第415話 ブイキャス配管工対決・その1
次のゲームが発表される。
「やっぱり、こういう時のゲームといえば、これだ!」
「配管工レーシングです!」
『ぶっwww』
『やっぱそれかぁ』
第二ステージのゲームが発表されると、リスナーたちは大いに盛り上がっている。
「満天楼さんから、許可はいただいております」
『律儀やなぁ』
『配信に許可は要らなかっただろうに』
「筋は通すもんだぜ。俺らは企業勢なんだからよ」
『たしかに』
Vブロードキャスト社のアバター配信者であるので、一般アバター配信者とはわけが違う。だからこその、配信許可というものだろう。
そんなわけで、第一回戦が行われる。
対戦相手は女性陣四人だ。
「マイカ、真剣勝負だから、手加減なしなのにゃ!」
「わ、私だって負けませんよ」
マイカとぴょこらの二人も、すっかり対戦モードである。
「ふふっ、可愛い子たちには負けられませんね」
「第一期生としてブイキャスを率いている私も、リーダーとしての意地がありますから負けませんよ」
ふぃりあと華樹ミミも気合い十分のようである。
『マイカちゃんは、ハッカン使いか』
『ぴょこらちゃんはゴーリーみたいだぞ』
『よく見たら四人ともキャラ違うし、これは楽しそうだ』
リスナーたちがわくわくしている中、配管工レーシングの対決が始まる。
スタートが切られると、マイカの操るハッカンが勢いよくスタートを決める。
『マイカちゃん?!』
『このスタートの良さは、なんかルナちを思い出すな』
『あー、同じハッカン使いだからな』
リスナーたちのコメントに、ちょっとびっくりするマイカである。
実は、ルナちこと満の真似をしているので、そこをあっさりと指摘されて驚いているというわけなのだ。
だが、コースは一周が長く単純なラークルートである。最高速の遅いハッカンでは、簡単に逆転を許してしまう。はたしてマイカに勝機はあるのだろうか。
「さあさあ、いきなり波乱のスタートを切ったブイキャス配管工対決だが、この中で勝ち上がってくるのは誰だろうかな」
「スタートダッシュを使ったのはマイカ一人なので、他の三人はこのゲームには親しみがないみたいですね」
「まっ、俺たちもゲームを必ずしも遊んでいるわけではないからね」
女性陣の対決を見守る男性陣は、実に冷静な感じで見守っている。
一周目も中盤にかかってくると、出遅れたメンバーがマイカの操るハッカンに迫ってくる。
「マイカ、悪いけれど勝つためにゃ」
「えっ?」
その次の瞬間、ぴょこらの操るゴーリーから赤メットが放たれる。
「わわわわっ!」
追尾機能のある赤メットを躱せるわけもなく、マイカの操るハッカンはその場で大スピン。あっという間に順位を落としてしまう。
「ひっどーい、ぴょこらちゃん!」
「これが勝負なのにゃ!」
『ぴょこらちゃん、相方にも遠慮なし!』
『いたずら好きはだてじゃないなぁ・・・』
まったく手加減のないぴょこらの妨害に、リスナーたちは感心しつつもマイカに同情しているようだった。
結局、このスピンの間にマイカが抜かされなかったのは、ミドルを使っているふぃりあだけだった。
気を取り直して、マイカは抜けていったぴょこらと華樹ミミを追いかける。だが、操縦性が悪くとも最高速の速いゴーリーに追いつくのは至難の業である。
結局、ふぃりあにも追い抜かれて最下位になってしまったマイカは、一周が終わった時点である賭けに出ることにした。
(満くん、力を貸して!)
マイカは必死に祈る。
ラークルートの最初のコーナーを左に曲がり、次の右に曲がるコーナーに差し掛かった時だった。マイカはその賭けを実行に移す。
『おいおい、まさか・・・』
『これはやるのか?』
『ルナち以外、成功者のいないあれを・・・』
「えっ、まさか?!」
その瞬間、誰もが息をのんだ。
「いっけーっ!」
右に曲がるカーブを、果敢にも左にハンドルを切って飛び出していく。
そう、ラークルートに唯一存在するショートカットである。コースの半分をすっ飛ばしてしまうこのショートカットは、まだ光月ルナ以外の成功者がいないという超難易度である。
なにせ、踏切りのタイミングがシビアなのだ。
「なにもこの場でそんな大勝負に出なくても……」
「でも、決まれば間違いなく盛り上がりますよ」
「度胸はさすがだな」
男性陣が見守る中、運命の瞬間がやってくる。
見事、マイカはショートカットに成功した。
「やった!」
『おお、すげぇっ!』
『まさかこの瞬間をまた見られるとはな!』
『成功報酬だぜ ¥12,000』
なんと、マイカは無事にショートカットを決めてしまった。
これで一気にまた首位に返り咲いた。
だが、これがよろしくなかったのか、ぴょこらの闘争心に火がついていた。
「勝負は三周! まだ一周半残ってるんだから、まだまだ勝負は分からないわ!」
熱くなったせいか、ぴょこらはついいつもの語尾をつけ損ねてしまう。
『おっ、ぴょこらちゃん、本気モードか?』
『ゴーリー使ってるし、一周目の差もあるからすぐに追いつけそうだもんな』
『これは面白くなってきたぞ』
リスナーたちも大盛り上がりである。
ブイキャス新年ゲーム大会。
その第二ゲームである配管工レーシングは、最初の女性陣対決から大盛り上がりなのである。
さあ、この対決の勝者は一体誰なのだろうか。




