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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
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第174話 期末テストが終わって

 無事に期末試験が終わる。


「だあ……、疲れたぁ……」


 三日間の日程が終わり、全部のテストを終えた満は机に思い切り倒れ込む。

 初めての頃は胸が当たって驚いていたものだが、今ではすっかりそれもなくなっている。完全に女性に慣れたようだ。


「おう、お疲れ。どうだ、今日はどこか寄ってくか?」


 同じくテストを終えたばかりの風斗が話し掛けてくる。


「うん、やっとテストから解放されて、あとは夏休みを待つだけだからね。気分転換にどこか行きたい」


 満は机に倒れ込んだまま、顔だけを起こして呼びかけに答えている。


「そうだな、せっかくだし花宮も誘うか。幼馴染みで揃って遊びに行こうぜ」


「あっ、いいね。それじゃ、早速花宮さんを誘おうっか」


 放課後にやることが決まった満たちは、早速隣のクラスへと向かった。


 隣のクラスにやって来た満と風斗は、香織を探す。

 クラスの中では、香織は友達に声を掛けられて話をしている最中のようだった。

 さすがに友だち同士の会話を邪魔するのはどうかと思った二人は、そっと立ち去ろうとする。


「あっ、村雲くん、ルナちゃん」


 ところがどっこい、香織に気付かれて声を掛けられてしまった。


「ごめんね、みんな。私は二人と遊びに行ってくる」


「そっかあ、残念」


「ルナちゃんなら仕方ないか」


「まぁ今日でなくてもいいわよ。また考えておいて」


「うん、本当にごめんね」


 友人に謝りながら、香織は満たちのところへと駆け寄ってきた。


「いいのか、友だちのことは」


「うん、いいの。また遊ぶ約束はしたからね」


 風斗が確認すると、はにかみながら香織は答えていた。


「それに、私って思ったより女の子同士の付き合いが苦手みたい。それよりは二人の方が気楽でいいわ」


「そっか。お前がいいならそれでいいや」


 香織の言い分に、風斗は呆れた様子を見せている。


「でも、一度家に帰ってからだよね?」


「そうだな。制服でうろちょろするよりはいいと思う。正直女二人に挟まれるのは気が気じゃないんだがな」


「なーによ。両手に花なんてそんな経験、一体いくらできると思ってるの?」


「僕も女の子にカウントされるんだ……」


 風斗と香織の言い合いに、満は複雑な表情をしている。


「自分の姿を鏡で見てから言ってくれ」


「自分の姿を鏡で見てから言ってよね」


 二人からまったく同じ言葉をぶつけられた満は、ただ「はい……」と答えるのが精一杯だった。


 ―――


「ただいまー」


「あら、おかえり、満。テストはどうだったかしら」


 家に帰ると母親に出迎えられる。ちょうどお昼を作っているのか、台所から顔を出していた。


「まぁやれるだけやれたよ。あっそうだ。お母さん、昼から風斗と花宮さんと一緒に出掛けてくるからね」


「あっ、そうなのね。じゃあ、楽しんでらっしゃい」


「三人揃っては久しぶりだからね、そうするつもりだよ」


 にやけながら話す母親に、満は無表情で答えている。


「そう。とりあえず着替えてきたらお昼にしましょう。出かけるんだから、少しは気合いを入れた格好にしなさいよ」


「なんでだよ。幼馴染みと出かけるのに、なんで服装に気合いを入れる必要があるんだよ」


 母親が何か企んでいるらしく、にやけながら声を掛けてくる。満は怒ったように反抗して二階へと上がっていった。


「まったく、お母さんってば何を企んでるんだか……」


 頬を膨らませながら部屋へと戻った満は、とりあえず黙々と服を着替えていた。


 ―――


 お昼を済ませた満は、集合場所となっている香織の家へと向かう。

 なぜ香織の家かというと、そこが街の中心部に一番近いからだ。つまり通り道ということである。

 香織の家に到着すると、満はそこでばったり風斗と出くわす。同じタイミングで家に到着するとは、さすがは幼馴染みである。


「お、おう」


「あっ、風斗。まさか同時に到着するとは驚きだね」


「そうだな……」


 どういうわけか、学校にいた時と風斗の様子が違う。


「どうしたの、風斗」


「いや、なんでもない」


 そういいつつも、風斗は満から顔を背けていた。

 風斗の態度がよく分からず、満は少々不機嫌な顔をしている。


「あっ、二人とも来てたんだ。ごめんね、待たせちゃったみたい」


 そこへ香織が意気揚々と出てくる。

 ところが、目の前の二人の様子に、おもわず固まってしまう。どことなく雰囲気がおかしかったからだ。


(あれれれ、どうしてこんな雰囲気になってるのかしら。ここは、私がどうにかしなきゃ)


 このままだと今日のお出かけが楽しめないと感じた香織は、どうにかしようと試みる。


「二人とも。いつまでも家の前にいても仕方ないから、早速出かけましょう、ね?」


「ああ、そうだな。どこがいい?」


 香織が話し掛けると、どうにか風斗が反応していた。


「僕はカラオケがいいかな。たまには思い切り歌いたい」


「あっ、私もそれがいいな。村雲くんも大丈夫?」


「ああ、なんだっていいぞ。テストが終わったんだから、うっぷん晴らしがしたいだけなんだからな」


 どうやら風斗もテストは憂鬱らしい。

 この日ばかりは一気に発散がしたいようだ。


「それじゃ決まりね。駅前商店街のカラオケボックスに行きましょう」


 香織が両手を合わせて笑顔で言うと、満は元気よく返事をしていたものの、風斗は視線を泳がせながら小さく返事をしていた。


 行き先も決まったことで、三人は自転車をこいで目的地へと向かう。

 テスト勉強のうっ憤と一緒に、この微妙な雰囲気も吹き飛ばせるのか。香織はちょっと心配そうに二人を見ていた。

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