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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
229/322

第229話 フリーダム

 ライブが終わった後、満たちは早速イリスのところに突撃を仕掛けた。

 ところが、当然ながら関係者以外立ち入り禁止ということを言われ、門前払いとなってしまった。さっき入れてしまったのは何だったのだろうか。

 首を捻ってみたところで、今現在は入れないのは変わらなかったので、仕方なく満たちはその場から去っていった。


「えーっ、満くんたち帰っちゃったのぉ?!」


 ライブが終わって休憩中のイリスが騒いでいる。


「はい。私としてもイリスと少し話をさせようかと思ったのですが、警備員たちに追い返されて仕方なくという感じです」


「そっかぁ、ここ関係者以外は入っちゃダメだもんね、本当は」


 思い出したかのように話すイリスである。


「しょうがない。明日も来ることを期待しておこうかな」


「そうですね。明日なら、予定が終わればその後はフリーですから、その方がいいでしょう」


 環もイリスの案に賛成しているようだ。


「しょうがない。今日は今から小麦ちゃんのところにでも突撃するわ」


「ちょっと、イリス。ホテルはどうするのですか」


「環さんだけで泊まればいいじゃないですか。どうせ一人で泊まっても変わらないんですし」


 イリスはまた適当なことを言っている。

 正直環からすれば頭の痛い話だ。

 翌日の打ち合わせに今後の予定など、いろいろと話をしたいことがあるのだ。


「おっと、そろそろルナちの配信の時間かな」


「何を見てるんですか」


「アバ信の配信だよ。いろんな子がいてね、トークのネタにさせてもらったりしているのよ」


「はぁ、そうなんですね」


 環はイリスのマイペースな様子に呆れた様子を見せている。


「それで、そのルナちっていうのは誰なんですか」


「知らない? アバター配信者コンテストっていうイベントで二位に入ったっていう新人アバ信だよ。吸血鬼タイプのアバターを使う子で、すっごく興味を持ったんだ」


「ここで見るんですか?」


「もちのろん。どうせ今日のイベントが終わるまで移動できないし、配信中はご飯とでも言って立ち入りを宣言しておけば問題ないもん」


 なんともな自由っぷりである。


『おはようですわ、みなさま。光月ルナでございます』


 そんなことを言っていると、夜の9時を迎えて光月ルナの配信が始まる。


「あれ、この子。さっき来ていたルナ・フォルモントに似ていませんかね」


「似てるよねぇ。私がこの子を追っかけるきっかけになったのはさっき言ってたイベントだけど、本格的に追いかけることに決めたのはそこなのよね。気になるじゃん、退治屋としては」


 イリスはにっこりと悪い笑みを浮かべている。


「この子ってば、自分のことを『僕』っていうし、『SILVER BULLET SOLDIER』っていうホラーシューティングの腕前がすごいのよね。あっ、環さん、お弁当下さいな」


 イリスはすっかり夜ご飯のことを忘れていたので、今さらに仕出しのお弁当を要求している。


「まったく、夏場でこんなところに置いてたお弁当、傷んでたって知りませんよ?」


「へーきへーき。そのためのクーラーボックスじゃないの」


 イリスははにかみながらお弁当を受け取っている。

 仕出しのお弁当はライブが終わった後に部屋に届けられたものだ。そこから一時間半経っているわけだが、その間クーラーボックスにしまわれていたのである。

 ようやく手を付けられたお弁当は特に問題はないようで、イリスはパクパクと食べていた。


「ん~、この声、なんか聞いたことがあるなぁ……」


「さっき来ていた、満っていう子じゃないんですか?」


「あ、やっぱり?」


 光月ルナの配信を聞いていて、イリスも環も声に聞き覚えがありすぎたようだ。すぐに満の声だと分かったらしい。


「なるほどねぇ……。これならさっきの話も信じられるってものだわ」


「そうですね。吸血鬼のアバターを使っていて、名前も同じ。条件は揃っていますね」


 二人はすぐにそんな推理を立てていた。

 実際のところはルナ自身にも分からないので、当たっているとも外れているとも言えない推理である。


「本人に話を聞いてみたいところだわ」


「やめて下さいよ。イリスに何かあったら、私が社長からどやされるだけなんですけど?!」


 やたらと興味を持つイリスを、環は必死に止めようとする。


『それでは、みなさん。ごきげんよう』


 二人が騒いでいる間に配信が終わってしまう。


「あーっ! 配信ほとんど見逃しちゃったじゃないですかーっ! 環さんのせいですよ」


「イリスが危険なことをしようとするからじゃないですか」


 二人はじっとお互いを睨んでいる。


「まったくしょうがない。このあとは小麦ちゃんでもからかってうっぷんを晴らします」


「知り合いをはけ口にするのはやめなさい」


 頬を膨らませながら物騒なことを言い出すイリスを、環は本気で窘めていた。


 その後、ようやくスタッフが来て会場を出られることになったイリスは、環に頼んで予定通り小麦の家へと向かうことにする。


「小麦ちゃんの家は久しぶりだわ。ふふっ、びっくりするかしらね」


「それはいいんですけど、ちゃんと朝起きて下さいよ。朝の8時にはここに戻ってこないと午前のイベントに間に合いませんからね」


「分かってる。分かってるって」


 舌をぺろりと出して返事をするイリスを見て、不安しかない環である。


「待っててね、小麦ちゃん。舞お姉ちゃんが遊んであげるからね」


 小麦の家に向かいながら、イリスはとてもうきうきしているのだった。

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