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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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第382話 無事に終わればすべてよし

 満とイリスは、ステージの中央でぴたりと動きを止めて、ステージをフィニッシュさせる。

 それにしてもアイドル衣装とメイド服という、なんともちぐはぐな組み合わせでよくもステージをやり切ったものである。

 体育館で見ていた観客からは、割れんばかりの拍手が巻き起こっている。


「急なお願いにもかかわらず、今回のステージを引き受けてくれたイリスさんに拍手を。それと、ルナもお疲れ様だ」


 谷上先生の言葉を受けて、イリスと満は頭を下げて、体育館に集まった観衆たちに手を振って応えると、ゆっくりと舞台裾へと下がっていく。それと同時に環によって幕が降ろされ、このミニコンサートは無事に終了したのだった。


「これで文化祭のすべてのプログラムは終了した。さあ、あとは片付けだ。ほら出てった、出てった」


 谷上先生は体育館の中に残っている観客たちを追い出そうとしている。

 観客たちはアンコールを叫ぶものの、体育教師である谷上先生の前には無駄だった。

 あえなく退場を命じられて、渋々入口から外へと出ていった。


 体育館のステージには、演劇部の人たちがやってきた。自分たちの使ったセットを片付けるためだ。


「すみませんね。私たちの急な頼み込みで、片付けを遅らせてしまって」


 イリスが演劇部の人たちに声をかけている。


「いや、あのステージを見せてもらえたのなら、私たちからは文句はないですよ」


 眼鏡をかけた演劇部の部長は、そう言いながら眼鏡をくいっと触っていた。


「それにしても、私たちの先輩とは知りませんでした。夏休みのライブを見てはいたんですが、今回そのことを知って恥ずかしく思いましたよ」


「いや、私も出身校に関して公言していないので、知らなくても仕方ないと思いますよ」


 小さく頭を下げる部長に対して、イリスは気にしないでといった感じで話をしている。


「イリスさん、僕のクラスに戻りましょうよ」


 話をしているイリスに、満は慌てたように声をかけている。


「なんなのよ。私は関係ないでしょうに」


「いいえ。調理を担当した以上はがっつりかかわってています。ここの片づけは私に任せて、手伝いに行って下さい。ルナさん一人では、途中で誰かに囲まれかねませんからね」


「しょうがないわね……。環、ここの片づけは任せたわよ」


「もちろんですよ」


 満と環に言われて、イリスは仕方なく満のクラスへと向かうことになった。

 道中はやはり、ステージを見ていた観衆に囲まれそうになってしまう。


「俺の生徒に手は出させんぞ!」


「谷上先生?!」


 ところが、囲まれそうになるところを、ポージングを決めながら登場した谷上先生に助けられていた。


「さあ、早くクラスに戻りたまえ。片付けを終えて家に帰るまでが文化祭だ。俺がいる限り、部外者に生徒には指一本触れさせんぞ!」


 谷上先生がポージングを決めながら迫ると、近付いてきた人たちは怖がってじりじりと下がっていく。


「文化祭は終わったのだ。これ以上の滞在は、理由なき滞在である。通告したからには、滞在していれば不退去罪だ。さあ、捕まりたくなければさっさと帰るがよい! わーはっはっはっ!」


 谷上先生の勢い押されて、残っていた校外の人たちは慌てて学校の外へと向かっていく。こういう時、体の大きな人というのは実に効果的なのだ。

 こうした谷上先生のアシストもあり、満とイリスはクラスまで帰ってきた。


「よう、お帰り。もう残っているものは調理器具の洗い物くらいだな。思ったより教室の中は汚れてなくてよかったぜ」


 教室に戻った満を迎えてくれたのは、風斗だった。


「そっかぁ、体育館から慌てて戻ってきたんだけど、無駄足だったみたいだね」


「いや、そうでもないさ。みんな、戻ってくるのを待ってたみたいだぞ」


「えっ?」


 風斗の言葉に、満は周りを見る。

 クラスメイトたちは、満の方を見てにこやかな表情をしている。一体どういうことなのか、満には理解できない状況だった。


「いや、ルナさんってば、何でもできるんだなって思ってね」


「私の作ったメイド服での踊り、しっかりと見させてもらったわよ。そのメイド服はあげるから、これからも時々見せてよね」


「えっ?」


 衣装担当の糸倉に言われて、満は混乱してしまっている。


「もう、糸倉さんってば。全部プレゼントなんでしょう? ルナちゃんだけ特別みたいに言わないでよ」


「それはそうだけど、こういうこと言ってみたいじゃないのよ」


「わっかる~」


 糸倉と他の女子たちのやり取りに、クラス中が大笑いである。

 よく分からない状況に、満はぽかんとした表情で立ち尽くしていた。


「イリスさんもわざわざありがとうございました。おかげで、メイド喫茶大成功ですよ」


「そう、それはよかったわね。気になる後輩を手伝えて、私もよかったと思うから、お互い様ってところかしらね」


「ですね」


 このあとも、満のクラスは明るい笑い声に包まれていた。

 ちょっとしたトラブルはあったものの、二日間に及んだ文化祭は、無事に終わりを迎えたのであった。

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