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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
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第246話 光月ルナ対世界チャンピオン

 いよいよ始まった光月ルナ対世界チャンピオンによる配管工レーシングの頂上決戦。

 参加を表明していたアバター配信者二人は、完全に空気である。

 レースのスタートは、ゴーリーを選択したマッハが素晴らしいスタートダッシュを決めていた。

 ただ、このラークルートのスタートから第一コーナーまではかなり短い。このスタートダッシュも実は諸刃の剣なのである。加減を間違うと、スタートダッシュ直後にコースアウトなのだ。


『さすがは世界チャンピオン』


『スタートダッシュ後のミスもするわけないよなぁ』


『ただ、最初にいきなり左カーブだから、ちょっとミスるとすぐに谷底なんやけどな』


 リスナーたちは冷静に解説をしている。

 ラークルートのコースは、スタートから左にカーブし、しばらく直進が続いた後ヘアピンにも似た右カーブが待っている。

 大きなオーバルを描くようにコースが展開され、3回目の左カーブでもって第二コーナー付近へと戻ってくる。

 その後はどこかのサーキット場を思わせるようなヘアピンカーブやシケインをクリアすると、ようやくスタート地点に戻ってくる。

 距離は長く、カーブもそこそこ数がある。そのため、タイムアタックの上位勢は1分半前後という記録に留まっている。それでも、普通の人からしたら異様に早いタイムである。

 記録を出すにはとにかくトップを走り続けるしかないが、アイテムによる妨害のある対戦ではそうもいかない。

 緑メット、赤メットによる攻撃。バナナによる設置弾。ステラ無敵による特攻など、それはあらゆる手が使えるのである。

 ところが、さすがに世界チャンピオンの走りは違う。

 アウトインアウトによる理想的なコース取り、全キャラ中最速を誇るともいうゴーリーというキャラでもって、あっという間に後続を離していく。

 安全圏とは言い切れないながらも、完全な独走状態を築いていた。


『さすがチャンピオン、走りに無駄がなさすぎる』


『一方のルナちは5位か』


『前後は一般参加のアバ信たちやな。人気のルナち相手だけに走りづらそうにしとる』


 実況が続けられる中、あっという間に一周してしまう。


『タイム差は7秒か』


『7秒?!』


『えっ、そんなに離れてない?』


『でも、7秒ってかなりの差やぞ』


『いやいや、ゴーリーとハッカンならありえない差だな』


『スピンからコースアウトで十分ひっくり返る差だぞ』


 リスナーたちのコメントも、実況スレ同様な反応を見せている。

 あまりにも予想外な展開なせいか、驚きが隠せないようだ。


『ルナちのコーナリング、やべえな』


『イン側、これ落ちてない?』


『ジャンプコーナリングやん、これ』


『なにそれ』


『イン側の落ちそうになるタイミングでジャンプボタンを押して落下を回避するんや』


『ちな、タイミングはめっちゃシビア、ワイは体感2割しか成功したことない』


『正攻法なのか・・・』


 ジャンプコーナリングという信じられない方法を使って、光月ルナはマッハとのタイム差を縮めているのだ。

 それにしても体感2割という成功率を確実に成功させている光月ルナは、リスナーたちはもとより、チャンピオンにも衝撃を与えている。

 だが、更なる衝撃は3周目に待ち構えていた。


『16秒は絶望的』


『いや、まだ分からんよ、あれが出れば・・・』


『ルナち、第二コーナーで外に突っ込んでいくぞ?』


『まさか・・・』


 次の瞬間、そのまさかが起きた。

 第二コーナーの大外でカーブしながら、急激に左へと向きを変えてコースアウトしたのだ。


「ここです!」


 対戦が始まってから、光月ルナがようやく発した言葉である。

 光月ルナの操るハッカンは勢いよくコースアウトするが、その瞬間ふわりと浮き上がったのだ。


「いっけーっ!」


 次の瞬間、信じられないことが起きた。


『うわっ、向こう正面に着地したぞ』


『都市伝説の第二コーナーショートカットやん』


『これ、成功したの初めて見たぞ』


『距離が足りないんだよな、普通は』


『ハッカンでこれ成功させるって、ルナち何者なん・・・?』


 リスナーたちから衝撃のコメントが飛び交っている。


「おいおい、マジかよ……」


 マッハもこの感想である。

 驚きのあまり、操作が一時的に不安定になってしまう。

 だが、すぐに立て直すあたり、さすが世界チャンピオンというものだ。


「はっ、ショートカットは禁止事項じゃないからな。世界大会でも成功率の悪さから唯一除外されている裏技だぜ」


『マジか!』


『ショートカットってゲームバランス壊すから禁止されてるもんやと思った』


『ラークルートのショートカットは成功率0%やからな、そら禁止されんよ』


『なるほど・・・』


 リスナーたちの驚きの間もレースは進行している。

 2周終わった時点で16秒あった差も、このショートカットで光月ルナのリード10秒に変わった。


『勝てそうやけど、アイテム次第ではひっくり返る差やな・・・』


『おまいら、ルナちがここまでアイテム使ってないのを忘れるな』


『あっ、ほんまや』


『マジかよ・・・、世界チャンピオン相手にアイテム未使用って、ただの変態やん』


『さすがシルバレでも見せた驚異のゲームの腕前やでぇ・・・』


 ショートカットを成功させて逃げる光月ルナ。意地で追いかける世界チャンピオンマッハ。

 最後のアイテムルーレットでマッハが引いたのは、よりにもよって追尾機能のある赤メット。


『ああ、なんという豪運や』


『逃げ切れると思ったのに、なんて物引きよる・・・』


「惜しかったな。ここまで健闘したことを褒めてやるよ」


 次の瞬間、マッハの操るゴーリーから赤メットが噴出される。

 コーナリングで距離が近くなったタイミングを狙うとは、さすが世界チャンピオンである。

 はたして、光月ルナは赤メットを回避できるのか。

 そして、勝負の行方はどうなるのか。

 ハラハラドキドキの残り4分の1。

 リスナーたちも息を飲んでその走りを見守っていた。

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