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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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第375話 衣装合わせ

 中間テストが終わる日、ルナの姿となっている満を含めて女子たちは教室に残される。


「はーい、みんな。いよいよ来週末には文化祭がやってくるわ」


「それで、そこで着るみんなのメイド服なんだけど、完成したから今から試着してもらうわよ」


 そう、文化祭を前にした衣装合わせである。もちろん、女子たち全員が着替えるので、教室のカーテンは全部締め切ってある。


「靴下はみんなで用意してね。白でも黒でも、タイツでもソックスでも構わないから」


 さすがにそこまでの予算は回せなかったようである。

 早速一人一人にメイド服が手渡される。そのできばえは中学三年生とは思えないくらいのしっかりしたものだった。


「さすが、糸倉さん。これも演劇部で鍛えたものなの?」


「まあそうかしらね。大変だったけど、楽しませてもらったわ。ちなみに演劇部の出し物の衣装も並行して作ってたから、ちょっと手がつりそうだったのは内緒よ」


「喋っちゃったら内緒じゃないじゃない」


「大丈夫。男子が知らなければ内緒に変わりはないわ」


 糸倉と呼ばれた女子生徒の言い分に、そろって大笑いである。

 それはそれとして、全員が無事に着替え終わる。


「すごい、みんなぴったりだわ」


「そりゃ細かく寸法取ったもの。動き回ることを考慮して遊びも持たせてあるし、やりやすいと思うわよ」


 女子たちがわいわいとしている中、そもそもが男な満は目のやり場にちょっと困っていた。プールの授業とかがあるので慣れたかと思われていたが、そこはやっぱり男の子なのである。


「どうしたのよ、ルナちゃん」


「あっ、いや。なんでもないよ」


 急に声をかけられて、どうしたらいいのか困ってしまう満である。


「もう、ルナちゃんってば顔を真っ赤にしちゃって。本当に照れ屋さんなんだから」


「う、うん。まあ……」


 笑われながらも、満はとりあえず照れ笑いをしていた。


「でも、やっぱりルナちゃんは思ったとおり似合うわね。黒っぽい服に銀髪が映えるわ」


 糸倉は満を見ながらものすごく満足そうにうっとりしている。それだけ満のメイド姿が完璧ということだろう。

 あまりにも嬉しそうな表情をしているせいで、満はちょっとばかり引いてしまっているようだった。


「それにしても、このカチューシャも糸倉さんが作ったの?」


「ええ、普通のヘアバンドにレースを糊で貼り付けてね」


「へええ、こういうことしたことなかったんだけど、こういうのも手作りできるんだ」


「その気になれば、大抵のものは手作りできるわよ」


 他の女子生徒の言葉を聞いて、糸倉は楽しそうに笑っていた。自分の腕を活用できて、それだけ満足だったということだろう。

 なんにしても、これでメイド喫茶の準備はほぼでき上がった。あとは当日に出す料理くらいだろう。


「さあ、衣装もできたことだし、俄然やる気が出てきたわ。なんとしても中学最後の文化祭、きちんと成功させようじゃないの」


「おーっ!」


 女子たちのテンションはかなり高まっていた。

 全員の心がひとつになっているということもあって、満も一緒になって右手の拳を突き上げていた。


 制服に着替えて外に出ると、下足場では風斗と香織が待っていた。


「風斗、香織ちゃん。もしかして待ってたの?」


「ああ、こういう時はいつでも一緒に帰ってただろうが」


「そうそう。それに、気になることがあるしね」


「気になること?」


 風斗の言葉に柔らかい笑顔を見せたかと思ったら、香織の言葉で表情が微妙に曇ってしまう満である。

 その次の瞬間、香織がずいっと顔を満に近付ける。これには思わずびっくりして一歩下がってしまう。


「さっき、メイド喫茶のための衣装合わせをしたんでしょ? 一足先に、その姿を見せてもらいたいな、なんてね?」


「ちょ、ちょっと、香織ちゃん、何を言うんだよ」


 にっこりとしながら香織がいうものだから、満はものすごく慌ててしまっている。


「ね、ダメ?」


 そうかと思うと、今度は後ろで手を組みながら、上目遣いでお願いをし始める。予想外の香織の行動に、満はあわあわと完全に慌てふためいてしまっていた。なんとも可愛い反応である。


「しょ、しょうがないなぁ……」


 満は唸りながらも香織のお願いを承諾してしまう。こういう押しにはとことん弱いのだ。


「満、本当にお前はこういうのに弱いな」


「風斗、うるさいよ」


 呆れている風斗に対して、満はとても不機嫌そうに言い返している。

 結局このあと、香織の家に出向くことになり、そこで満は受け取ったメイド服を披露することになってしまった。

 一足先にメイド服を見せてもらった香織は、かなり興奮した様子でその姿をスマートフォンのカメラで撮りまくっていた。


「香織ちゃん」


「なに、満くん」


「その写真、絶対に拡散しないでね? 当日まではみんなには秘密なんだから」


「うん、分かったわ。満くんとの約束は絶対守るから」


 恥ずかしそうにする満のお願いを、香織は快く受け入れていた。指切りまでして約束したので、ひとまずは安心だろう。

 こうして、再び制服に着替えた満は、ようやく家に帰ることができたのだった。


 来週に迫った中学生最後の文化祭。満たちは、精一杯楽しもうと準備に力を入れるのだった。

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