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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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第374話 それは必須ですよ

 週が明けると、満たちはいつものように昼休みは屋上へ続く階段のところに集まっていた。


「で、今日は何の用だよ、風斗」


「まったく、こういう日に限ってなんで男なんだよ。花宮には内緒にしときたかったのに、結局教えなくちゃいけなくなったじゃないか」


 満が不機嫌そうに言うものの、風斗の方もなにやら不機嫌そうだ。

 香織は一人、この状況を察しているようだ。


「そっか、そっちのクラスの出し物、メイド喫茶で決まったのね」


「えっ!?」


 香織が口に出した言葉に、満がものすごく驚いている。

 風斗は露骨に嫌そうな顔をしながら、香織の推理に頷いていた。


「ああ、そうだよ。俺のクラスの出し物はメイド喫茶だ。なので、その日は必ず女の状態でいてくれよ、満」


「もう、無茶苦茶だなぁ……。みんな、僕にそこまでメイド服を着せたいの?!」


 風斗の切実な願いのような言葉に、満はなんとも不機嫌そうである。


「そりゃ、銀髪で胸も大きいとなれば、誰だって見たいでしょ」


「ちょっと、香織ちゃん?!」


 香織にまでストレートに言われてしまって、満はものすごく面食らってしまっている。男ならまだしも、女である香織に言われたことがかなりショックのようである。


「さすが花宮、分かっているな」


「そりゃ当然でしょ」


 なぜかがしっと腕をぶつけ合う二人である。この状況に、満がただ一人ついていけなかった。


「というわけで、うちのクラスの女子たちがかなり盛り上がっている。それで、正確な体型の情報が欲しいからって、女のお前が来ることを期待してたんだがな」


「もう、風斗ってばいろいろ都合で文句言い過ぎ。僕にだってコントロールできないんだから、無茶言わないでよ」


「まあ、そうなんだよなぁ……。まっ、今月中に採寸できたらいいなとは言ってたが、早めに行ってやってくれ」


「むぅ……」


 事情は分かったものの、どうも納得のいかない満は頬を膨らませていた。


「まったく、僕は男の子なのに、みんななんでそっちばかりなんだよぅ……」


 女の自分ばかりが人気で、満の不満は今にも爆発しそうである。


「もうっ! 絶対にルナさんと分離して、元の自分に戻ってやるんだから!」


「お、おう。頑張れよ、満」


「応援してるからね」


「二人とも、気持ちが入ってないようっ!」


 棒読みに近い二人の言葉に、満の不満は炸裂していたのだった。


 翌日、満はやっぱり女になっていた。

 日曜日と月曜日が連続で男だったのは久しぶりだったので、ちょっとは期待したはずだった。ところが、あえなくその期待は裏切られてしまった。


「あうぅ……。僕は結局、完全な男には戻れないってことか」


「まあ、気を落とすなよ。そんなんじゃなおさら元に戻れなくなるかもしれないぞ。日曜も男だったっていうんだから、少しは元に戻れる可能性が出てきたってことだろ?」


「そうだけどね。でも、その期待を淡く打ち砕かれちゃ、僕は素直に喜べないよ」


「……複雑だなぁ。俺にはまったく理解できない感情だよ」


 満と風斗の間の感情には、かなり大きな温度差があるようである。これが当事者か他人かの違いというものだろう。

 教室にやって来ると、満は早速女子たちに取り囲まれてしまう。


「来たわね、ルナちゃん」


「話は多分聞いてるわよね?」


「え、えと……?」


 女子たちの勢いに、満はものすごく戸惑っている。


「メイド喫茶で着るメイド服を自作するから、採寸させてっていう話」


「う、うん。そ、それで?」


「今日の放課後は、私に付き合ってもらうわよ。私の家で採寸させてもらうから、よろしくね?」


「あ、うん。分かったよ……」


 女子たちの勢いに押されてしまい、ほぼ素の状態で受け答えをしてしまう満である。その様子を見ていた風斗は、顔を押さえてしまっていた。

 助け舟を出してやりたい風斗ではあるものの、こればっかりはどうしようもなかった。メイド服の採寸の話なのだ。女子たちの中に男一人で混ざる勇気など、風斗にあるわけがないのである。

 満から助けてと言わんばかりの視線を向けられた風斗だが、すまないというジェスチャーで断ることが精一杯だった。


 放課後、満は女子たちに拉致されるような形で家を訪問することになった。

 女子の家を訪ねるのは、香織、小麦に続いて、実に三軒目である。女性に変身できるようになったとはいえ、元が男の満にそんな勇気があるわけがないのだ。


 部屋に入ると、カーテンが閉められて、いざ採寸である。


「はい、お疲れ様。言っておくけれど、私たちも全員これやったんだから、恨みっこなしよ」


「は、はい……」


 満は完全にその場にへたり込んでしまっていた。


「それじゃ、本番の一週間前までには完成させるから、楽しみにしていてね。ふふっ、ルナちゃんはきっと注目度ナンバーワンよ?」


「は、はあ……」


 採寸の際にもみくちゃにされたことで、満は反応する元気もない。ひとまず服だけきちんと着直すことで精一杯だった。


 こうして、どうにかこうにか文化祭に向けた準備が始まったわけだが、最初の段階から満は参ってしまっているようだった。

 こんな状態で文化祭がうまくいくのだろうか。ちょっとした不安を感じる満なのであった。

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