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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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第332話 持ち込まれるヘルプ

 香織と水着などを買いに行った翌週の週末だった。

 満は今日も夕食を家族と一緒に食べている。

 目の前には父親も母親もおり、一般的な家庭である。


「満、ちょっといいか?」


「なあに、お父さん」


 この日は父親がいきなり満に対して話を切り出してきた。


「高校受験の準備はどうなってる?」


 何かと思えば、高校受験の話だった。

 確かに今年の満は中学三年生である。来年の三月には高校受験が控えている。


「一応、市立の高校に進むよ。風斗や香織ちゃんも一緒だよ」


「そうかそうか。進学先としてはまあ普通ってところだな」


 進学先の話をすると、父親は両腕を組んで何度も頷いている。

 好物の唐揚げを食べながら、何なんだろうかと思いながら父親の話を聞いている。


「いやあ、問題なさそうだったらさ、風斗くんと香織ちゃんも誘って、夏休みすぐに旅行に行かないかって考えてるんだよ」


「僕はいいけど、なんで二人も連れていくの?」


 満はごくんと唐揚げを飲み込んで父親に確認の質問をしている。

 確かにその通りである。

 普通は家族そろっての家族旅行だろう。よその家の子どもを預かるということは、それだけ責任が増す。そんなリスクを背負う必要がどこにあるのかということだ。

 だからこそ、満は気になっているのである。


「それがな、父さんの実家の方から、夏祭りの相談が来ててな。どうやら人手が足りないみたいなことになってるんだ」


「なるほど、僕たちにも手伝ってもらいたい、そういうわけなんだね」


「そういうことなんだよ。いや、両親に泣きつかれちゃ、私としても行かざるを得ない。それに、むこうはどうも若い人を欲しがっているみたいだから、満とその友だちも一緒にどうかということになったんだ」


 どうやら、父親の地元では、人員が不足してしまって夏祭りの開催が危ういということなのだそうだ。

 忙しいからと断ろうとしたのだが、泣き落としにもあってしまったらしく、父親は有給消化を兼ねて引き受けてしまったとのことだった。

 これには母親も満も苦笑いである。


「しょうがないなぁ。風斗と香織ちゃんに確認はしてみるけど、あまり期待しないでよね」


「すまない、満。無理を聞いてもらったからには、何か欲しいものとか買ってやるからな」


「僕は今は特に欲しいのはないかな。その分、風斗たちにお礼をしてあげて」


「まったく、お前は欲というものがないな」


 満から返ってきた答えに、父親はどこか呆れてしまっているようだった。

 そんなこんなで、満は終業式が終わると同時に父親の実家に行くことが決定したのであった。


 週明け、満は昼休みにいつもの場所で風斗と香織の二人と顔を合わせる。


「どうしたんだよ、満。急な話ってよ」


「そうだよ、満くん。どうしたのよ」


 二人揃って戸惑っているような感じである。

 それもそうだろう。満がかなり難しい顔をして座っているからだ。

 そうかと思うと、満はよしっという声とともに両膝を叩く。

 顔を上げたかと思うと、自分の抱えている事情を二人に話し始めた。

 満があまりにも真剣な表情をしているので、二人も黙ってその話を聞いている。


「……というわけなんだ。それで、夏休みに入ったら、すぐにお父さんの実家に行かなきゃいけないんだ」


「なるほどなぁ。ってか、よそ者の俺たちも行っていいのか?」


「そうだよ。地元の祭りって、地元の人だけでするものでしょ?」


 二人からいろいろと質問をぶつけられる。


「確かにそうなんだけど、人が足りないってなると、どうしてもね……」


 その表情を見る限り、満からしても苦渋の決断だっただろうと思われる。

 満の表情を見た風斗と香織は、お互いに顔を見合わせてしまう。


「はあ……。とりあえずなんだが、親友が困っているのなら」


「助けるっていうのが普通でしょうね」


 どうやら二人揃って同じ意見のようである。


「まっ、断られたら断られただな」


「そうね。でも、助けを求めてきたんだから、断られそうには思えないけどね」


「それはそう」


 困った顔をしながらも、風斗も香織も笑っている。

 満たちは父親の地元の人間ではない。だが、話を持ってきた時点で、断るだけの理由はすでになくなっているのだ。

 結果として、二人とも話を受け入れてくれることになった。


「親父たちに話をつけて、許可をもらってくるよ」


「うんうん。満くんのご両親なら、私のところは大丈夫だと思うけど、念のために話をしておかないとね」


「だね」


 一応、満たちの間では話の結論が出たようだ。もう一段階の心配ごとはあるだろうが、ひとまず大丈夫だろうと三人は楽観視しているようである。

 だが、自分のところの子どもをいざ預けるとなると、親というのは知り合いであっても心配になってしまうものだ。こればっかりは、二人の両親からの返事待ちということになりそうである。


 満たちの中学三年生の夏休みは、どうやら初日から大変なことになりそうである。

 はたして、満の父親の地元で行われる夏祭りとは一体どういうものなのだろうか。

 期待と不安を胸に、満たちは残りの一学期を過ごすことになりそうだった。

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