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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
261/320

第261話 トータルタイムアタック

 スタッフが呼びに来て、いよいよ配管工レーシングの世界大会の会場へと移動する。

 今年の大会の様子も、PASSTREAMERにより全世界に配信されるらしい。

 会場の中には16の国と地域から参加した16チームが集合しており、1チームあたり7人、合計112名が所狭しと集まっている。

 そこに審判となる満天楼の社員たちもいるために、かなりの人数がいる。この中で光月ルナの中の人を見つけられるのだろうか。


「すーはー、すーはー……」


 満は深呼吸を行っている。


「緊張してるのか」


「はい。さすがに外国の方たちにこれだけ囲まれているっていうのは、なかなかない経験ですから」


「見た目外国人なのに、生活は生粋の日本人かよ」


 満の話を聞いて、マッハが驚きつつ笑っている。これには満は不機嫌そうな表情を見せている。


「まっ、そんな反応ができている間は緊張はそれほどしてないってことだ。期待はしているが、気負いはすんなよ」


「はい、ありがとうございます」


 マッハの励ましに、満は思わず笑顔でお礼を言ってしまう。


「ふふっ、この子可愛いわぁ。ずっとチーム組みたいくらいよ」


「やめとけキーン。こいつの腕は全然可愛くないからな?」


「知ってるわよ。でも、気をつけてね。ショートカット禁止のコース、しっかり覚えてる?」


「はい、ばっちりですよ」


 満はキーンの質問に、表情を引き締めつつ答える。なんといってもショートカットは満の最大の武器だ。それが使えないコースとなれば、コース取りとアイテムボックスが勝負を分ける。なにせ配管工レーシングの世界大会は、ゲームシステムの範疇での妨害は認められているのだから。

 トータルタイムアタックでは使い慣れたハッカンで勝負を挑めるものの、団体戦ではどんなキャラが当たるかはまったく想像できない。

 だが、この日に備えてやれるだけのことはやって来た。もうどうとでもなれ。満は開き直ったのだった。


 満天楼の社長の話が終わり、いよいよ世界大会が始まる。

 最初はトータルタイムアタックだ。ランダムに組み合わされた4人でタイムを競うもので、それぞれの環境の中で出されたチーム6人の全員のタイムの合計で争われる。


「えっと、15-Bか。ここら辺かな」


 満は会場入りの際に渡されたパスに書かれていた場所へと向かっている。

 見つけたその場所にやって来た満は、集まっていた人たちに思わずぎょっとする。


(うわぁ、外国人だけだ……)


 自分が外国人な見た目なことを忘れてこの感想である。


[おっと、こんなちっこいのが参加者なのか。どこの国の子だい?]


[銀髪に緑目って、珍しいわね]


 満の耳に日本語が流れてくる。

 実は会場入りの際に渡されたのはパスだけではなかった。円滑に大会を進めるために、同時通訳ができる機械も渡されているのである。

 そのおかげで、母国語を喋りながらも会話がスムーズに行えるのである。


「あの、本日はよろしくお願いします」


 ぺこりと頭を下げて挨拶をする。


[まあ、礼儀正しいわね]


[ははっ、お嬢ちゃん。こちらこそよろしく頼むよ]


 二人の外国人は話し掛けてくれているが、一人だけはまったく話しかけてもこない。ただじっと満のことを睨み付けるように見ているだけだった。

 あまりにもきつい視線なので、満はちょっとびびっている。


[ちょっと、トマ。この子が怖がってるじゃないの。その視線をやめてあげてよね]


[……対戦相手に気を遣う必要はない。ゲームであろうと容赦なく叩き潰すだけだ]


 かなり色の薄い金髪に青い目をしたがっちり風のイケメンは、実に冷たく言い放っている。


(トマさんって、参加者一覧に載ってましたが、確かフランスからの参加者だったはず……)


 フランスから来た人物ということで、つい警戒をしてしまう満である。なぜなら、グラッサという女性がフランスに滞在しているからである。

 満に憑依しているルナ・フォルモントと因縁のあるグラッサが出向いている国の人間。それだけで身構えるには十分なのだ。


[ほら、君もそんなに怖がらないの。世界大会とはいえゲームよ。楽しまなくっちゃ]


 一緒のテーブルにつく女性が間を取り持とうとして必死である。


「ありがとうございます。僕は大丈夫ですから」


 満は女性にお礼を言うと、にっこりと微笑んでいる。


[まあ、可愛い子ね。妹にしたいくらいだわ]


「あははは、遠慮します」


[あら、残念]


 女性は本当に残念そうな目をして満を見ている。


「すみません、そろそろお時間ですから席についていただけませんかね」


 スタッフから声をかけられてしまい、話もそこそこに満たちは対戦のテーブルにつく。

 トータルタイムアタックのコースがランダム抽選によって選ばれる。それはここに集まった96人のプレイヤー全員に共通したコースとなる。

 選ばれたのはラークルート。障害物のない最長コースが選ばれるとは、なんとも好都合だった。


(ラークルートは、ショートカット禁止ではなかったですね。だったら、見せつけてあげましょうか)


 自分の得意コースが当たったせいか、満がいつになく強気になっている。

 スタッフの指示に従って、一緒に走る4人のプレイヤーが自分の扱うキャラを選択していく。

 いよいよ始まる世界大会のレース。

 その運命のカウントダウンがついに始まったのだった。

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