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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
285/318

第285話 いつでも平常運転

「みなさま、おはようですわ。光月ルナでございます」


『おはよるな~』


『おはよるなー』


『ルナち、ちょっと元気ない感じ?』


 いつものように光月ルナの配信が始まる。

 ところが、リスナーの一部は満の変化に気が付いているようだった。


「あら、分かってしまいますでしょうか。はい、ちょっと元気がありません」


『どしたん、話聞こか?』


『ルナちに元気がないのは異変じゃー!』


 リスナーたちはすぐさまいろいろな反応を見せている。

 だが、元気のない理由はすぐさま満の口から告げられた。


「真家レニ様の配信がないことをすっかり忘れておりまして、昨日、ずっと待機しておりましたの」


『ズコー』


『わかるマン』


『そういやレニちゃん、受験で休止宣言してたんやったな・・・』


『ルナちは、レニちゃん推しやもんな、わかるで、気持ち・・・』


 リスナーたちからは優しい言葉が飛び出てくる。なんとも平和な世界である。

 しかし、いつまでも凹んではいられない。配信を始めたからには、何かをしなければならない。そこで満は困った時のあれを引っ張り出してきた。


「やはり、気持ちが沈んだ時は豪快にいくのが一番ですわね。『シルバレ』こと『SILVER BULLET SOLDIER』の配信を行いますわ」


『なにがやはりなんだwww』


『やっぱりルナちといったら配管工かこれよな』


『正月明け早々これかwwwww』


『いけーっ、豪快にぶっ放せーっ!』


 リスナーたちは大爆笑である。落ち込んでいるようで全然落ち込んでいない光月ルナに安心したからだろう。


「はい。実はこのシルバレ、次のメンテナンスまで年末年始特別ミッションが出ているようでしてね。ちょっと気晴らしにプレイしてみようかと思います」


『ルナち、特別ミッションは配信NGやから、通常の頼むで』


「えっ、そうなのですか?」


 やる気満々の満だったが、リスナーから即注意が入った。


『ネタバレ防止らしい』


『終盤だけど、終了まで一切だめらしい』


 忠告が入ったので、満はすぐにスマートフォンで公式サイトをチェックする。

 そこには確かにリスナーの言うように期間限定イベントの配信は一切禁止と書かれた注意文が載っていた。


「あら、本当ですわね。危なかったですわね。ご忠告ありがとうございますわ」


『ルナちはワイらの癒しやからな』


『うむうむ』


 こういう時はリスナーたちの結束の強さを心強く感じる満である。


「いやはや、助かりましたわ。では、通常の常設ミッションをこなすこととしましょう」


 画面を操作して、クエストを選択する満。

 ところが、そのミッションを見た瞬間に、リスナーからはすぐさまツッコミが入ってくる。


『それコンビクエストやんけ』


『おいおい、まさかソロでやるつもりか?』


「はい、その通りですわよ。通常二名で受けるクエストですが、これはソロでも受けられるクエストなのです」


『そのクエなら配信は大丈夫やけど、本気でやるん?w』


「はい、やりますよ」


 心配そうにしているリスナーたちをよそに、満はクエストを選択して始めてしまった。


『オイオイオイ、始めちまったぞ』


『ルナち、まだ間に合うぞ!』


『ルナちならやりかねん』


『ワイらは見守るだけや』


 リスナーたちが騒ぐ中、コンビネーションクエストが始まってしまった。

 二人同時プレイならではの数々のギミックが仕組まれたクエストなので、ソロプレイだと格段に難易度が跳ね上がる。そんなクエストを果たして光月ルナはソロでクリアできるのか。リスナーたちは息をのんで見守っている。


『うっそやろ、堅さ倍増のモブが紙きれのように沈んでいくwww』


『コンビクエとは一体・・・』


『そうはならんやろwww』


『なっとるやろがいww』


 リスナーたちの反応は実に笑いが絶えない状態だった。


『あかん、お腹痛い』


『もはやルナちを止められるクエはないな(確信)』


『さすがにコンビのタイムよりはかかってるけど、これは相当早いぞwww』


「さあ、そろそろフィニッシュですね。このクエスト、実は3回くらい失敗しましてね」


『その3回って、まさかソロ?』


「そうですよ?」


 満からの反応を聞いて、リスナーたちは唖然としてしまった。

 コンビクエをソロで挑んで、なぜクエスト失敗が3回で済むのか。まったく理解が追いつかなかったからだ。

 さっきまで怒涛のように流れていたコメントがぴたりと止まるくらいである。誰もが信じられなかった。

 コメントが止まっている間に、なんと満はボスを撃破してしまっていた。


「はい、これでボスを倒せましたね。配信前に一回確認したんですけれど、その時よりも2秒かかってしまったので、どこかミスしてしまったようですね」


『化wwけww物ww』


『うせやろwwwww』


『ルナちはおかしい(褒め言葉)wwwww』


 リスナーたちからは、さっきまで止まっていたのが嘘のようにコメントやスパチャが飛んできていた。信じられないプレイに賞賛の雨あられである。


 プレイが終わると、画面が元の光月ルナの屋敷の画像に変わる。背景には正月らしく門松やら鏡餅がまだ置かれていた。


「それでは、本日はこのくらいで終わりにしようかと思います。ぜひともチャンネル登録、高評価のほど、お願い致します。それではみなさん、ごきげんよう」


『おつるな~』


『おつるなー』


 こうして、新年初めてのプレイ実況配信は無事に終わることができたのであった。

 今回も光月ルナの常識外れのプレイを見せつけられたのだが、これがまたかなりの高評価だったのはいうまでもないことだった。

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