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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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310/344

第310話 イリスの提案

 翌日の四日。


「ふわぁ~……、疲れたぁ……」


 やることを終えた満は、イリスの控室で突っ伏している。


「お疲れ様。大変だったでしょう、男の子の状態で女のふりっていうのは」


「うん、人前で女装は前にもしたことはあるけど、さすがにこういう場だと緊張したよ」


「あら、初めてじゃなかったんだ」


 満の言葉に、イリスは驚いている。


「うん、小麦さんが引っ越す前に花見をした時に、ちょこっとだけ。どっちが恥ずかしいかと思ったけど、どっちにしても恥ずかしかったよ……」


 その時のことを思い出して、満は顔が真っ赤になっている。どうやたら年頃の男の子に女装はかなり厳しかったようだ。


「うふふ、小麦が相手なら、不思議と羨ましくないわね。でも、彼氏もいないのに男の子と二人っきりでお出かけするなんて、あの子もやるわね」


 イリスは笑いながらそんなことを言っている。


「ええっ、小麦さんってそうだったんですか?!」


 大きな声で叫ぶ満。一応プライバシーに配慮してか細かい内容を言わなかった。さすがはアバター配信者である。

 これにはイリスもにっこりである。


「あの子遊んでいるように見えるけど、同性の友だちしかいなかったのよ。多分、まともに興味を持った異性は、満くんが最初だと思うわ。最初は多分、ルナ・フォルモントが原因だろうけどね」


「そ、そうですよね。ルナさんに興味を持つならまだしも、僕になんて、そんなことないですよね」


 イリスの言葉に、満は照れ笑いをしながら答えている。

 ところが、この満の反応には、イリスも困ってしまう。

 純粋というか鈍いというか、ここまでの反応をされてしまうと、どう返していいのか困ってしまう。


(やれやれ……。こんな調子だと、満くんの友人たちはさぞや大変でしょうね。なんだか同情しちゃうわ)


 困ったような顔をされてしまって、満はきょとんとしてしまう。


「あの、一体どうされたんですか?」


「うふふ、なんでもないわよ。それよりも、聞いていいかしら」


「何をでしょうか」


 問いかけたらはぐらかされた上に、満は話しかけられてしまう。


「ご両親とのお出かけ先、決まっているのかしら」


「いえ、特には決まっていませんね」


 満が答えると、イリスは環を呼び出している。

 環がやって来ると、一緒に現れた人物に満はぎょっとした目をしている。


「は~い、満。女の子の格好が似合っているわよ」


「お父さん、お母さん?」


 現れたのは満の両親だった。


「今回イベントを手伝ってもらったお礼に、これでお出かけをしようと思うの。ふふっ、去年のイベントのおかげかちょっと儲かるようになってきたから、今回は大奮発よ」


 イリスはとてもにこやかに話している。


「えええっ?! 去年、事務所が危ないみたいなこと言ってませんでしたか?!」


「ふふっ、その通りよ。でも、君のおかげでちょっとしたアイディアを思いついてね。それを社長に持ちかけたら了承してもらえたのよ。配信なんて要らないとか言ってた頭の固い社長なんだけど、いざ配信してみたら結構再生してもらえたみたいでね。おかげで今は事務所のスタンダードスタイルなのよ」


「そ、そうなんですね……。それってアバ信をヒントにしたってことですか?」


「そういうことね」


 にへらと緩んだ笑顔を見せるイリスである。


「あれっ、僕がアバ信って話、してましたっけかね」


「あははは、満くんが光月ルナなのはすぐ分かったからね。アバターの姿が一緒、声も一緒、それで同一人物だと思わない方が不思議でしょうに」


「な、なるほど……」


 見事な推理に、満はたじたじである。


「それで、先程の話は本当なのですか」


 話に満の両親が割り込んでくる。


「はい、本当ですよ。今回私が無理やりお願いして、市の企画課と満くんの双方に無茶を通しましたからね。お詫びくらいしますって。宿泊費も持ちますから、五人で出かけましょう」


「で、でも、このチケット。えらく高いテーマパークのですけど、本当に大丈夫なんですかね」


「日付入りだから、その日逃したら入れないですよ。どこか出かけようっておっしゃっていたのですから、たまにはどーんと羽を伸ばして楽しみましょう」


 イリスが目をキラキラさせながら訴えているものの、満と両親は戸惑いっぱなしである。


「満くんにはいろいろとお世話になりましたから、そのお礼なんです。お金のこととか気にしないで下さいね」


 イリスが親指を立ててウィンクをすると、満の両親は諦めたようである。


「それでは、お世話になります」


 イリスと環に向かって頭を下げていた。


「そこまで畏まることはないですよ。せっかくですから、一緒に楽しみましょう」


 イリスは白い歯を見せながら笑っていた。


「それでは、明日の朝八時でしょうかね。駅前に集合ということでよろしくお願いします」


「はい、分かりました。遅れないように気をつけます」


「では、念のためにチケットなど必要なものは私が預かっておきます。一泊しますので、必要なら着替えをお持ちください」


「よ、よろしくお願いします」


 こうして、ゴールデンウィークの残りのお出かけの予定が決まってしまった。

 まさか現役アイドルと一緒に旅行になることになるとは思わなかった満たち。

 ガチガチに緊張した状態で、満は両親と一緒に家へと戻っていったのだった。

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