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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
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第237話 一周年記念に向けて

 翌日の土曜日、早速風斗と相談することに決めた満だったが、男に戻っていたのでクラスが違っていたので、放課後に家に遊びに行くついでに相談することにした。


「満が俺んちに遊びに来るのは久しぶりか」


「うん、そうだね。風斗が僕の家に来ることは時々あったけど、ほとんどはお出かけしているもんね」


 思い出してみれば、確かに満は風斗に家に遊びに行くことは小学生以来だった。今さらながらに、そんなに家に遊びに行っていなかったんだなと、満はつい困った顔で笑ってしまう。


「まあ気にすんなよ。そういうことだってあるさ。特にお前がアバ信始めてからは、お前の家の方がいろいろと都合がよかったしな」


「う、うん、そうだね」


 風斗の言葉に、つい安心をしてしまう満だった。


「ただいま、母さん」


「あら、お帰りなさい。あら、満くんじゃないの」


「お邪魔します」


 出迎えてくれた風斗の母親に対して、満はぺこりと頭を下げている。


「こんな時間に遊びに来てくれるなんてね。そうだわ、お昼食べていくかしら」


「あっと、そうですね。そうさせてもらいます」


 風斗の母親の提案に、満はつい甘えてしまった。

 そんなわけで、風斗と時間に余裕を持って話ができることになった。

 なにせいつも買っている本は、昨日買ってしまっているのだ。出かける必要はまったくないのだから、家でゆっくり話せるというものである。


「で、相談って何だよ、満」


 部屋に入ると、二人揃って床に座り込んでいる。


「うん、昨日お母さんから言われて思い出したんだけど、今月、僕がアバ信になってから一年でしょ。だから、何か記念の配信でもした方がいいのかなって、相談に来たんだ」


「ああ、そういやばそうだな。なんだかんだあって、いつ始めたとかおぼろげになるよな」


「うん、お母さんに怒られたよ」


 昨日の買い物の時の話を思い出して、満は頬をかきながら恥ずかしそうに笑っている。

 その様子を見て、満に何があったのかを察してしまう風斗である。

 しかし、自分もほとんど忘れていたので、人のことが言えないため、黙って笑うしかなかった。


「それで、世貴にぃには相談したのか?」


「うん、レニちゃんの配信の後になったけど、一周年だから何かないかなって相談しておいたよ」


「あー……、絶対何かとんでもないもの贈ってくるぞ? 覚悟しとけよ、満」


「えーっ?!」


 大した注文を付けていないと見た風斗は、満に忠告をしておく。当の満は喜びと困惑とが入り混じったような反応をしていた。

 しかし、過去のことを冷静に思い出せば、絶対ないとは言えない。


「う、うん。楽しみにしておこうかな」


 最終的には引きつった笑顔で落ち着く満であった。

 正面の満の面白い反応に対して必死に笑いをこらえる風斗は、気を紛らわせようと両腕を組んで真剣に考え始める。


「一周年の区切りの配信ねぇ……。正直、俺はアバ信を見るのは好きだが、そういうのには疎いからなぁ。先輩に聞いてみたらどうなんだ?」


「レニちゃんにはおそれ多くて聞けないよ」


 風斗が話を振ると、なぜか真家レニ限定にして答えている。

 これには風斗は頭をかいて呆れていた。


「こないだのアバ信コンテストで何人か連絡先交わしただろうが。その人たちにも相談してみたらどうだよ」


「う~ん、あまり親しくないし、こういう相談していいのかなぁ……」


 満は難色を示しているようだ。

 アバター配信者コンテストで知り合った人たちとは、これといった連絡を取り合っていないためだ。なので、いきなり相談を持ち掛けるのは失礼じゃないかと遠慮しているのである。


「まあ、気持ちも分からんでもないな。とはいえ、満はこれといって特技があるわけじゃないしな」


 完全に行き詰ってしまっていた。

 その時、ふと風斗が手をポンと叩いている。


「そうだ、リスナーに聞けばいいんだよ。光月ルナのリスナーたちなら、何かアイディアをくれるかもしれないぞ」


「そうするかなぁ……。変な反応こなきゃいいけど」


「変なのが来たら無視だ無視。決定権はお前にあるんだからな」


「あっ、そうだね」


 風斗が言えば、満はきょとんとしながら頷いていた。


「うん、そうだよね。リスナーたちの力を借りてみるよ。ありがとう、風斗」


「いいってことよ。相談に乗ってやるのも親友ってもんだろ?」


「うん、本当にありがとうね」


 風斗が胸に拳を当てながらドヤ顔をすると、満はおかしそうに笑っていた。

 どうやら、風斗のおかげで満は吹っ切れたようである。


「二人ともーっ! お昼ご飯の用意ができたわよ」


 相談が一段落したところに、風斗の母親が呼ぶ声が聞こえてくる。


「それじゃ、とりあえず飯を食うとしようぜ。SNSで呼び掛けるにしても夕方にならねえと、光月ルナは動けないからな」


「だね。こういう時、吸血キャラって設定がネックになっちゃうよね」


「まったくだな」


 笑顔で笑いながら、満と風斗は階段を降りて一階にある食堂へと向かう。

 その時、満は自分の母親に連絡を入れそこねていたことを思い出し、慌ててお昼は風斗の家で食べてくると伝えていた。


 光月ルナの活動一周年記念の配信に向けて、いよいよみんなが動き出す。

 記念すべき一周年の配信、それがどのようなものになるのか、この時の満たちにはまったく想像できなかった。

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