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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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第308話 ゴールデンウィークイベントへ

 ゴールデンウィーク初日の三日を迎える。

 この日の満は女の子だった。なので、特に気にすることなく普通に自転車で会場までやって来ていた。

 イベントのある会場は、夏祭りと同じ駅前の広場だ。心配になった風斗と一緒に満は控室を訪ねようとする。


「あ、こらこら。ここから先は関係者以外立ち入り禁止だぞ」


 やって来たのはいいものの、ガードマンに止められてしまう。


「ちょっと待てよ。俺たちはイリスってアイドルに頼まれてきたんだよ。通してくれよ」


 風斗は必死に訴えるも、ガードマンはまったく取り合ってくれない。

 このままではつまみ出されてしまうだろう。さてどうしたものか。

 必死に考える満たちのところに、イリスのマネージャーである環がやってきた。


「おや、満くんとその友人ではないですか。もう来ていたのですか」


「これは、イリスさんのマネージャーさん。この子たちを知っているんですか?」


 必死に満たちを入れまいと止めているガードマンが環に確認している。


「ええ、知っているも何も、この子たちにイリスのイベントを手伝ってもらおうと思って呼んだんですからね。さあ、通してあげて下さい」


「え、ええ? どう見たって子どもじゃないですか」


「いいから通してあげて下さい。イベントを台無しにする気ですか」


 環にギンときつい視線を向けられて、ガードマンは渋々満たちへの通せんぼをやめた。

 持ち場に戻るガードマンは、環に連れられて中へと向かう満たちに、羨ましそうな視線を向けていた。


「なんだか感じが悪いな、あの警備員」


「本当だよ。今も僕たちのことを睨んでるよ」


 まったく子ども相手にずいぶんとおとなげないガードマンである。そんなガードマンも、後で後悔することになるとは、つゆほど思っていないだろう。


 環に連れられて、イリスの控室までやって来る。

 扉を開けると、そこでは今日のイベントに向けて入念にチェックを行うイリスの姿があった。


「イリス、連れてきましたよ」


「ああ、満くん、おはよう」


「おはようございます」


 互いに挨拶を交わすイリスと満である。すっかりリラックスしているイリスとは対照的に、満の方はガッチガチに緊張しているようだ。

 風斗は場違い感を感じて、隅っこの方で椅子に座っている。


「まったく、今更だけどなんで満のやつを誘ったんだ?」


「さあ、どうしてでしょうかね。イリスに何らかの考えがあることは間違いないでしょうけれど」


「なんだよ。マネージャーなのに何も聞いてないのか」


「基本的には放任ですから。私はあの子のスケジュールとかの管理だけですよ」


 あまりの返答に、思わず言葉を失う風斗である。

 その二人の目の前では、なにやら話し合いが始まっている。


「それで、今日のイベントは何なんだ? ゴールデンウィークの真っ只中にやるようなイベントなのかよ」


「そういえば話してませんでしたね。今日はトークショーですね。地元の有名な方を招いて、お話を聞くっていうやつです。イリスもこの街出身でアイドルですから、それで呼ばれたんですね」


「……それじゃ、満もそのつながりで誘われたってことか」


「でしょうね。配管工レーシングの話題になるでしょうから、ルナっていう名前で紹介されることになると思いますよ」


 風斗との話の中で、環はそのように話していた。

 なるほど、それなら納得というものだ。

 しかし、どうやって地元の人間だって通したんだろうか。風斗はふとそこが気になってしまう。

 風斗の考え込む顔を見て、環はくすっと笑っていた。


「というわけで、10時から12時までの2時間トークだけど、満くんは耐えられるかしら」


「まあ、そのくらいでしたら大丈夫ですよ。普段の配信でも最長で一時間くらいとかありますしね。世界大会の時なんて数時間閉じ込められましたからね、会場に」


「ふむふむ……」


 どうやら、お手洗いやらいろいろイリスは気にしているようである。

 確認を終えたイリスは、突然立ち上がっている。


「さて、そろそろ打ち合わせの時間だわ。それじゃ、移動しましょうか、満くん。いえ、ルナちゃん」


「はい」


 時計は8時半。イベント直前の確認の打ち合わせが始まる。

 今まで大きなイベントに参加したことのある満だが、さすがに今回は緊張が違う。なんといっても地元だ。知っている人たち、特に同級生と顔を合わせる可能性が高い。なんともひやひやものである。

 打ち合わせの場に居合わせているのは市の企画課の人たちのほか、地元出身の有名人たちだ。これだけの人が揃う中で、一番地味そうな自分がいていいのだろうかと、満は思わず縮こまってしまう。


「君があの配管工レーシング世界大会の新チャンピオンか」


「あらやだ、この子可愛いわね。緊張しているみたいだけど、私たちがうまくリードするから、落ち着いてね」


「同じ地元出身者なんだから、気楽に構えててくれよ」


 共演者たちから思わぬ優しい声をかけられ、満はかえって緊張を高めてしまっているようだった。

 なんといっても、周りにいるのは俳優だのスポーツ選手だの、本当に有名な人ばかりだからだ。

 場違いさに悩まされながらも、打ち合わせを終えていよいよイベントが始まる。

 はたしてこんな状態で大丈夫なのか。


 時間は、はじまりの午前10時を迎えたのだった。

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