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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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309/342

第309話 無自覚の魅力

 午前10時からのトークショーは、2時間の長丁場だったにもかかわらず、満はしっかりとやり遂げていた。

 やはり予想はしていたが、配管工レーシングのことをやたらと指摘されていた。

 前世界チャンピオンであるマッハとどうやって知り合ったのかとか、どうやったらあんなすご技を連続で決められるのか、満としては答えるのにとても困ることばかりだった。

 なにせマッハとの出会いは、満が光月ルナとして実況プレイをしている動画を発見されたことによるものだからだ。

 この時どう答えようかと迷っていたところは、イリスが割り込んできて適当にごまかすことができた。

 しかし、さすがにこのトークショーでは満に対する疑念が集まってしまった。

 そこで、急きょお昼から配管工レーシングの大会が実施されることになった。なんという準備の良さなのだろう。

 実はこれ、イリスが満と話をした後で、主催である市に対していきなり差し込んだ企画である。

 それというのも、絶対ルナを参加させた時点でここに話題が集中するのは分かっていたからだ。

 イリスはこう考えたのだ。


『見せつけてやればいい』


 なんだかんだの突貫作業だったものの、どうにかこうして配管工レーシングのローカル大会を開くことができたのだった。

 もちろん、非公式の大会なので、ここで記録が更新されても非公式である。


(うーん、まさかこんな展開になるなんて……)


 満は戸惑いながら頬をかいている。

 ちなみにだが、このイベントはイリスが発案したので、イリスも当然ながら参加である。

 こうして、予想もしなかった配管工レーシングの非公式大会が始まった。


 配管工レーシングとなると、地元の腕自慢たちがぞろぞろと集まってくる。それこそ、老若男女を問わずだった。

 予想よりも多く、かなりの人数が参加となっている。

 中にはルナが世界チャンピオンだと知っていて、本気で挑もうとする者まで混ざっている。

 イリスが目論んだ以上に大賑わい。市の職員たちが対応にてんやわんやである。


「まったく、だからお祭りになるっていったのに……」


 呆れ返ってしまうイリスである。


「ははっ、さすがは天下の満天楼」


「世界チャンピオンのネームバリューも手伝って、ものすごい大盛況ね」


 トークショーの参加者たちは、あまりの賑わいようにびっくりしているようだった。


「おっと、私たちは次の仕事が待っているようだ。それじゃ、また会おう」


「またね、イリスちゃん」


「はい。またよろしくお願いします」


 イリスは合間を見て他のトークショー参加者を見送った。

 一方、満はというと……。


「げげっ、なんでそのワープ成功するんだよ」


「コツがあるんですよ、コツが」


 子どもが文句を言っているものの、満は丁寧に対処している。


「他の人に交代したら、僕の後ろで見ていて下さいね。僕の使っているのはハッカンだけど、他のキャラでもできますからね」


 満がにっこりと笑顔を見せると、文句を言っていた子どもが黙って何度も首を縦に振っている。

 さすがは美少女。子どもたちすらとりこにしてしまっている。

 気が付けば、非公式大会と思いきや、講座のようになってしまっていた。

 しかし、満のプレイを間近で見ても、あの脅威のショートカットを成功させられるのはよくて3割くらいだった。どうあがいても100%成功の満には敵わないのである。


「なんでそんなに成功させられるんだよー。絶対ずるしてるだろ」


「そう? なら交換してみようか」


 あまりにも文句を言う子どもがいたので、満は自分の持っているものと少年の持っているリチェンジを交換している。

 ところが、交換したところで結果は同じだった。満が100%成功なのに、少年は2割くらいだった。まったく恐ろしいかぎりである。


「うっそだぁ……」


 少年は絶望の顔である。

 それに対して満は、くすくすと笑っている。


「練習あるのみ、だよ」


「れ、練習でどうにかなるのかなぁ……」


 少年はがっくりと項垂れていた。

 その後、リチェンジを再び交換して、元に戻すと続きから再開である。

 結果、ルナが圧勝すぎて、勝負にならなかった。


「うーん、これはチャンピオンの貫禄ね……」


 イリスも表情が消えるくらいの圧勝劇だったのだ。


 ―――


 大会の行われている会場の後ろの方では、満の両親がじっとその様子を見守っていた。


「満って、子どもとの相性がよさそうだな」


「そうね。あれなら将来的には保育士とか学校の先生とか合いそうじゃないかな」


「教え方もうまいしな。絶対向いてるな」


 両親は腕を組んでうんうんと頷いている。


「ただ、あの少年たちは大丈夫だろうかな」


「どういうことですかね」


「いや、どう見ても惚れているっぽい感じなんだよ」


「まあまあ……」


 父親の言葉に、母親ばびっくり仰天である。


「あの自覚のなさは注意しておかないといけないな」


「そうですね。満って基本的に誰にも優しいですからね」


 満の両親は頷き合うと、こっそりと会場を後にする。


 無事に三日のイベントをやり終えた満だったが、本人が自覚していないところの問題が発覚したようである。

 こんな調子で四日のお手伝いが無事に行えるのだろうか。満の両親と同じような懸念を抱いたイリスは、ついつい心配になってしまうのだった。

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