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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
302/323

第302話 どうやら癒しらしい

 花見が終わって新学期が始まる。

 あっという間に世間はゴールデンウィークとなってしまっていた。


「おはようですわ、みなさま。光月ルナでございます」


 満は今日もいつものように配信を行っている。

 将来何をするかというのは問題なのではあるけれど、今の満にはこれをするしかなかった。

 元々は憧れの真家レニを真似て始めたアバター配信者であるものの、今はルナ・フォルモントの力と取り戻させ、自分から切り離すという目的があるからだ。

 将来何をするにしても、本当の自分を取り戻してからだと考えた結果である。

 

「世間はすっかりゴールデンウィークに突入ですね。みなさまはどこかに出掛けられる予定はございますでしょうか」


『自宅警備員さ』


『うちは甥っ子たちが来てテーマパークに連れていかにゃならん』


『おうおう、大変だな』


『趣味に費やすかなー』


 満の質問に、いろんな答えが返ってくる。


「大変ですね。甥っ子たちは小さいのかしら」


『八歳と六歳で、わんぱく盛りだよ。引っ張られて服の裾が伸びたことがある』


『容易に想像がつくな』


『ワイらもそのくらいはそんな感じだったなー』


 リスナーから出てきた家族サービスの話で、満たちはしばらく盛り上がっている。

 さすがに個人情報の特定になりかねないので、どこのテーマパークかはあえて聞かずに流している。


『ルナちはなんか予定あるん?』


「えっ、僕ですか?」


『ワイも気になるな』


『うん、ルナちの予定も聞きたいな』


 自分たちが聞かれたのだから、教えろというリスナーたちからの圧である。

 さすがに満はたじたじになるものの、確かにその通りだなと思って自分の予定を話している。


「友人たちとお出かけですわね。眷属の方々も忙しそうですからね」


『ふむふむ、なるほどなー』


『それはしゃーないか』


『GWなんぞ、どこ行っても混んでるからなー』


『うんうん、それが正解やと思う』


 リスナーたちからは優しいコメントが返ってくる。本当に光月ルナのリスナーたちはお行儀のいい人たちばかりである。

 ここからどうするのか考えていなかった満は、とりあえずクロワとサンを召喚する。


『おお、クロワとサンだ』


『相変わらずかわええのう』


『何度見てもクオリティが高いよなぁ』


『おう、サンキュな』


『やっぱりおるんかいwwwww』


 モデルを褒めると、当たり前のように世貴が顔を出してくる。本当に光月ルナの配信となると、いつも張り付いている。

 この流れも、光月ルナの配信では当たり前の光景になっていた。


「モデラー様」


『なんだい、ルナち』


「いつも配信を見ていらっしゃいますけれど、生活は大丈夫なのですか?」


 ついつい世貴の生活が気になってしまう。

 記憶通りであるなら、世貴は今年大学三年生だ。いろいろと卒業に向けて忙しくなっているはずである。


『いやー、俺の心配はありがたいけれど、まあ順調だよ』


 世貴の返答に満はほっとしている。


『いいなぁ、ルナちに気にかけてもらえて』


『3Dモデルを担当してるパパさんなんだから、そりゃ気になるだろうよ』


『持ちつ持たれつって感じやなぁ』


『裏山C』


 今日の配信も実にほのぼのとした感じで過ぎていく。

 クロワとサンと戯れる光月ルナの姿を見つめているだけでも、リスナーは癒されているようだった。


『ああ、ワイらの天国はここにあった』


『まったくだな。配信内容が空っぽでも、この様子さえ見せてもらえれば、それだけで満足ができる・・・』


『姿だけで癒しになるなぁ・・・』


 リスナーたちはまったくもってデレデレの様子である。

 だが、そんな癒しの時間も非情の終わりがやって来てしまう。


「それではみなさん、そろそろ今日の配信は終わりにさせていただきますね」


『えっ、もうそんな時間?』


『いやじゃーっ、ルナちとクロワとサンの癒しの映像をもっと見ていたいんじゃーっ!』


『ああ、癒されている間に時間が吹き飛んでいた・・・』


 リスナーたちがだだをこね始めている。

 しかし、満はこれ以上の延長はできないので、きっぱりと配信を終了することを宣言する。


「みなさまがそう仰られるのでしたら、僕とクロワとサンが戯れるだけの動画をアップさせて頂きましょう」


『ktkr』


『!!!』


『ルナち、ネ申!』


 リスナーたちは大歓喜である。

 あまりにも食いつきが良すぎて、満は困惑してしまう。


「少々お時間は頂きますが、なるべく今月中にアップできるようにしますね」


『あ さ っ て ま で や ん』


『ルナちならきっと間に合うさ!』


『正座待機』


『ああ、これで配信のない日も癒されるぜ・・・』


 思ってもみない反応だったが、そのおかげで満は俄然やる気が出たようである。


「できる限り早くアップできるように頑張りますね。それでは、本日はこの辺で終わりと致しましょう」


『ありがたやー』


『無理せんでええからな、ルナち』


「いえ、約束した以上は守りますわよ。それではごきげんよう」


『おつるなー』


 こうして無事に配信を終えた満は、すぐさまクロワとサンと戯れるだけの新作動画の作製に取り掛かる。

 自分たちの活動が他人の癒しになると思うと、満の手はまったく止まることを忘れてしまったようだった。

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