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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
258/318

第258話 合流

 到着が思ったよりも遅くなったので、マッハ以外との顔合わせは翌日に持ち越しとなった。

 これには思わずほっとしてしまう満である。

 それというのも、いつものパターンなら翌日は女の体になっているはずだからだった。

 今回メンバーには女性ということで知らせてあるために、男のままではかなり問題があるのだ。

 普段は女にはなりなくないと思っている満にして、珍しく女になってくれと心底願う珍しい状況にあるのだった。


 翌朝を迎えて、満はひと安心だった。


「よかったぁ……。ちゃんと女になってる」


 目を覚ました満は、銀髪美少女であるルナ・フォルモントに無事に変身していて安心したようだった。

 なにせ、マッハと初めて会った時にルナの状態だったし、マッハもチームメイトには光月ルナは少女だと説明していた。それゆえに、この期間の不安が解消して助かっているのである。

 ただ、この時別の問題も発生していた。

 そもそも、満の女性化はルナ・フォルモントの吸血衝動によって起きている。つまり、血を吸わないとやっていけない状態であるということだ。

 そうなると、どこかで一度は血を吸って戻っておく必要があるということであり、満にとっては危険な一日がどこかで待っていることにもなる。

 全部で6日間の我慢を強いられたアバター配信者コンテストでも、最終的には満はその吸血衝動が抑えきれずに危ない状態になっていた。それを考えれば、倍近い日数となる今回の世界大会中、確実に一度は元に戻らなければならないということになるのだ。


(僕の状態を一番良い状態に持っていくためには、大会の2日前が一番だろうね。その日をどうやって乗り切るか、それを考えなくちゃ)


 そもそも世界大会でいろいろと緊張を強いられる場だというのに、こんなことにまで気をつけなくてはいけないのである。

 だが、ここまでもいろいろと乗り越えてきた満である。そのやる気は充分であった。


「ルナちゃん、起きてるー?」


 満が気合いを入れていると、眠そうな声が聞こえてくる。


「は、はい。もう起きてますよ。おはようございます」


「うん、おはよう……」


 眠たい目をこすりながら話し掛けてくるのは、マッハがリーダーを務めるチームの紅一点である女性だ。

 昨日遅かったこともあって、自己紹介はまだだ。そのため、満はこの女性の名前はまだ知らない。


「私だけ自己紹介しておいてもいいんだけど、抜け駆けみたいでいやなのよね。朝食の時にでもみんなと一緒に紹介させてもらうわね」


 なんともさばさばした感じの女性である。寝ぼけているが。

 年下の満が緊張しないようにと、砕けた感じの優しい言い回しで話し掛けてきている。初めて顔を合わせる人物とはいえ、今回は同じチームで戦うメンバーだからという気遣いなのだろう。

 普段は鈍い満でも、こういう時だけは意外と察しがよかったりする。


 朝食が取れるレストランに集合した満たち。そこには男性5名と女性2名の計7名が集合する。

 それぞれに自己紹介を終えると、早速世界大会のルールを改めて確認する。

 世界大会は団体戦と個人戦があり、団体戦は1チーム6名で行われる。ちなみにチーム自体は、補欠またはマネージャー1名を加えた7名まで登録できる。

 団体戦の内容は複数あり、ひとつは各チームから選ばれたランダムな4名とNPC4名ずつが走り、その6名のタイムの合計で競うものとなっている。

 もうひとつは、チームごとに2名ずつが対戦し合い、その勝利数で競うものだ。つまり3戦のうち2戦を取ればいいというものである。

 ただ、この団体戦にももう一つ縛りがある。トータルタイムアタックはランダムで決められたコースを参加者全員で共有するが、2名ずつの対決となる方は1戦ごとにコースがランダムになる。さらにそれだけではない使うキャラクターも直前にランダム抽選によって決められるのだ。

 つまり普段使いしているキャラが封印される可能性が高いということなのだ。

 トータルタイムアタックは個人戦でもあるので、こちらは使用キャラの選定はプレイヤーに委ねられる。そのため、こちらは特に問題なさそうだった。


「なるほど、そうなると2対2になるレースの方は運にも左右されるというわけですか」


「そういうことだな。俺はゴーリーを使うし、ルナはハッカンを使うだろう? そのいつものスタイルを封印される可能性が高いというわけだ」


「なるほど、分かりました」


 マッハの説明を聞いて、満は一応ルールを把握したようである。

 ただ、このあと、マッハから追加でルールの確認がされる。


「そうそう。ルナには気を付けてもらいたいことがあるんだ」


「なんでしょうか、それって」


「お前が一番得意としていることだな。ショートカットの使用禁止についてだ」


「あっ……」


 マッハから言われて、満は気が付いたようである。

 満が使うハッカンの強さは、そのショートカットの成功率の高さだ。ただ、それが禁止となっているところで使ってしまうと、ショートカットの部分に平均的にかかるタイムが加算されてしまうペナルティが発生する。そうなると、優勝はかなり厳しくなってしまうのだ。


「そういうわけだから、禁止されているコースはしっかりと頭に叩き込んでくれ。大会中はそれどころじゃないこともあるからな」


「分かりました、しっかり覚えておきます」


 話が終わったところで、満たちは朝食を済ませて一度部屋に戻る。

 世界大会は今日から一週間後だ。

 長い長い一週間は、こうして幕を開けたのだった。

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