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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
250/321

第250話 世界大会への参加

「いやはや、この第二コーナーのショートカットは、大きな武器になりそうだな」


「確実に成功させたら、海外チームはびっくりするだろうよ」


 藤倉とマッハはなにやら話をしている。


「ルナってば、本当におかしいよな」


「ええ、ルナちゃんってばすごすぎるわ」


 風斗と香織も反応に困っているようである。語彙力が完全に失われている。

 しばらくすると、開発部に出向いていた四条が戻ってくる。


「すみません、調査が終わりました。改造なしの正規品でした」


 満と風斗が持ってきたリチェンジと配管工レーシングのチェックが終わったようである。

 結果として、当然ながらの異常なしの正規品であったことが証明されたのである。

 つまり、先程実演してみせた通り、光月ルナは改造なしであのショートカットをすべて成功させていたのである。改めて、その能力の恐ろしさを見せつけたことになる。


「なるほど、マッハくんが次の世界大会のメンバーとして彼女を推したがるわけですな。この腕前は間違いなく武器であり、脅威になる」


 藤倉も納得の内容である。


「だけれどもね、私は認められないところかな」


「なぜなのか、理由を聞かせてもらっても?」


 藤倉の出した結論に不満があるらしく、マッハは理由を尋ねている。


「理由としては、彼女はどうも未成年のようだ。未成年者の場合、保護者の同意が必要になる。世界大会までには時間があるものの、エントリー期限は今月20日だ。一週間程度でどうにかできるかな?」


「むむむ……」


「もちろん、参加費用だって必要だしね。未成年者にどこまでペイできるのか分からないだろう?」


 藤倉にいろいろと理由を提示されて、マッハは困っているようだ。

 だが、これほどまでの腕前を持つ人物を、ここで諦めきれるわけがないというもの。マッハは食い下がろうとしている。


「あの、参加費用っておいくらですか?」


 ここでルナとしてやってきている満が問い掛ける。


「ああ、1万円だね。ただ、世界大会の場所を考えると交通費や宿泊費等々もかさむから、十数万は覚悟しておいてくれ」


「それだったら払えますね。僕はアバター配信者で、これまでの収益はほとんど貯め込んでいますから」


「なんと……!」


 現在10万にオーバーの登録者を持つ光月ルナである。再生数を考えれば一か月の収入も相当あるのだ。

 はした金というわけではないものの、満には十分払える範囲なのである。


「みち……ルナ、冗談を真に受けるんじゃない。こういう時の費用はほぼ主催者側か後援会のようなところがもつもんだぞ。俺たちが払うのは交通費と食費くらいだ」


「あっ、そうなのですわね」


 風斗からのツッコミに、にっこりと笑って済ませる満である。

 この満たちのやり取りに、藤倉は思わず驚かされてしまう。


「やれやれ、なんという胆力だろうかな。しかし、彼女を入れるとなれば、去年のメンバーから誰かを抜かなきゃいけなくなる。個人戦ならまだしも、団体戦だってあるのだからね」


「分かってますよ。ちょうど今年は忙しそうなメンバーがいるので、彼に声をかけてみるか」


 どうやら、満を取り込むのにちょうどいい状況があるらしい。

 だが、こうなると問題は満の両親の許可だけということになった。

 見る見るうちにハードルは下がってしまったようである。


「しょうがない、参加できるものとしてこれを渡しておこう。詳しくはホームページに書いてあるのだけれど、書面もあった方が確認はしやすいだろうからね」


「ありがとうございます」


 満は藤倉から配管工レーシングの世界大会のリーフレットを受け取る。


「去年のパンフレットもあるから、これも渡しておこう。今年のものは大会一か月前くらいをめどに登録住所に郵送されることになっている。なんといっても参加者が決まっていないと刷れないからね」


「なるほど、分かりました。熟読しておきます」


「両親の許可が取れたら、俺のところに連絡してくれ。チャンピオン権限で参加をねじ込んでやるからよ」


「おいおい、世界チャンピオンでもルールは守ってくれ。だが、この腕前をみすみす逃す手はない。大会関係者権限として、私の方でうまく処理しておくよ」


 マッハも藤倉もずいぶんと光月ルナのことを気に入ったようである。

 こうなれば、あとは満が両親を説得するのみとなった。


「個人情報もあるから、パンフレットの郵送先はSNSのDMに送るメールアドレスへの返信で伝えてくれ。こういうのは昨今うるさいからね」


「はい。それでは、僕のSNSのアカウントを……」


「いや、光月ルナで検索してフォローしておくよ。私の方のアカウントを教えておく方が重要だ。知らないアカウントから連絡が来たら、警戒するだろう?」


「そうですね」


 きっぱりと言い切る満である。

 ここまですっぱりと言われてしまえば、藤倉もマッハも苦笑いである。

 お互いにアカウントをフォローし合うと、ようやく話も終わりといったところだ。


「それじゃ、俺たちはこれで帰ります。こいつの実力を見せつけて、世界中を驚かせてやりましょう」


「はははっ、期待しておくよ」


 こうして、満たちの満天楼本社訪問は終わりを告げた。

 なんにしても、満はどうやら配管工レーシングの世界大会に出なければいけないようだ。

 光月ルナの転換点と思われるが、はたしてどうなるのやら……。

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