表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
242/321

第242話 衝撃は駆け巡る

 翌日、満のクラスに風斗が突撃してきた。


「満! これを見たか!?」


「ど、どうしたんだよ、風斗」


 今日は男の子な満は、香織のクラスに登校している。なので、風斗が隣のクラスから突撃してきたのだ。

 風斗の慌てっぷりに、満はきょとんとした顔をしている。


 これでも朝の登校時には何もなかったというのに、昼休みになっていきなり飛び込んできた。

 一緒にいた香織もびっくりするくらいの大声である。


「これを見ろ。芸能ニュースだ」


「えっ、どれどれ?」


「『配管工レーシング世界一、個人アバ信に宣戦布告』?!」


 タイトルを読み上げて、香織が目を白黒させていた。


「ちょっと待って、なんで世界チャンピオンが個人勢にこんなことをしているの?」


「記事の内容を読め」


「……しょうがないなぁ」


 風斗が香織の質問を受けて、満たちに記事をしっかり読むように促してくる。満たちは仕方なく、風斗が見せているスマートフォンの画面を覗き込んだ。


「えっとなになに?」


 記事にしっかりと目を通していくと、満たちの表情がみるみる変わっていく。


「いやいや待って。これ本当なの?」


「本当だから慌ててるんだよ。昨夜、緊急配信をして生放送で宣言したらしいぞ」


 風斗たちが騒いでいると、クラスの一部の生徒が寄ってくる。


「あー、見た見た。配管工レーシングの世界チャンピオン『マッハ』の配信だろ?」


「私も見てた。初めて聞く名前だったけど、アバター配信者を名指しして敵意むき出しにしていたわ」


 クラスメイトたちが次々と証言を出してくる。

 これでは記事を読まずして、クラスメイトたちの情報だけでどうにかなってしまいそうだ。


「光月ルナだっけか。名指しされてたの」


「そうそう。どうやらマッハは光月ルナの配信を見ていたらしくて、その内容に衝撃を受けたらしいからな」


「えっ、どういう内容なの?」


 何も知らないクラスメイトまで口を挟んできた。

 知っている者知らない者がごちゃごちゃと混ざってきたので、配管工レーシングに詳しいクラスメイトがいろいろと説明を始めている。

 それによれば、配管工レーシングのキャラクターは次の四タイプに分かれるらしい。

 平均的な能力を持つ『ミドル』と『トール』の兄弟。

 操作性の高い『プリン』と『マーシュ』。

 加速抜群だが最高速が遅いの『ハッカン』と『ノロノロ』。

 加速は最悪だが最高速が速い『ユッケン』と『ゴーリー』。

 初期段階では全部でこの八キャラが選べるらしい。

 タイムアタックでは最高速が速いユッケンやゴーリーが選ばれることが多く、世界チャンピオンのマッハはユッケン使いだという。


「それで、光月ルナは加速はいいけど最高速が最も遅いハッカンを使ってたらしいんだけど、ステラっていう無敵かつ最高速の上がるアイテムを使わずに、ありえないタイムで走破してみせたらしい」


 この話が出た時、満は思わず「えっ」という顔をしてしまう。

 思わず何かやっちゃいましたかと思ってしまったようだ。


「それに刺激されたらしくて、マッハは光月ルナに宣戦布告をしたというのが、その記事ってわけだ」


「世界チャンピオンの逆鱗に触れたのか……。個人勢恐るべし」


 思わず黙り込んで、信じられないといった表情で満に視線を向けてしまう風斗と香織である。


「でも、光月ルナって今月末にデビュー一周年記念の配信をするんだろ? いいじゃん、目玉ができて」


「だなぁ。世界チャンピオンから目をつけられたってだけで、話題性抜群だぞ」


 クラスメイトたちは面白がって笑っているが、当事者である満はそんな気分に到底なれるわけがなかった。

 まったくもってどうすんの状態である。


「おっと、昼休みが終わっちまうな」


 盛り上がっていると、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いている。

 これを合図にして、クラスメイトたちがざわざわとしながらも席へと戻っていっている。

 風斗もさすがにこれ以上は滞在できないので、おとなしく自分のクラスへと帰っていった。

 残った満と香織は席が近いとあって、もう少し話をしているようだ。


「どうするのよ、満くん」


「どうしたもこうしたも、受けるしかないでしょうに」


 満は困った顔をしているが、せっかく名乗り出てくれた挑戦者だ。怖いけれど大事にしたいところである。


「はあ……。新品を買って配信した内容でまさかこんなことになるなんて……」


 盛大にため息をついてしまう満である。

 満からしてみれば、新しいゲームに手を出して配信してみただけなのだ。まさかここまで大きな反響をもたらすとは思ってもみなかったのである。

 世の中、本当に何が起こるか分からないものなのだ。


「可愛いからあのキャラ使っただけなのになぁ……」


 本気で満は凹んでしまっていた。

 とりあえず午後の授業が始まってしまったので、満は普通に授業を受けていたが、その表情はずっと難しいままだった。


 アバター配信者コンテスト二位のニュースも対して話題にならなかったというのに、思わず形で全国区になってしまった光月ルナ。

 かつてない注目を集めることになってしまったデビュー一周年記念の配信までは、残り三週間を切っている。

 満の気の休まらない日々が始まったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ