表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
293/319

第293話 突然のメッセージ

 ホワイトデーが過ぎ去った金曜日のこと。光月ルナのチャンネルのメールにメッセージが入っていた。


(なんだろう。差出人はっと……)


 金曜日なので今日の満には配信がない。なので、余裕をもってチェックができる。

 なにせ、まだ真家レニのチャンネルは休止状態が続いているからだ。一応メッセージ動画が上がってはいるので、完全に休止というわけではない。

 メールをチェックした満は、びっくりしていた。


「こ、これは本当なのかな?」


 満が確認したメッセージは、なんと真家レニからのメッセージだった。


『やっほ~ルナち、レニちゃんだぞ☆

 いやぁ、緊張した大学入試も、無事に合格通知をもらってきたのだ。入学手続きがあるからもうしばらく配信はできないんだ

 ルナちが春休み入る頃に少し暇ができるから、そこで一緒に配信しようね☆

 それじゃ、配信できる時を楽しみにしているのだ

 またれに~☆』


 なんと大学入試に受かったという合格報告だった。

 それによって、アバター配信者としての活動も復活させるようで、なんともひと安心というものだった。

 ただ、以前話していたように、目指す学部は満たちの住んでいる近所には存在しない。遠く離れてしまうのが、なんとも寂しく思ってしまう満なのである。

 ちょっと泣きそうになってしまった満ではあるが、首をぶんぶんと左右に振って涙を振り払う。


(よし、お返事を出しておこう)


 登録者同士のダイレクトメッセージなら、他人の目には触れることはない。真家レニからのメッセージもそれを利用したものだった。

 早速、満は真家レニにお祝いのメッセージを送る。


『大学合格おめでとうございます

 これでグラッサさんに一つ近付けたみたいですね

 僕も自分のことのように嬉しく思います

 また一緒に配信をして楽しみましょう』


 何度も文面を確認しながら、よしと思った満は真家レニに返信をしたのだった。

 満は真面目でマメなのである。


 真家レニの大学合格のニュースに、満はつい顔をにやけさせて部屋の中に寝転んでしまう。

 返信を送って気持ちに一区切りついた後は、まるで自分のことのように喜んでしまっているのである。満にとって真家レニは憧れのアバター配信者であり、それはまるで初恋のようなものだったからだ。

 満にそんな気持ちがるかどうかといわれたら、おそらくはないだろう。そういう無自覚なあたりが満なのである。


「と、とりあえず、レニちゃんから言わない限りは、僕も黙っておかなきゃね。個人情報はちゃんとしなきゃ、うん」


 思わず喋ってしまいそうになる気持ちをどうにかして抑え込もうとする満。しかし、あふれ出る喜びはしばらく落ち着きそうになかった。

 そのため、満は何も考えずに済むようにと、さっさと眠ってしまうことにしたのだった。寝てしまえば余計なことは絶対にしない。そう考えたのである。

 そんなわけで、まだ夜の九時を過ぎたところだというのに、満はさっさと布団を敷いて眠りについてしまうのだった。


 それから三時間ほどが経過した真夜中の一時頃、満がむくりと起き上がる。だが、様子がどことなくおかしい。


「やれやれ、グラッサの娘が大学に受かったか。軽い感じに見えるが、その芯はしっかりしておるからな。このくらい当然だろうて」


 口調からして、どうやらルナ・フォルモントのようである。

 そう、今日はホワイトデーから二日後の金曜日の深夜である。当然ながら、今日も女の子だった満なので、ルナが吸血のために目を覚ましたのである。


「だが、あの子にはグラッサとは決定的に違うところがある。はてさて、大学生活をきちんと送れるかね。くっくっくっくっ」


 心配しながらも、ルナは思わず笑ってしまう。


「よその大学と言っておったから、今家に行っても誰もおらんか。少しぐらい労おうとは思うたが、仕方のないことよな」


 そう思ったルナは、パソコンを立ち上げて光月ルナのチャンネルを表示させる。

 メッセージのアイコンにカーソルを合わせ、メッセージを作成するを選択して、ルナは真家レニへのメッセージを打ち込むことにしたようだ。


『真家レニへ

 大学合格おめでとう

 妾もひとえに嬉しく思うぞ

 気軽に会えなくなるのは寂しいが、時折顔を見せに来ておくれ

 グラッサに負けぬ大物になることを楽しみにしておるぞ

 ルナ・フォルモント』


「うむ、これでよし」


 ルナは入力した内容を確認して、真家レニへとメッセージを送信する。

 古の真祖とはいえども、きっちり文明の利器を使いこなしているのである。


「さて、やることもやったし、妾は食事にでも行くとしようか」


 ぐっと背伸びをすると、ルナは自分の体を確認する。


「本当に、妾が抑え込んだ体の成長がこうも起きてしまうとはな。満、おぬしは一体何者なのかね」


 すっかり大きくなってしまった背と胸に、ルナも困惑の色を隠し切れなかった。

 しかし、成長してしまったものはもう仕方がない。気持ちを切り替えて、ルナは夜の街へと飛び去っていく。


 満とルナ・フォルモントの奇妙な関係。それは一年半を経た今でも続いている。

 この関係は一体いつまで続くのだろうか。それは二人はおろか誰にも分からないことなのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ