第196話 結果発表~!
いよいよ、このコンテストに参加したアバター配信者が全員登場した。
さすがに午後3時から始まったコンテストも、10分ずつが15組とあって、気が付けば夕方の6時半を過ぎてしまっていた。
入れ替わりのところで時間がかかるので、大体予定通りである。
「ようやく終わったな。これから審査が行われて、1時間後に発表か。この間は配信は何を映すつもりなんだ?」
背伸びをしながら、風斗が疑問を口にする。
そこへスタッフが入ってくる。
「これからは特別ゲストの登場ですよ。一曲披露して頂いて、そこからトークショーで時間を稼ぎます」
「へぇ、ずいぶんとお金をかけているな」
「そりゃもう社長の方針ですからね。宣伝費といって、ものすごく社の予算をかけています。その費用を広告費収入だけで賄っているっていうんですから、本当にすごいですよ」
スタッフはにこやかに笑っている。
「そうだ。打ち上げに行かれるかどうかも関わらず、この時間はみなさんにお配りしているものがあるんです。お腹も空いているでしょうからどうぞ」
スタッフは差し入れを持ってきた。
「これは、饅頭か。それとお茶」
「はい、地元の銘菓とお茶ですね。食べずにお持ち帰りでもいいですが、ぜひとも味わって下さい」
スタッフはそう告げると、控室から出ていった。
せっかく渡されたものだからと、満たちはありがたくいただくことにする。
「うむ、うまい、うますぎる」
「お茶もおいしいですね」
「まったく、地元のPRにも余念はなしか。さすがだな」
少しではあるもののお腹が満たされた満たちは、コンテストの中継ぎであるイベントを見守ることにしたのだった。
コンテストの結果発表までの間に出てきたアバター配信者は、確かにレジェンド級の大物だった。
配信のコメント欄も、狂喜乱舞と困惑が入り乱れたようなコメントで埋め尽くされていた。
『アイエ、ナンデ。ナンデ、ラブボンド?!』
『この人休止してなかったか?』
『休止宣言してた大物を引っ張ってくるとか、無茶苦茶にもほどがあるわwww』
とはいえ、概ねは好意的な反応だったようで、このつなぎのイベントは成功だっただろう。
はい、大物芸能人と大物アバター配信者が出てきたこのイベントは、あくまでもコンテストのつなぎ、おまけなのである。
おまけにこのお金のかけよう。さすが宣伝費と言い切るだけのことはあるものである。
大物アバター配信者が退場すると、司会が一人になる。
そこへ、イベントのスタッフがやって来て耳打ちをしている。司会はこくりと頷くとカメラ目線となった。
「みなさん、お待たせしました。今年のアバター配信者コンテスト、ただいまをもちまして一般投票の受付を終えました。間もなく結果が出ます」
司会が話すと、会場内からは大きな歓声が巻き起こる。
泣いても笑っても、いよいよ結果発表の時間となったのだ。
「では、先に審査員票から見てみましょう」
司会がそう宣言すると、巨大モニタに呼ばれた特別審査員十名の票が表示される。
特別審査員は一人10票の持ち票がある。それを好きなように割り振れるので、一組に10票全部入れることもできるし、幅広く十組に1票ずつということもできる。
全部で100票ある審査員票の合計値が表示される。
「うーん、審査員票の伸びは悪いようだね」
表示された内容に、世貴は少々ばかり不満があるようだ。
満が演じる光月ルナに入った票は6票。全体の6%であるのなら、十分健闘した部類ではあるのだが、世貴は不満そうだった。
「いいじゃねえか。厳しい目を持っている審査員たちからもこれだけ票が入ったんだからな」
「でもなぁ、狸小路稲荷に負けてるのはどうもな……」
世貴が文句を言うので、その狸小路稲荷の票を見てみる。
8票である。
これから一般審査員のとんでもない量の票が入ってくるのだから、2票は誤差だろう。
それでも世貴は不満なのである。どこまでいっても、世貴はルナファーストなのだ。
「それではここに、日本国内のリスナーたちが投票した一般票を加算します。有効投票は全部で60万3271票。モニタにご注目下さい!」
特別審査員の100票など、本当に誤差でしかない有効票である。
司会の合図によって、モニタに映し出された票数を示す棒グラフがものすごい勢いで伸び始めた。
審査員票でトップだったアバター配信者も、あっという間に飲み込まれてしまう。
祈るような気持ちで状況を見守る満たち。
やがて、棒グラフの伸び方がゆっくりになっていく。
途中から一本、また一本と棒グラフが脱落していく中、最後まで伸び続ける棒グラフは三本あった。
狸小路稲荷、無法師心眼、そして、光月ルナの三人だった。
そろそろ伸び切ると思った時だった。
「おおっと、ここでいきなり棒グラフの伸びが止まったぞ?!」
司会が叫んだとおり、三本が同じ位置でぴたりと止まったのである。一体どういう事なのか。
「ほうほう、三位から発表していくつもりのでようですね。では、僭越ながら、この私が三位から順番に発表させて頂きましょう」
司会が宣言すると、会場からは割れんばかりの歓声が上がっている。
最後の最後までハラハラドキドキである。
この緊張に、満は最後まで耐えきれるのだろうか。
胸を押さえながら、その瞬間を息をのんで見守っている。