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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
202/322

第202話 コンテストを終えて(ブイキャス編)

「おはようございます~」


「あら、マイカちゃん、おはよう」


「おはようございます、ミミ先輩」


 満たちが帰路についている真っ最中、Vブロードキャスト社には香織がやって来ていた。

 夏休み中ということもあって配信の制限がなくなったので、今日は午前中から配信を行うことになったのだ。


「ぴょこらちゃんは先に控室で待っているわよ」


「わわっ、本当ですか? 私も急がなくっちゃ」


「終わったら、みんなでお昼にしましょうね」


「わあ、ミミ先輩とご一緒ですか。楽しみですね」


「楽しみは後に取っておいてね。早く行ってあげてね」


 華樹ミミと挨拶を交わしたマイカは、ぴょこらの待つ控室へと急いで向かっていった。

 その姿を見送りながら、華樹ミミは呟く。


「まったく、私の共演者はいつまで待たせるのかしらね」


 不満そうな呟きだが、華樹ミミは笑っていたのだった。


 ―――


 無事に配信が終わり、マイカとぴょこらはぐぐっと背伸びをして体をほぐしている。


「ふぅ、テスト前以来かしらね、配信をしたの」


「ぴょこらちゃん、忙しそうにしてたものね。家のお手伝いをしてたの?」


 マイカの方は夏休み突入頃に配信をしていたのだが、その時は珍しくぴょこらとの配信ではなかったのだ。

 単独にも慣れておきましょうということで、その日は珍しい単独での配信になったが、マイカは緊張しながらもどうにかこなしていた。

 単独になった理由というのが、ぴょこらの都合がつかないというものだったのだ。


「そそっ、土用でしょ? だから、親戚の手伝いをさせられちゃってね。まったく大変だったわ」


「うなぎ屋さんなの?」


「ん~、本当は内緒なんだけど、マイカ相手だからいいかしらね。正確にはただの定食屋さんだけど、土用の時期だけ特別にうなぎを出してるのよ。だから、今年はもう一回あるのよね……」


「えっ、そうなの?」


 マイカは驚いている。


「あっ、知らないんだ。土用っていうのは立秋とかの季節の変わり目直前の二十日間のくらいのことをいって、その中にある丑の日が土用の丑の日っていうわけ。今年は二回あるのよ」


「そうなんだ、知らなかったわ」


 ぴょこらの説明を聞いて、マイカはとても驚いている。

 そこへ、同じく配信を終えた華樹ミミがやって来る。


「お疲れ様、二人とも。これからみんなで食事に行かないかしら」


「はいはい、行きますよ!」


 意外とぴょこらが食いついていた。隣にいたマイカがびっくりしてしまっている。

 あまりの元気の良さに、華樹ミミはくすくすと笑っていた。


「それじゃ行きましょうか。車をお願いしてもいいかしら、タクミ」


「なんで俺なんだよ。森さんに頼めよ、俺一人だけ男って、目立ってしょうがねえだろうが」


「だったら、柊さんか橘さんを捕まえなさいよ。文句言っているとおごらせるわよ」


「げっ、卑怯だな。これが癒しの筆頭たる華樹ミミの本質だって垂れ込んでやろうか?」


 華樹ミミの取った戦法に、タクミは本気でビビっていた。


「あっ、タクミ先輩、おはようございます」


「おはようございます」


「おう、二人ともおはよう。……しゃあねえな、可愛い後輩のために俺が車出してやるから、さっさと店を決めろ」


「ふふっ、そうこなくてはね」


 マイカとぴょこらから挨拶をされたタクミは、仕方なく運転手を引き受けていた。

 仕方なく四人で食事に出ることになったので、マイカたちをここまで連れてきた森や海藤には断りを入れておいた。


「分かりました。次回の来月以降のスケジュールを組んでいますので、みなさんでいってきて下さい」


 許可が下りたので、マイカたちは四人で近くのファミリーレストランへと向かったのだった。


 ファミリーレストランで食事中のこと、華樹ミミが話題を切り出す。


「そういえば、昨日のアバター配信者コンテストは見ていたかしら」


「ああ、見てたさ。あれがあったから、俺らの予定は全部空白になってたんだよな。社長もなんだかんだ言って、すごく注目してたようだな」


 タクミはそう答える中、マイカとぴょこらも口にものを含んだ状態で首を縦に振っていた。どうやら、全員見ていたらしい。

 なんといっても、アバター配信者のコンテストなのだから当然といえば当然かもしれない。


「にしても、あの優勝者も納得って感じだったな」


「狸小路稲荷でしたっけか。チャンネル登録者数では、真家レニや光月ルナに少し劣りますが、あの見た目とトーク力でいい感じでリスナーたちの心をつかんだのでしょうね」


「詳しいな」


「一応、参加予定者の一覧を見て全員分調べましたからね」


 華樹ミミの発言に、思わず絶句をしてしまうタクミだった。


「光月ルナさんも惜しかったですね。もう少しで優勝もあり得たのに」


「まぁそこは経験の差かしらね。配信回数は多いけれど、中の人が幼そうだったから、その分リスナーたちの心をつかみきれなかったのかもしれないわ。まぁ服装のインパクトは大きかったでしょうけれど」


「水着だったよな。吸血鬼だからこそのギャップってやつか」


「……受け狙いはあまり好きじゃないかな」


 光月ルナの評価に関しては、四人はばらついていた。

 受け狙いなキャラであるぴょこらがこの評価だったので、タクミは笑いを必死にこらえていた。


「社長判断で結局不参加になっちゃったけど、参加してたらいいところまではいけたかもしれないわね。第五期生のこともあるし、来年なら参加はあり得るかもしれないわ」


「だといいな。一度はでかい祭りには参加してみたいもんだからよ」


「そうですね」


 四人はかなりコンテストへの参加は前向きのようである。


「よし、社に戻ったら少し話をしてみようかしら」


「お前、今日は暇なのかよ」


「暇よ!」


 タクミが指摘すると、華樹ミミはきっぱりと答えていた。タクミがたじろぐくらいである。

 これにはマイカとぴょこらはこらえきれずに笑ってしまっていた。


 どうやら、アバター配信者コンテストはVブロードキャスト社所属のアバター配信者たちにもいい刺激となったようである。

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