表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
278/318

第278話 暮れゆく年

 大晦日を翌日に控えた日のこと、満のもとにメールが届いていた。

 差出人は、世貴だった。


「世貴兄さん、また何か作ったのかな。添付ファイルがあるや」


 満はメールを開いてみる。


『やあ、満くん。配管工レーシング、優勝おめでとう。団体戦は惜しかったね』


 一行目からこのテンションである。

 どうやら配管工レーシングの配信を見ていたようだ。本当に世貴は満が出ているのなら何でも見ているようである。

 満にとっては一番のパトロンとはいえ、ここまでの熱のあげようとなるとちょっと心配になってくるというものだ。


(世貴兄さん、大学の勉強大丈夫なのかな……)


 そう思わざるを得ない。

 続きを読んでみる満は、思わずぎょっとしてしまう。


『もう年が明けるな。というわけで、今年も新衣装を送付させてもらった。

 ぜひとも年明けの配信にその衣装で出てきてもらいたい。クロワとサンにも衣装があるから、確認しておくれ。

 というわけだ。よい年を迎えてくれ


 波川世貴』


 光月ルナの新しい衣装は、文面から察するにどうやら晴れ着のようだ。クロワとサンの分まであるとは、ずいぶんと熱の入れようだと思う。

 ひとまず満は、添付されていたファイルを開いてパソコンにデータを保存する。

 そして、光月ルナのための専用ソフトを開き、早速衣装を確認する。

 光月ルナ、クロワ、サンの三つのタブに『New!』の文字がついている。世貴のこだわりはすごいものである。

 光月ルナの衣装は本題なので後回しにして、クロワとサンの衣装から確認をする。

 犬であるクロワの衣装は、羽織袴だった。柴犬のようなデザインに黒い衣装がとてもよく似合っている。

 猫であるサンの方はどうだろうか。こっちも早速確認すると、なんとまあ可愛いロリータ風の振袖だった。というか、サンはメスだったようである。


「ふえっ?! サンの性別ってそうだったの?!」


 満はかなりの衝撃を受けていたようだった。


「もう、そうならそうと最初から言ってくれればよかったのに」


 そう言いながら、満は最後の光月ルナの晴れ着姿を確認することにする。

 光月ルナのタブをクリックすると、そこに表示されるのはデフォルトの服だった。

 ただ、衣装名が書かれたボタンが一つ増えている。それこそが、今回新しく作ったという衣装である。

 ポチッとクリックすると、光月ルナの衣装が一気に変化する。


「おお、すごい」


 なんとも気合いの入った晴れ着である。

 ロリータになっていたサンとは違い、正統派の晴れ着である。もちろん振袖だ。今までは黒や白といった配色の多かった中、クリスマス衣装と同じような赤をメインとした服装である。着物の意匠もかなり細かい。

 満は全身をぐるぐると回転させてみる。帯もかなりしっかり描き込まれているし、背面までまったく手抜きの跡すらなかった。羽美の本気、ここに見たりである。


(これは、早くお披露目したいな……)


 満はかなり興奮しているようだ。

 とはいえど、新年用の衣装であるので、ぐっとこらえる。フライングはさすがに二人に失礼というものだ。

 今日は配信はないので、満はチェックするだけチェックするとパソコンの電源を落として宿題をすることにしたのだった。


 夜中になると、満は真家レニの配信を見ることにする。

 今年受験生で、さらには両親も揃っているというのに配信は行うらしい。レニちゃんらしいなと満はくすっと笑ってしまう。


「こんばんれに~」


『こんばんれにー』


『こんばんれに~』


 いつもの挨拶で真家レニの配信が始まる。この様子を見ると、なんとも安心してしまう満なのである。

 今日の真家レニの配信は実におとなしい感じだった。

 SILVER BULLET SOLDIERの配信はないし、ただトークをして過ごすというシンプルなものだ。


『今日のレニちゃん静かだな』


『どしたん、話聞こか?』


 リスナーもちょっと心配そうなコメントを出している。


「てひひひ、ごめんね。いやぁ、年が明けたらいよいよ受験だから、ちょっち心配になってきちゃってね。あ、ちゃんと勉強してるからね?」


『レニちゃんって受験生だったのか』


『あの技術持ってて受験生は信じられんな』


 リスナーたちにはいろいろと衝撃が走っているようだった。


「てひひひ、話し込んでたらいい時間になったね。それじゃ、描き納めにワンドロいってみよっか。リクエストあるかな?」


 どうやら、最後にイラストを描いて〆ようとしたらしいが、リスナーたちからは大量のリクエストが飛んでくる。


「わわっ、多いなぁ。レニちゃん、困ったぞ」


『おまいら、やりすぎwwww』


『レニちゃんが困ってるぞ』


「よし、決めた。レニちゃんも描きたいやつを三つ描くよ」


『おおっ!』


 真家レニが描く内容を決定すると、リスナーたちは一気に沸き立っていた。

 最初の二枚は、人気アニメとゲームのキャラだ。それにしてはキャラ数が多い上に、相変わらずの描き順である。これにはリスナー大歓喜である。


「最後はこれだーっ!」


 そうやって真家レニが描き上げたのは、光月ルナと真家レニのツーショットだった。


「やっぱり、今年はルナちが一番だったからね。レニちゃんもずいぶんとお世話になっちゃったから、これで〆るのが一番だね、にしし」


『レニルナ助かる』


『やっぱりそうよな』


「それじゃ、イラストは全部PAICHATに上げておくので、心行くまで堪能してね。それじゃ、おつれに~、よいお年を!」


 こうして、真家レニの年内最後の配信が終わったのだった。

 今年も終わりかとちょっと虚無になった満だが、最後に一緒のイラストを描いてもらったことで、しばらくの間顔のにやつきが止まらなかったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ