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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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第394話 クリスマス・家族の絆

 満の作ったケーキと買ってきた料理を平らげて、あっという間にクリスマスパーティーは終わってしまう。


「いやぁ、食ってだべって終わっちまったな」


「うん、そうだね。個人の家でやるのなら、これが精一杯だと思うよ。それに、ここ僕の部屋だし」


「だな」


 満と風斗は話ながら笑っている。


「悔しいなぁ。私はケーキは作れないから、負けた気がするわ。タルトなら作れるのに」


「それだったら、僕はタルトが作れないから、引き分けじゃないかな」


「満くん、やり方覚えたらさらっと作っちゃいそうだから、やっぱり負けだと思う」


「こだわるわねぇ。気持ちは分からないことはないけど」


 香織と満のやり取りを見て、グラッサはおかしそうに笑っていた。


「さて、私はもう帰らせてもらおうか」


「もうですか?」


 グラッサが立ち上がるのを見て、満はびっくりしている。


「ええ。せっかくのクリスマスだというのに、放っておいてはダーリンが寂しがるからね。ちょっと買い物をしてから、腕を振るってあげないと」


「本当にグラッサさんたち、仲がよさそうですねよね」


「よさそうじゃなくて、いいのよ。どんなに離れていても、私はダーリン一筋なんだから」


「うわぁ……、かっこいい……」


 グラッサが堂々と言い放った言葉に、満たちは感動している。


「では、私はこれで失礼するわ。ケーキ、おいしかったわよ」


 グラッサは立ち上がると、手を振りながらそのまま帰っていこうとする。満の母親がその後を追いかけ、見送っていた。

 部屋に残された満たちも、もう夕方ということもあってそのまま解散となった。今夜に行うクリスマス配信を見てくれるようにしっかりとお願いしながら。


「あら、二人も帰しちゃったのね」


「うん、僕の準備もあるし、クリスマスだから家族の方がいいだろうしね」


「そっか、そうよね」


 満の言い分に、どういうわけか母親は表情を曇らせていた。どういうことなのか、満はついつい首を傾げてしまう。


「お母さん、どうしたんだよ。とりあえず、冷蔵庫に残っているケーキは、お父さんの分だから夜は忘れないでよね。僕は配信の準備を始めるから」


「分かったわ。……はあ」


 満が部屋から母親を追い出そうとすると、母親はどういうわけかため息をついていた。

 あまりにも不可解な態度に満はぶすっとした顔をしていたが、今日の配信は失敗ができないということで、すぐに気持ちを切り替えていた。

 なにせ、ヴァーチャル空間の中でクリスマスケーキを作るのだ。以前のチョコレートとはおそらく比べ物にならない難易度になると思われるからだ。


「世貴兄さんの腕前を疑ってるわけじゃないけれど、なんだか今回は不安なんだよね。う~ん、うまくいくかなぁ……」


 満は配信していない状態で、試しにケーキを作ってみようとする。


「あっ、まったく問題ないみたいだ」


 あっさりとケーキのスポンジが焼けてしまった。

 そのままクリームを塗って仕上げていくけれど、これまた問題はない。まったく、世貴はとんでもないものを構築してくれたようである。


「うん、普通にクリスマスケーキができちゃった。配信で新しく作ったあとで取り出すことにしよう……」


 満はそう言って、厨房の棚の中にケーキをしまっておいた。


 配信に向けてのチェックを終えた満は、SNSに告知を流す。このポストはまたたく間に拡散されていき、期待の高さを示しているようだった。

 どんどんと増えていく数字に、満は思わずくすりと笑ってしまっていた。


「満ーっ。お父さん帰ってきたから、そろそろご飯よ」


「あ、うん。分かったよ」


 母親に呼ばれて、満は一度食堂へと降りていく。

 父親がお風呂に入っている間に母親と一緒に夕食の支度をする満だが、実はまったく着替えていないので、いまだに母親の用意したサンタコスチュームのままである。忘れているのか気に入っているのか、まったく分からないというものだ。


「……なに、お母さん」


 準備の間、やたらとにやつく母親の姿に、満はちょっと不機嫌になったようだ。


「いや、服を着替えていないから、気に入ったのかなと思ってね」


「ああ、これ?」


 満は自分の服装を確認する。


「せっかく用意してくれたから、今日くらいは着ていてあげようと思っただけだよ。配信が終わったら脱ぐからね」


「そう。満ってば優しいのね」


「なんだよ、お母さん」


 母親と話をしていると、お風呂から上がって着替えてきた父親が姿を見せる。


「おう、満。やけに気合いの入った格好だな」


「メリークリスマス。今日だけだからね、お父さん」


「そうかそうか。そういやクリスマスイブだったな、今日は」


 満の格好には驚いた父親だったが、理由を言われて納得していた。


「おや、私のところにはケーキがあるのか。二人はどうしてないんだ?」


「もう先に食べたからよ、お父さん。そのケーキ、満の手作りだから、しっかり味わってね」


「そうなのか。満は本当に何でもできるな。くぅ……、満と結婚する相手が羨ましい限りだ」


 父親は目の前のケーキを見ながら、ちょっと泣きそうになっている。


「あら、私には不満があるのかしらね」


「そんなわけないだろう。だが、満もいずれ結婚して家を出ていくんだろうからな、ちょっと寂しくなるな」


「なんか、僕がお嫁さんに行くみたいな話になってない?!」


「違うのか?」


「僕は男だよ。結婚はするけど家は出ないからね?」


「まあ、そういうことにしておくよ」


「お父さん!」


 なんともにぎやかな空月家のクリスマスイブの食卓である。

 だが、こんな騒がしさのおかげか、満の緊張はちょっと解れたようである。

 夜九時の配信までもう少し。満は家族でのクリスマスの食卓を堪能したのであった。

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