミングを見計らっていた赤メットが発射される。至近距離での追尾機能のある赤メットだ。普通なら躱しようがない。
ところが、マイカはそのタイミングで同じく様子を見ていた赤マッシュを使う。
「なっ! ここで使うなんてコースアウト必至よ?!」
思わぬ行動に、ぴょこらがびっくりしている。
だが、これは実に作戦だった。
「ショートカットはここ一か所じゃないもん!」
マイカはそう叫ぶと、そのまま第一コーナーを直進して飛び出してしまう。
「えっ?!」
思わぬ行動にぴょこらは驚いてしまう。
急加速した上にコースアウトの位置に来たことで、赤メットは空振りしてしまう。
ところが、この次に信じられないことが起きた。
急加速したマイカの操るハッカンは、第二コーナーから右カーブして戻ってきたコース上に見事着地したのである。
「おい、うそだろ?!」
『ええええっ?!』
『そっちのショートカット?!』
『誰か知ってたか?』
『初めて見た!』
蒼龍タクミはもちろん、リスナーたちも全員びっくりである。
赤メットを放ったぴょこらは、予想外の行動に驚いてしまい、そのままコースアウトしてしまう。
「あっ……」
モクモクに釣りあげられて、ぴょこらは第一コーナーから再スタート。その間にも、ハッカンとの距離はどんどんと開いていっていた。
「やられたにゃ……」
ショックのあまり、ぴょこらは語尾が戻ってきていた。
結果として、二度のショートカットを決めたマイカが、アイテム運にも恵まれたこともあって僅差でぴょこらに先着していた。
というわけで、女性陣の勝ち上がりは黄花マイカと鈴峰ぴょこらの二人と決まったのである。
ちなみに、華樹ミミと泡沫ふぃりあは、二人のゴールから一分近く離されてのフィニッシュだった。ゲームになじみのない二人には、ちょっと厳しかったようである。
最初の戦いが終わり、マイカとぴょこらは笑顔でその手を取りあっていたのだった。




