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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
238/320

第238話 困った時のリスナー様

「おはようですわ、みなさま。光月ルナでございます」


『おはよるなー』


『おはよるな~』


 その日の夜、満はいつも通り配信を始めていた。


『ルナち、ポスト見たで』


『もう一周年か、めでたいねぇ』


『俺のところにも相談が来たな。これは気合い入れて記念衣装を作らねば』


『また来とるな、パパさん』


 どうやら配信告知と同時に呟いた内容を見てくれたリスナーたちがいたようだ。そして、世貴は当たり前のように今回も配信を見に来ていた。


「はい。早いものでして、今月末にはアバター配信者デビュー一周年となります。みなさまが支えて下さったおかげでございますよ」


『いやぁ、めでたいものだ』


『もう一周年・・・、早くね?』


『光陰矢のごとしかぁ・・・』


 リスナーたちもしみじみとしているようである。

 なにせ今回の一周年ということには、光月ルナ、満本人が一番驚いているのだから。

 ……忘れてたとは言わないであげよう。


「つきましては、一周年の記念として何をしたらよいかと、みなさまに相談をしたいところなのですわ」


『あー、分かる』


 満の悩みはみんなにも分かるらしい。


『ルナちが憧れているっていうレニちゃんは、自画像を描いてたな』


『あー、そういえばそうだったな』


『レニちゃんの超絶技巧は今見てもまったくわけが分からん』


『レニちゃんだからねぇ・・・』


 リスナーたちの話では、真家レニは自分のイラストを配信中に描き上げていたそうだ。……いつものよく分からない描き順で。

 さすがレニちゃんだなと、満はつい笑ってしまう。

 しかし、満にはまったく参考にならなかった。いや、記念となる何かを出すということは参考になったか。

 とはいえ、満はそういった技術のひとつも持ち合わせていない。なので、イラストを描くなんていうのは無理な話だった。


「参りましたね。僕にはそんな技能はありませんですし……」


 満は本気で悩み始めてしまった。


『ええんやで、ルナちはいつも通り話をしたり、シルバレ配信見せたりしてくれたら』


『ルナちのシルバレ配信は楽しみ!』


『ワイもやな』


 コメントを見て満は困惑している。

 

「う~ん、僕にはどうにも決められませんね」


 満は腕を組んで悩んでいる。


「分かりましたわ。ひとまずはSNSで呼び掛けました通り、みなさまから案を募ります。それを受けて僕が内容を決定して配信させて頂きますわね」


『それでええで』


『ルナちが特別なことをせんでもええねん、ワイらが祝うだけでもええんやで』


『せやせや』


 なんとも優しいリスナーたちである。


『おうおう、俺のことを忘れてもらっちゃ困るぜ』


『おう、パパさんやん(笑)』


『テンション高いなー(棒)』


『ルナちのデザイン手掛けた奴と一緒に、一周年用の衣装をすぐ作ってやるからな。それを着てくれれば俺は満足だ!』


『さすパパ』


 コメント欄で世貴が荒ぶっていた。

 これには満も思わずくすくすと笑ってしまう。


「ふふっ、分かりましたわ。では、モデラー様から送られてくる衣装を楽しみにしておりますわね」


『ワイらも楽しみやで』


『ルナちの一周年記念衣装・・・、想像するだけでたまらん』


『自重』


 リスナーの一部が少し暴走し始めている。


「では、アイディアはみなさまから募ることにしまして、まだ暑い夜でございますので、『SILVER BULLET SOLDIER』のプレイ実況と参りましょうか」


『待ってました!』


『ルナちといったらこれよな!』


 満がSILVER BULLET SOLDIERのプレイ実況を始めるといった瞬間、リスナーたちは歓喜の声に包まれた。

 やはり、吸血鬼が銀の弾丸を撃ちまくるというのは、絵面的においしいようである。

 それにしても、満もすっかり腕を上げてしまったようで、楽にトップ100にめり込むようになってしまっていた。


「うん~、今日はちょっとミスが目立ちましたね」


『あれでミスしとるとか、怖いなぁ・・・』


「とはいえ、こればかりではみなさまは飽きませんでしょうかしら?」


『ワイは構わんけど、どうなん?』


『他のゲームのプレイ実況も見てみたい気持ちは無きにしも非ず』


『俺は配管工レーシングが見たいな』


『またべたべたな有名どころを・・・』


 満が見たいゲーム実況を尋ねてみると、具体的な作品名がひとつ上がってきた。


(配管工レーシングかぁ……。確か、風斗が持っていたような?)


『ルナち?』


 しばらく黙り込んでしまった満が気になったのか、リスナーからスパチャが飛んできた。

 そのスパチャの音で満ははっと我に返る。


『大丈夫?』


「はい、大丈夫でございますわ」


 満は苦笑いをしながらきっちりと答えている。


「配管工レーシングですね、考えておきますわ」


『無理せんでええで、ただの希望なんやし』


『せやせや、まずは無事に一周年を迎えておくれ』


「お気遣い、本当にありがとうですわ」


 満はちらりと時計を見る。どうやら程よい時間になったようだ。


「では、キリのよいところとなりましたので、本日はこれにて終了させて頂きますわね。ごきげんよう」


『おつるなー』


『おつるな~』


『一周年wktk』


『俺の作る衣装も楽しみに待っててくれよー』


 最後に世貴のコメントが見えて、満はつい笑いをこぼしてしまう。

 みんなのおかげで、満は少し気が楽になったようである。

 あと三週間、ここまで支えてくれたみんなのために、満は楽しい一周年にしようと決意を固めたのだった。

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