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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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第378話 反響は予想を超えて

「うわぁ、何あれ……」


 文化祭をクラスメイトとめぐっていた香織が、お昼を過ぎたところで、お腹が空いたからと満と風斗のクラスの前までやってくる。

 そこであふれかえる人だかりを見て、香織は思わずそんな声を漏らしてしまっていた。


「とても入れそうにないわ。お昼どうする?」


 クラスメイトはとても困っているようだった。

 それというのも、風斗のクラスではメイド喫茶をするからということで、そこで食べられるだろうからとお弁当を持ってきていないのだ。なんという失態なのだろうか。


「どうする? 先生に許可をもらって学校の外に買いに行く?」


「う~ん、どうしようかな」


 香織は本格的に困っているようだった。


「おや、花宮じゃねえか」


「えっと、ルナさんのお友だちですね。お久しぶりです」


「あっ、村雲くん、それと……確かイリスさんのマネージャーさん!」


 声をかけられた香織が振り向くと、そこには買い出しから戻ってきた風斗と環の姿があった。


「それにしても、どうしたのよ、その荷物……」


「ああ、見ての通りの大盛況だろ。食材の買い出しに行ってたんだよ」


「まったく、うちのイリスの入れ知恵のせいで、迷惑をかけております」


「これって、イリスさんのせいなの?!」


 事情を聞いた香織は、ものすごく驚いた表情をしている。


「その通りです。ルナさんの持ちうる魅力を前面に打ち出せば、人を呼び込めるとそそのかしたんですよ。もちろん、その責任を取って、中で調理をしておりますけれど」


「ああ、なるほどそれは確かに、大きな武器ですね……」


 環の説明を聞いて、すべてを悟ってしまう香織である。


「ちょっと待って。なんか全然意味わかんないんだけど?!」


 一方、隣では香織の友人が騒いでいた。事情を何も知らないのならしょうがない。

 そこで、香織は友人にどういうことがあったのかを説明する。


「いや、それマジ?」


「残念だけどマジなのよ」


「うっわ、あたしらってば、そんなとんでもない人物と同級生なわけ?」


 香織に事実だと言われると、友人はものすごく目をキラキラさせながら興奮していた。

 配管工レーシングの世界チャンピオンだけでもすごい話だが、アイドルと知り合いで一緒のステージに上がっていたと聞いて、とんでもなくテンションが上がってしまっているようなのだ。


「ってことは、中で料理を作っているのが、そのアイドル?! ううっ、これはぜひとも食べたいわ!」


 ものすごく火がついてしまったようである。

 とはいえ、これだけ人がいては入れそうにない。香織は困った様子で見ている。


「ふわぁ……。疲れたよう……」


 そこに満が飛び出してきた。


「あれ、ルナ。教室から飛び出てどうしたんだよ」


「どうもこうも、休憩だよ。朝からずっとお客さんたちの対応してるんだもん。さすがに僕も疲れちゃったよ」


 ぜえぜえと息を切らせているものだから、風斗はつい心配して事情を尋ねてしまう。

 満は呼吸を整えながら、風斗の質問に答えていた。どうやら、この二時間くらいの間、ずっと接客でバタバタしていたらしい。

 なにせ有名人ゆえに、ご指名を入れてくるような連中もいたくらいだ。それに律儀に答えていたのだから、疲れるのもやむなしといったところなのである。


「それはお疲れ様です。私の担当であるイリスのせいでご迷惑をおかけしました」


「うん、予想以上に売れているから僕らとしては大成功なんだけど……。イリスさん、休めるかなぁ?」


 満は疲れた顔をしながらも、イリスのことを心配しているようだ。

 朝からずっと料理を作り続けているわけだから、心配になるのは当然といったところである。満でも数回作れば面倒になってきてしまうのだから。

 その作業を朝から何度も繰り返しているので、満は素直に頭が下がってしまう。


「まあ、このくらい大丈夫ですよ。しばらく仕事も休みですし、苦とも思ってませんでしょうから」


「そうですか」


 満はなんだか悪いような気がしてきたので、早めに食事を済ませてしばらく料理を交代することに決めたようである。

 その話を聞いた時、香織は思わず満に頼み込んでしまう。


「ねえ、ルナちゃん」


「なに、香織ちゃん」


「料理作ったら、食べさせてもらってもいい? ちゃんとお金は払うから」


「ちょっと、どういうこと?」


 香織が懇願してくるので、満はものすごく困惑しているようだ。


「いや、実はあたしたちね、お弁当持ってきてないんだ。ここの食事を当てにしたからね」


「な、なるほど……」


 満たちが話していると、周りの状況に気が付いた環が注意してくる。


「ちょっと、廊下で立ち話をするのはやめようか。視線がこっちに向いているし、完全に通行止め状態になっているわ」


 確かに、自分たちに対して視線が向いてしまっていた。

 ひとまず買ってきた食材を教室へと運び込むと、どこか休める場所へと移動していく。

 満のことを追いかけようとする連中もいたが、環にぎろりと睨まれるとその場で動きが固まっていた。さすが、芸能人のマネージャーは強い。


 まだ文化祭の初日の半分が終わったところだというのに、このままでは先が思いやられるというものだ。


「いやぁ、人気者は大変だねぇ」


 まったく、香織の友人の言う通りである。

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