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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
244/320

第244話 一周年記念配信、始まる

 いよいよ、光月ルナの一周年記念の配信の日を迎える。

 一週間前までで配管工レーシングへの参加者の募集は打ち切り、応募をしてくれた人たちにはそれぞれメールでやり取りをしていた。

 宣戦布告をしていた世界チャンピオンのマッハも、光月ルナの丁寧な対応には感心していたようだが、それでも世界チャンピオンとしての意地を見せると発言し続けていた。

 満も満で世界レベルの腕前と戦えるとあって、嬉しそうな反応をずっと見せていた。

 そんなわけで、他の参加者たちはその他大勢のモブの状態になっていた。

 結果として、世界チャンピオンと物好きなアバター配信者が二人と、なんとか四人対戦ができる状態で落ち着いていた。


 配信開始時刻である夜9時を前に、満は自分のチャンネルの状況を確認する。


「うわぁ、すっごく多い……」


 表示された待機人数を見て思わずびっくりである。


 53万人……。


 今までの同接人数の最高記録の4倍以上である。

 この数値は、今日の配信への期待度の高さの表れである。

 開始10分前、満は本日の参加者たちに配信窓を分割するためのパスワードを送る。

 配信の収益の分配は、一周年記念の光月ルナが全体の6割、マッハが2割、他の参加者が残りといった感じである。

 ともかく、多くの人が注目する配信までもう少しである。


 夜9時を迎え、光月ルナの配信が始まる。


「おはようですわ、みなさま。光月ルナでございます」


『おはよるなー』


『おはよるな~』


『一周年、おめでとう!』


 満の挨拶への反応として、リスナーからコメントでお祝いが飛んでくる。

 これだけ多くのリスナーからお祝いしてもらえると、実に嬉しくなってしまうものである。


「みなさま、本当にありがとうございますわ。みなさまのおかげで、僕もここまで頑張ってこれました。この場で感謝申し上げます」


『ルナちはやっぱりいい子や……』


 リスナーのコメント欄も、なんとも穏やかな雰囲気になっている。


「それでは早速本日のイベントに参りましょう」


『おっ』


『いきなりやなぁ』


「はい、一周年記念イベント、配管工レーシング大会でございます」


『きちゃーーーーーっ!』


『本日一番の楽しみだ』


『他のアバ信が急きょ配信を休むほどの注目度』


『まあ、その一部がここに混ざり込むんやけどね』


 配管工レーシングの単語を出した瞬間、リスナーたちが大盛り上がりである。

 世界チャンピオンが宣戦布告をしてきた戦いの場なのだ。盛り上がらないわけがないというものである。


「それでは、本日の対戦相手の方をお呼びいたします。結局最終的には三名の方にご参加いただけることになりました」


『wktk』


『あー、心がぴょんぴょんするんじゃあー!』


 リスナーたちのコメントが段々と盛り上がりを見せている。


「それでは、ご参加いただける方々に登場して頂きますわ」


 満が合図を送ると、配信画面が四分割される。

 左上が光月ルナ、右上が果たし状を叩きつけてきた世界チャンピオンのマッハ。下の二人はどこかで見たことのあるアバター配信者である。


『うおおおっ!』


『世界チャンピオンのマッハ、本物じゃんか!』


『まさか個人勢のアバター配信者の配信で、世界を見ることになるとは!』


 興奮のあまり、コメントがものすごい勢いで流れていく。

 そのため、さすがの満でもあまり追いきれなかったようだ。


「ふふっ、すごい勢いですね。それではまずは自己紹介と参りましょうか」


 コメントの勢いに驚きながらも満は平然と自己紹介の流れに入る。こういうマイペースは見習えるところだろう。


「まずは僕ですね。光月ルナでございます。真祖たる吸血鬼が僕のコンセプトですわ」


『このお嬢様然とした姿で僕という一人称、くうう、たまらん!』


 なかなか紳士的なコメントが次々と書き込まれていく。


『では、次はマッハ様ですわ』


「説明不要かも知れないが、配管工レーシング世界チャンピオンのマッハだ。俺だけアバターじゃないが、今日はこのハッカン使いとどっちが上か白黒つけるために参加させてもらった。いいか、しっかりと結果を目に焼き付けるんだぞ!」


『マッハ様ー!』


『くう、かっちょええじゃねえか!』


『マッハ様こそ最速、吸血鬼など遅るるに足らぬ!』


 マッハの自己紹介でも、コメント欄はものすごい盛り上がりを見せている。

 やはり、光月ルナを意識した書き込みも少しばかりあるようだった。

 残り二人の自己紹介も終わり、いよいよ本題へと入っていく。


「それでは、コース選定とルール設定はマッハ様にお任せします」


「いいのか?」


「はい。僕はどうもいろいろと疑われているようですので、公平性を保つのであるならば、やはり別の方に設定して頂いた方がよろしいと思いますわ」


「了解した。それじゃ、俺がチャンピオンとなった時のお得意コースにさせてもらうぜ」


『遠慮がねえwww』


『倒す気満々で草』


 リスナーたちが盛り上がる中、マッハがコースを選んでいる。


「よし、決まったから送ったパスで入場してくれ」


「承知致しましたわ」


「キャラはいつものやつを使ってくれよ。そうでないと意味がねえからな」


「分かっておりますとも」


 入場した満は、いつも通りハッカンを選ぶ。

 マッハはゴーリー、他の参加者はミドルとユッケンを選んでいた。


「それじゃ始めるぜ。コースは最長のラークルート3周だ。アイテム制限はなし。全力でぶつかり合おうぜ!」


 全員の準備が整い、いよいよ配管工レーシングの頂上決戦が始まろうとしている。

 リスナーたちは息を飲み、コメントが止まるくらいにその瞬間を見ようと集中するのだった。

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