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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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第402話 温かい年の瀬

 外に出ると、さすがに大みそかの夜は寒かった。


「ううっ、寒い……」


「もう、満くん、大丈夫?」


「ええ、大丈夫ですよ。ちょっと温度差で寒く感じただけですから」


「無理しないの。ほら、マフラー半分こしよ?」


「えっ、ちょっと、小麦さん?」


 震えた満に対して、小麦はマフラーを半分譲ってくる。まるでこのためだったのかのように、長いマフラーをしていたようだ。


「グラッサよ」


「何かしら、ルナ・フォルモント」


「お前さんの娘は、意外とあざといようだな」


「私じゃなくて、ダーリンに似たのよ」


 ルナ・フォルモントにツッコミを入れられて、グラッサは呆れた様子でそう答えていた。

 実際、グラッサに惚れこんだ夫は、あの手この手でグラッサの気を引いてきた。退治屋として何も興味はなかったというのに、熱心な今の夫の熱意に負けて、こうやって結婚したのである。

 今でこそ、ものすごく夫婦仲はいいものの、決していいなれそめではなかったようだ。


「でも、あの二人ならうまくいく気がするのよね。私たちのようにね」


「なんだ。まったくこの年の瀬に惚気話はたくさんだわい」


 自慢げに微笑むグラッサに対して、ルナ・フォルモントはお腹いっぱいといった様子である。

 このような話をしている中で、満の両親はとても満足そうに二人の様子を見ていた。


 神社まで歩いている中、除夜の鐘が鳴り響いている。

 そんな中、満は小麦とくっつきながら困った表情を浮かべている。


「小麦さん、ちょっと離れてくれませんかね。なんだか、その、恥ずかしくって……」


「いいじゃないの。今は女の子同士だし、くっついてても問題ないって」


「うう、そういう問題じゃないんだけどなぁ……」


 いつものようににこやかに笑う小麦に対して、満はどうにもこうにも落ち着かない感じである。


「私は、満くんのことが好きなんだよ。だから、一緒にいる時くらい、こうやって近くにいたいんだ」


「こ、小麦さん。恥ずかしいこと言わないで下さいよ……」


 頬を赤らめながら小麦が言いきってくれるので、満はどうしたらいいのかものすごく迷っているようである。


「妬けるわね、ダーリン。私たちも久しぶりに腕を組みましょうか」


「うん? ああ、そうだな。娘たちには負けてられない」


 グラッサも何を思ったか、小麦に張り合って腕を組んで歩き始めた。


「はははっ、まったく、みんな見せつけてくれるな。なあ、母さん」


「本当にね」


 とかいう満の両親も、しっかり父親が肩に手を回して体を寄せ合っている。

 この空間で、ただ一人のルナ・フォルモントは、ちょっといたたまれない様子である。


「なんだなんだ、みなして見せつけてくれるな。妾だけが一人で浮いてしまうではないか」


 そう、人数が奇数なこともあって、そろいもそろってペアを作れば、どうしても一人余ってしまうのである。この状況に、ルナ・フォルモントは抗議をしているというわけなのだ。


「だったら、ルナさんは僕たちと一緒に……」


「ルナ・フォルモント。今だけは満くんは私のだからね」


 満が見かねて呼ぼうとしたら、小麦が満をぎゅっと抱き締めて離そうとしなかった。


「やれやれ……。まるで妾が邪魔者ではないか」


「そんなことはないですよ。満くんと出会えたのは、ルナ・フォルモントがいたからといっても過言じゃありませんからね。そうじゃないと、私たちはただのアバ信として交流してただけだと思いますもの」


「まぁ、そうだな。血を吸うために外に出ておったところで、偶然会ったのが始まりだったな……」


 ルナ・フォルモントが小麦と初めて会った時のことを思い出していた。その時から、小麦とルナ・フォルモントとの交流が始まり、そのルナ・フォルモントと似た外見を持つ少女となった満と出会ったことで、満との交流も始まったのだ。


「恋のキューピッドってやつですよ、ルナ・フォルモントは」


「はぁ……。あんな気まぐれ怪異と同格見られたのでは、褒め言葉になっておらんなぁ……」


「あっ、そういうのっているんだ」


「いるのだよ、これが。とはいえ、今の満たちを見ていると、まあ、悪い気はせん」


 気を悪くしたように言いながら、ルナ・フォルモントは照れくさそうに笑っていた。

 そんなこんなの話をしていると、満たちは神社へと到着する。


「うわぁ、さすがに人が多いわね」


「本当ですね。はぐれないようにしないと」


 満はそう言うと、しっかりと小麦の手を握っている。


「えっと……、満くん?」


「い、今だけですから。せっかく年越しを一緒に過ごすんですし、離れ離れになるのはよくないでしょう。ご両親といらっしゃるわけですし」


 予想外の行動に小麦が戸惑っていると、満は目を泳がせながら小麦に対して手を握った理由を必死に繕っていた。

 顔を真っ赤にして、小麦の顔を見ないようにしながら説明する満の姿に、小麦は嬉しそうに笑顔を見せている。


「うん、ありがとう」


 まるで太陽のような明るい笑顔を向けられてしまうと、満は恥ずかしそうにすぐに顔を背けてしまっていた。


「……青春ねえ」


「本当にな。私たちはもちろん、周りにもこれだけ人がいるというのに、見せつけてくれるものだ」


「一途なところは、ダーリンそっくりね」


「ははっ、そうかもな」


「やれやれ、見ておるこっちが恥ずかしくなってくるわい」


 大人たちがそろって呆れる中、満たちは年越しと初詣の目的地である神社の中へと足を踏み入れていく。

 年越し前にお参りをしてしばらくすると、どこからともなくカウントダウンが始まる。


「あけまして、おめでとうございます!」


 年越しの瞬間、神社の中には元気な声が響き渡るのだった。

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