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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
197/315

第197話 見よ、これが上位陣だ

 いよいよ上位三人の発表の瞬間である。

 司会の合図でドラムロールが響き渡り、力強く音がやむ。


「第三位が出ましたね。得票数7万2334票、無法師心眼ーっ!」


 発表と同時に会場から割れんばかりの歓声が沸き上がる。

 得票数第三位は、満と同じ組で登場した無法師心眼だった。

 アバターの服装自体はコンセプトガン無視だったものの、ぶれない姿勢が評価されたと思われる。それに加え、彼が普段行っている解説動画の分かりやすさというものが後押しをしたのだろうか。

 だが、それでも三位が精一杯だった。


「さぁ、続きまして第二位の発表です。どちらも女性型のアバターでしたね。さて、どちらが先に発表されるのでしょうか。ドラムロール、スタート!」


 司会が叫ぶと同時に、会場に再びドラムロールが鳴り響く。

 さすがに二位の発表ということもあってか、少し長い。

 なぜならこの発表が終われば、自然と第一位、つまり優勝者も判明してしまうからだ。主催側がもったいぶっているのである。

 会場内が静まり返る中、長かったドラムロールがようやく鳴りやむ。

 それと同時に、モニタの棒グラフが一本だけ更新される。だが、名前と得票数は表示されなかった。


「さあ、発表します。アバター配信者コンテスト第二位は、得票数12万5240票……」


 ここで司会は一度黙り込む。

 まったくじらしてくるとは、意地の悪い人である。

 これもエンタメ畑で人気の芸能人だからなのだろう。

 溜めに溜めた司会が、モニタの方へと顔を向ける。それと同時に、第二位の名前が表示される。


「光月ルナーっ!」


 司会の声と同時に、今度は会場内はどよめきに包まれた。


『ルナちが二位だと?!』


『バカな、そんなはずは……』


 コメント欄も意外といった様子である。

 だが、事実は事実だ。重く受け止めなければならない。


「いやぁ、意外な結果となりましたね。というわけで第一位の発表です」


 三度ドラムロールが鳴る。

 結果は分かり切っているので、みんなの興味はその得票数だった。

 全体では60万票余り。三位と二位の二人だけで既に約20万票を集めている。しかも、二位の光月ルナの得票数は12万票超え。つまり、一位はそれ以上あるということなのだ。


 会場やモニタの前のリスナーたちが固唾をのんで見守る中、ドラムロールが鳴りやむ。

 注目が集まる大モニターに、結果が表示される。


「アバター配信者コンテスト、栄えある第一位は狸小路稲荷! 得票数は12万8776票~っ!」


 なんということだろうか。

 一位と二位の差は3500票ほどだった。

 僅差とはいえ、負けは負けである。


「あ~あ、負けちゃったかぁ……」


 満は力なく椅子にもたれ掛かっていた。

 しかし、そんな状態は長く続かなかった。


「失礼します。上位三名にはコメントを頂きますので、映像をつながせて頂きます。アバターの表示をよろしくお願いします」


 発表が終わると同時に、満たちのブースにスタッフが乱入してきたのだ。隣の心眼のブースでも同じような声が聞こえてくる。

 どうやら、上位三名には表彰とともにコメントをもらうようになっているようだ。

 まったくもって身構えていなかった満は、目を見開いて何事かと辺りをきょろきょろと見回している。


「おう、準備はできているぜ。これで大丈夫か?」


「はい、ばっちりです。いやぁ、まるで来ることが分かっていたかのようですね」


 慌てていた満とは対照的に、世貴は既に準備を整えていた。スタッフにもこんな風に言われる始末である。


「当たり前だ、俺が手掛けたんだからな。優勝を逃したのは悔しいが、三位以内は堅いと思ってたからな」


 まったくもって信じ切っていたようだ。この世貴の自信は一体どこから来るのだろうか。

 風斗と満は、呆然とそのやり取りを見ていた。


「すぐに準備しろ。インタビューが始まるぞ」


「あっ、そうですね。頑張ります」


 世貴に言われて、満はあたふたとしながら準備を整える。

 モーションキャプチャまで装着すると、心を落ち着けようとして何度も深呼吸をしていた。

 その様子を、風斗は微笑ましそうに眺めていた。


 やがて、入賞者インタビューが始まる。

 上位三人のアバターが表示され、司会との間でやり取りが始まる。

 ものすごく緊張はしていたせいで、満は自分が話した内容も、他の二人の話していた内容もまったく覚えていない。

 終わった後で世貴と風斗の表情を確認した限りは、無難な受け答えができていたと思われる。

 二人から労いの言葉ももらえたので、満はようやく初めて力を抜くことができたのだった。


 上位者インタビューが終われば、今度は審査員十名からの個々に対する寸評とコンテストの総評が述べられる。

 あまり悪い評価ではなかったようで、聞いていた満はほっと胸を撫で下ろしていた。


「みなさまありがとうございました。これにて、今年のアバター配信者コンテストを終了させて頂きます。5時間の長丁場、最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました!」


 会場の中は拍手に包まれ、アバター配信者コンテストは狸小路稲荷の優勝で幕を閉じたのだった。

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