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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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363/413

第363話 無茶振りサマー

 クッキーのことで配信した翌日のことだった。

 満のスマートフォンに着信がある。

 誰だろうなと思って画面を確認すると、それは小麦からの電話だった。


「あれ、小麦さん。どうしたんですか?」


『満くん、今からうちに来れる?』


「えっ、どうしたんですか、いきなり」


 あまりにも急なことだったので、満は驚いている。

 しかし、特に断る理由もなかったので、満は小麦の家へと向かうことにした。


「こんにちは~」


「やあ、満くん、いらっしゃい」


 呼び鈴を鳴らすと、小麦が満面の笑みを浮かべて出迎えてくれた。しかもぎゅっと抱きついてくる。


「ちょっと、小麦さん?!」


「う~ん、やっぱり女の子の満くんは可愛いなぁ。妹にしたいくらいだよ」


「いや、本当にやめて下さいってば。僕は男の子ですよ?!」


 激しいスキンシップに、満は顔を真っ赤にしている。


「小麦、そのくらいにしておきなさいよ」


「はーい、舞お姉ちゃん」


「あれ、イリスさん?!」


 突然聞こえてきた声に、満はびっくりしている。そこにいたのは地元出身のアイドルであるイリスだったからだ。

 とりあえずどういうことか分からないが、満は家に上がる。

 中に入れば、イリスのマネージャーである環もしっかりいた。一体どういうことなのだろうかと、満は縮こまりながら様子を窺っている。


「突然呼び出しちゃってごめんね、満くん」


 戸惑った様子を見せている満に、小麦が声をかけてきた。


「小麦さん、一体どういうことなんですか?」


「うん、舞お姉ちゃんが相談があるみたいなんだ。それで、私を経由して、満くんに連絡を取ろうとしたのよ」


「そういうことなんだ」


 小麦から電話がかかってきた経緯に、満は納得したようである。

 満はイリスに連絡先を教えた記憶がなかったのだから。


「まあ、単刀直入にいうわね」


 イリスが満を見ながら声をかけてくる。

 ごくりと息をのみ、満はイリスの顔をじっと見ている。


「今年も夏祭りを手伝ってほしいのよ。また呼ばれたんだけど、私だけじゃ正直不安でね」


 なんと、夏祭りに参加してほしいという話だった。

 夏祭りには地元出身の有名人が呼ばれるということなのだが、満は呼ばれていなかった。配管工レーシングで世界チャンピオンになったにもかかわらずだ。

 ところが、満も満の方ですっかり忘れていた。実におあいこである。

 だというのに、イリスからのまさかのヘルプである。正直なところ、満はどうすべきかものすごく悩んでいるようだった。


「今年も、二日間とも参加しなきゃダメですか?」


 満はイリスに確認を取っている。


「別に片方だけでもいいよ。なんなら、私と一緒に歌って踊って!」


「え?」


 まさかの無茶振りである。満は思いっきり固まっている。


「こらこら、舞お姉ちゃん。満くんを困らせちゃ困るぞ」


「むむむむ……。小麦ってば、ずいぶんと満くんに肩入れするのね。もしかして惚れてるの?」


「ひうっ!」


 ちょっとした態度で見事に言い当てられて、小麦の顔は真っ赤になっていた。


「うわぁ、マジなのね……。小麦もそんな恋する乙女になっちゃったのかぁ。浮いた話のひとつもないと思ってたのにね」


「もう、舞お姉ちゃん!」


 イリスがいろいろといってくるものだから、小麦は必死になって怒っているようだ。


「ふむ。舞、そのフェスティバルはいつあるのかしら」


「えっとですね、八月最後の土日ですよ。歌って踊るのは去年同様に土曜日の方です」


「オウ……、なんてことかしら、私はその頃には戻らないといけないわ。残念ね、ドーターのボーフレンドのダンスを見れると思いましたのに」


「グラッサさんまで、何を?!」


 予想外の反応をされて、満はさらに困惑を深めていた。

 その様子を見ていて笑いながら顔を出してきたのは小麦の父親だった。


「ははははっ。満くん、完全に外堀を埋められてきているぞ。大事な娘はやらんとか言ってみたいが、君になら託せると思うんだよな。どうだい、本格的に付き合ってみないかい?」


「何を言ってるんでか、おじさんまで!」


 顔を真っ赤にしながら、力いっぱい拳を握って文句を言う満である。


「本当に、みんな揃って……。これ以上からかわないでよ。私まで恥ずかしくなってくるじゃないのよ」


「いや、すまないな」


 口では謝罪しているものの、父親の顔はずっとにやついていた。どうやら小麦と満をくっつけたいらしい。


「グラッサさん、よければ私が撮影して、動画を送りましょうか?」


「ええ、それで頼むわね」


「ちょっと、僕は何も答えてないのに、参加する前提になってるじゃないですか!」


 満は必死に抵抗するものの、この流れはどうにも覆せそうになかった。

 結局なんだかんだで、満はイリスのバッグダンサーの一人としてイベントに参加することになってしまったのだった。


「はあ、なんでアイドルの真似事なんてしなきゃいけないんだよ……」


「満くん、舞お姉ちゃんの頼みだから断れなくてごめんね。私も参加はしてあげたいんだけど、一度戻らないといけないからね」


「小麦さん……」


 二人のやり取りを見ながら、周りはすっかりにやついているようだった。目の前で青春を始められてしまったら、そんな反応にもなるはずである。

 そんなわけで、満はイベントに参加するためにイリスと環に連れられて行ってしまう。

 一週間程度しかない練習期間だが、はたして満は無事にステージに立てるのだろうか。


 まだまだ暑い夏は続きそうだ。

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