表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
234/318

第234話 二学期が始まる

 気が付くと夏休みが終わってしまっていた。

 満は服を着替えて、学校に行く準備を進めている。


「満ー、朝ごはんできたわよ」


「今行くよ」


 朝食ができたらしく、母親に呼ばれている満。

 服を着替え終わった満は、バタバタと食堂へと降りてくる。


「おはよう、満」


「うん、おはよう、お母さん」


「おい、俺には挨拶はなしか」


「うん、お父さんもおはよう」


 いつものように挨拶を交わす。


「夏休み終わっちゃったわね。宿題はちゃんと終わったの?」


「そんなの、七月中にほとんど終わっちゃったよ」


「旅行に行ってたのに、よく終わらせたもんだな」


「その後、暇だったんだもん。一日中使えばなんとかなるもんだよ」


 満が淡々と答えるものだから、父親は唖然とした様子だった。


「父さんが子どもの頃は、今頃必死に頑張ってたんだがな」


「そういうところは、私に似たのね、満は」


 父親ががっくりした表情を見せていると、母親はおかしそうに笑っていた。


「よし、それじゃ父さんは一足先に会社に向かうよ。満は久しぶりの学校だから、気を付けて行ってこいよ」


「うん、ありがとう、お父さん」


 満にお礼を言われると、気分がよくなったのか軽やかに父親は勤務先へと向かっていった。

 満と母親は、おかしそうに笑いながら父親の出勤姿を見送っていた。


「それじゃ、僕もそろそろ出なくっちゃ」


「いってらっしゃい。お父さんのいう通り、久しぶりの学校だから気を付けなさいよ」


「はーい」


 満は返事をすると、歯磨きをしてから部屋に戻っていった。


 登校途中、風斗だけではなく香織とも合流して、すっかり昔のように三人で登校するようになっていた。


「まったく、新学期初日から女か」


「しょうがないでしょ。僕にコントロールできるわけじゃないんだからさ」


 文句を言う風斗に対して、満は銀色の長髪をなびかせながら文句を返している。

 風になびく銀髪は、太陽の光を反射して、いつも以上にキラキラと輝いて見える。


「まあまあ、どっちにしても満くんなんだから、そこまで文句言わなくてもいいんじゃないかな」


 なんとも険悪になりそうだったので、香織がすかさずフォローを入れておく。


「ま、まあ、そうだな……」


 香織にはあまり言い返せないのか、風斗は仕方なく受け入れることにしたようだ。


「でも、私としては村雲くんの方が羨ましいんだけどな」


「なんでだよ」


「だって、満くんが女の子なら、クラスそっちじゃないの。一緒にいられるなんてうらやましいわ」


 香織は露骨に風斗に対して嫉妬をぶつけている。


「それを言うなら、男の時はそっちのクラスじゃねえか。なんで男の時はそっちで、女の時がこっちなんだよ。逆だろ、逆」


 嫉妬をぶつけられて、風斗はさすがに言い返していた。

 風斗は男の時の満と一緒にいたいらしい。


「はは~ん、そういうことなのね」


「何がだよ」


「内緒」


 何かを悟ったような表情をする香織に、風斗は苛立ちを隠せないでいるようだ。


「もう、やめてよ、二人とも!」


 険悪な雰囲気になってきたので、さすがに満も耐え切れなくなったようだ。

 二人の間に入って大声で叫んでいた。


「僕のことでケンカするのはやめてよ」


 おさまりそうにないので、もう一度二人の顔を見ながら満は必死に仲裁している。

 満がとても必死だったので、風斗も香織もどうにか落ち着きを取り戻していた。


「悪い、満」


「ごめんなさい、満くん」


 通学路のど真ん中で、頭を下げて満に謝る風斗と香織だった。


「はいはい、みんな仲良くだよ」


「うわっ!」


「ちょっと、満くん?!」


 急に二人の手を引っ張って自分にくっつけるものだから、風斗も香織も驚いて困惑している。

 以前の満のことを思えばなかなか取ることのない大胆な行動だったからだ。


「む、村雲くん、からかってごめんなさい」


「いや、俺の方もムキになって悪かったよ」


「そうそう、みんな仲良くだよ」


 恥ずかしそうに互いに謝罪し合う二人の姿に、満はとても満足そうに笑っていた。


「てか、満。ちょっと手を離してくれ」


「えっ、なんで?」


「おまっ、どこに俺の手が当たってるか分かってて言ってるのか?」


「えっ?」


 満は自分の右側にいる風斗の腕を見て、なんとなく分かった。


「ああ、風斗ってこういうの恥ずかしいんだ」


「お前な!」


「でも、仲良くっていったところだし、はいっ」


 満は風斗の手を離していた。


「まったく、自分の性別くらいちゃんと把握し置いてくれよ」


「何言ってるの。僕はちゃんと分ってるよ」


「分かってないわよ、満くん……」


 風斗と満のやり取りを見て、つい対応に困ってしまう香織である。


 このあと、無事に三人は仲良く学校まで向かうことができ、それぞれの教室に向かっていった。

 夏休み明けの初日からこんな調子で大丈夫だろうかと、満と一緒に教室に向かいながら風斗は頭を悩ませている。


「どうしたの、風斗」


「な、なんでもねえよ」


「えーっ、顔が真っ赤だよ?」


「あ、暑いからだろ。気にするなっていうんだよ」


 まったく、はたから見ればなんともにやにやしたくなる光景である。

 そんなこんなで、満たちの二年生の二学期が始まった。

 こんな調子で大丈夫なのだろうかと、風斗は席に着くとすぐにそのまま突っ伏してしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ