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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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409/444

第409話 これでいいのか?

「それじゃ、私は東京に戻るね、パパ、ママ」


「ああ、気を付けるんだぞ、小麦」


「私の子だから大丈夫だとは思うけれど、ちょっとうっかりだから心配ね」


「もう、パパもママも心配性なんだからぁ」


 家の前で、大学の講義の開始に合わせて戻ろうとする小麦を、グラッサと父親が見送っている。


「そういえば、ママ」


「何かしら、ドーター」


「ママはまだ戻らなくていいの?」


「ええ。私は、あれを一緒に連れていきたいと思うからね」


 グラッサはちらりと家の方へと視線を移す。

 真祖の吸血鬼であるルナ・フォルモントのことだ。彼女は基本的に日中は寝ているので、ここ最近の逆転生活で寝たまま起きてこなかった。


「もう……。ルナ・フォルモントにも見送ってもらいたかったなぁ」


「すっかり打ち解けてしまったな、グラッサも小麦も。討伐対象だったんだろ?」


「ええ、まあ、そうね」


 父親の言葉に、グラッサはにっこりと笑っていた。

 確かに、退治屋であるグラッサと怪異であるルナ・フォルモントは敵対関係にある。それが、今ではすっかり打ち解けてしまっている。世の中どうなるか分かったものではない。


「それじゃ、そろそろ出ないと電車の時間に間に合わなくなるから、私は行くわね」


「ドーター、駅までなら送るわよ」


「いいの。今日はなんだか歩きたい気分だから」


 小麦はにっこりと笑っている。


(はぁ……。満くんからちゃんとした返事が欲しかったなぁ)


 小麦はちょっと心残りを思いながら、芝山家を出発して駅に向かおうとしている。

 まさに家を出ようとした時だった。


「小麦さん!」


 呼ぶ声が聞こえてくる。

 くるりと振り向くと、そこにいたのは男の子に戻った満だった。


「満……くん?」


 びっくりして小麦は立ち止まってしまう。

 一方の満は、相当慌てて来たのか、かなり呼吸がしんどそうだった。さすがは一月の朝、吐く息が白くなる。


「もう、どうしたのよ、満くん」


「ちょっと前に連絡した通り、見送りに来たんです」


「連絡? 見ていないんだけど……。ああ、もしかしてPASSTREAMERで連絡くれたの?」


 満の話す内容に困惑しながらも、小麦は思い当たったらしく、大声を出している。


「はい、そうですよ」


「ごめん、今日は帰る日だから起動してなかったんだ。でも、わざわざ見送りに来てくれて嬉しいよ」


 満に謝りながらも、小麦は照れくさそうに笑っている。


「でも、どうしたの」


 さすがは小麦。満の様子がおかしいことに気が付いたようだ。


「はい、今日、小麦さんが戻ってしまう前に、どうしても伝えておかなきゃと思ったんです」


「どうしても伝えたいこと?」


 小麦が聞き返すと、満はこくりと頷いている。

 なんだろうと小麦は満をじっと見つめる。

 いつもならばここで満が顔を背けそうになるところだが、今日の満はいつもとは違い、じっと小麦の顔を見つめ続けている。さすがに、いつもとは違う満の様子に、小麦の胸も高まってしまう。両親が見ている前だということを忘れてしまうくらいに。


「……昨日、幼馴染みの二人と話をしたんです」


「風斗くんと香織ちゃんだっけか。そっか、何を話したの?」


 幼馴染み同士の会話ということで、小麦は気になってしまう。


「ここではっきりさせておけって言われました。いつまでもあいまいにしているとダメだって。小麦さんの言ったとおり、僕の性別も安定しない可能性がありますからね」


「ふむふむ」


 小麦は相槌を打ちながら、満の話を聞いている。


「そこで、僕はひと晩悩みました。悩んで悩んで、ひとつの結論を出しました」


 満はとても自信たっぷりな様子で、小麦に向かってはっきりと言いきった。

 満と小麦の様子を、グラッサと父親も真剣な様子で見守っている。満が出した結論というのはどういうものだろうかと、とても興味を抱いているようだ。

 そして、満と向かい合っている小麦もかなり緊張している。それというのも、前日に一度断わられているからだ。またここでも言われるのではないかと、かなり強く警戒しているのである。

 まだ一月の年が明けたばかりの朝だ。寒い空気が満ちている中、その場には沈黙が漂っている。

 満は大きく深呼吸をすると、改めて小麦の顔をしっかりと見つめている。


「小麦さん」


「は、はい!」


 名前を呼ばれて、つい背筋を伸ばして返事をしてしまう小麦である。それだけ緊張しているのだ。


「僕に対して告白してくれたこと、とても嬉しく思います」


「ど、どういたしまして……」


「今までを思い返して思った僕の正直な気持ちを伝えます」


 満がこう告げれば、小麦はごくりと息をのんでしまう。どんな言葉が告げられようと、しっかりと受け止めようと、覚悟を決めるためだ。

 満が次の言葉を告げるまで、あまり長くはなかっただろう。だが、その時間は、小麦にとってはとても長く感じられた。

 ゆっくりと満の口が動く。


「小麦さん、僕も好きです。小麦さんの言う好きとは違うかもしれませんけれど、僕にとって小麦さんは大切な人です。これからもアバ信仲間としてお付き合いしましょう」


 社交辞令のような言葉が返ってきたけれど、ひとまずはこれでいっかなと思う小麦である。


「あらら、これはずいぶんと前途多難じゃないかしら」


「やっぱりだったな。でも。これはこれで進展があったと見ていいんじゃないかな」


「ええ、そうね。私とダーリンは、逆だったものね」


「そうだな」


 恥ずかしそうに満の差し出した手を握る小麦。

 その様子を見ていたグラッサと父親は、とりあえずこれでいいかと微笑ましくその姿を見つめていた。

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