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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
225/317

第225話 夏祭りを満喫中

 駅前のお祭りは大盛況である。

 昨今いろいろあったとしても、やっぱり騒ぎたい人たちは騒ぎたいのだ。


「あっ、これ可愛い」


「本当だ。ぬいぐるみだね」


 満たちはとあるブースに来ている。

 そこでは最近の人気アニメのキャラクターグッズが販売されている。


「おい、あっちにはアバ信のぬいぐるみが売られてるぞ」


「えっ、どれどれ?」


「あっ、待ってよ」


 風斗の声で、満たちは一斉に移動していく。

 たどり着いた場所では、確かにアバター配信者たちのグッズが売られていた。


「これって、モンタージュライブのアバター配信者だっけか」


「そうだと思うわ。このあたりは見覚えがあるもの」


「すごいなぁ。アバター配信者ってこういうこともできるんだ」


 風斗と香織が話す中、満は並べられているグッズを見つめながら、何かを呟いている。


「それだったらできるんじゃないか?」


「えっ?」


「ルナの版権を持っているのは、羽美ねぇだからな。グッズ制作は委託になるだろうが、売りに出したら結構人気になると思うぞ。クロワとサンも」


 驚く満に、風斗が説明をしている。


「そっかぁ……。それもいいかもしれない」


「出たら買うわ」


「……マジかよ」


 満が少し乗り気なところを見せると、香織がすぐさま断言していた。これには風斗もドン引きである。

 ただ、満はなんとも照れくさそうな顔をしながら、最終的にはにへらと崩れた笑顔を見せていた。


 このあともこまめに水分を取ったり日陰で休んだりしながら、満たちはお祭りを楽しんでいる。

 午後3時を迎えると、メインステージがある会場から大きな歓声が聞こえてきた。


「おっ、もうこんな時間か」


「何があるの?」


「地元出身アイドルによるミニステージだよ。さすがにこの時間じゃ簡単なトークだけだが、夜になるとライブが行われるらしい」


「へえ、そうなんだ」


 風斗は今日のイベントについて説明をしている。興味がありそうな香織に対して、満の方はあまり関心がなさそうだ。


「おい、満。そんな顔すんなよな」


「そうだよ。アイドルが来るなんて滅多にないんだから、満くんも一緒に見に行きましょう?」


「えー……」


 風斗と香織がものすごく誘ってくるが、満はかなり面倒くさそうである。

 それもそうだろう。

 今日の満は女性の姿である。半分吸血鬼になっているので、これだけ太陽の光が降り注ぐ中であまりじっとしていたくないのだ。

 しかし、二人にここまでせがまれてしまうと、友人として無下に断れないというものだ。


「もう、分かったよう……」


 満はやむなく折れた。


「でも、倒れそうになったらすぐ日陰に移動するからね。できる限り端っこの席にしてよね」


「分かった。俺たちもそこまで鬼じゃない」


 そんなわけで、見るには遠いけれども、すぐに離脱できる端っこの方の席で見物することとなったのだった。


 アイドルがやって来るというメイン会場へとやって来た満たち。そこにはなんとも立派なステージが建てられている。

 ステージの上には屋根が設置されており、屋根に沿うようにしてミストシャワーが設置されている。一応の猛暑対策はされているようだ。


「きれいな人だね」


「そりゃアイドルだからな。あのルックスを保つために、裏ではすっごく努力してるんだろうな」


「うん~……」


「どうした、満」


 素直に感心している風斗や香織とは違い、満はどういうわけかすごく渋い顔をしている。

 さすがにここまで眉間にしわが寄った顔をされると、風斗も気になってしまうというものだ。


「なんだろうかなぁ。なんでか僕はあの人を好きになれない気がする」


「なんだそりゃ」


 満の言い分に、風斗はわけが分からないといった感じだった。

 話をしながらも、目の前のアイドルに対する警戒感をまったく解く様子は見られなかった。


「満くんが嫌だって言うなら、私は移動してもいいんだけど?」


 香織が満を気遣って声をかけると、満は少し下を向いて左右に首を振っていた。


「好きになれないだけで、嫌いだとは言っていませんよ。これからの活動のためです、本物のアイドルから学ばなくっちゃ……」


 満は、アバター配信者『光月ルナ』として高みを目指すために、どことなく嫌悪感を持ちながらもステージを見続けることを選択したのだった。

 心配していた風斗と香織も、満がそういうのならと、再びステージへと目を向けていた。


 この時間はまだ暑いということで、トークショーとミニゲームが行われ、一時間のステージが無事に終了した。

 ぞろぞろと観客が席を立つ中、満たちも移動しようと席を立とうとする。


「すみません、通して下さい」


 声が聞こえると、移動する人たちが立ち止まって道を開けている。

 何だろうと思って顔を向けると、ステージ上にいたはずのアイドルが満たちに向かって走ってきたのである。


「銀髪の子、見つけた……」


「えっ、僕?」


 走ってきたアイドルは満の前で立ち止まり、突然満の手をつかんできた。


「ちょっと来てちょうだい」


「えっ、なになに?!」


「おい、何をするんだよ」


「待って下さい」


 腕を引っ張られて連れ去られる満。

 一瞬びっくりして止まってしまった風斗と香織だったが、すぐさま満たちを追いかける。

 一体何が起きているのだろうか。通行人たちも唖然とした様子で視線を向けているのだった。

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