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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
154/317

第154話 自分は自分だよね

「おはようですわ、みなさん。光月ルナでございます」


『おはよるな~』


『おはよるなー』


 土曜日ということで、満は配信を始めている。

 配信冒頭のこのやり取りもすっかりおなじみになってしまっている。


「ゴールデンウィークも終わってしまいましたわね。本当に時が経つのは早いものです」


『まったく同感』


『休みなんてなかった』


『社畜乙』


 満がしれっと放った言葉から、なぜかつらい現実が連なってきた。これには満も苦笑いである。


「お仕事お疲れ様です。せめて僕の配信の間だけでも現実をお忘れ下さいませ」


『うう、優しさが心にしみる・・・』


『ああ、これがママというやつか・・・』


 中身が中学二年生だというのに、なぜかリスナーたちからはママ認定されてしまう満である。

 そのくらいに、満演じる光月ルナの包容力が素晴らしいということだろう。

 中学生男子としては、ものすごく複雑になるというものだ。


(今はルナさんの影響で女性化してるけど、やっぱり素直に喜べないなぁ……)


 配信画面を眺めながら、満は内心そんなことを思っていた。


「さて、今日の配信内容はと申しますと……」


『ドキドキ』


『wktk』


 満が内容の発表を渋ると、リスナーたちからは期待のコメントがたくさん飛んでくる。

 溜めに溜めて満が発表した内容はというと……。


「はい、困った時の『SILVER BULLET SOLDIER』ですね。今日はタイムアタックモードに挑戦してみようと思います」


『ズコー』


『や っ ぱ り か い』


『マンネリと化しても、ルナちなら常にネタになるのがおいしいよね、シルバレ』


『銀の弾丸を華麗に撃ち放つ銀髪吸血鬼、これが絵にならないわけがない』


 リスナーたちの反応はだいたいこんな感じだ。

 とはいえ、ゴールデンウィーク頭の配信以来なので、そこそこ日数があいているのでそこまでマンネリにはなっていなはずだ。


「ふふっ、できればこのゲームの中でも僕の姿を再現してみたいですね。カスタマイズがそこまで自由でないので、再現は不可能なんですよね」


『運営に要望を出そうぜ』


『クリーチャーアバターで遊んでみたいよな』


『世界観が崩壊する罠』


 残念そうに満が言えば、リスナーたちはリスナーたちで同情したり提案したり、関連した内容で好き勝手発言している。

 発言がひと通り落ち着いたところで、満はタイムアタックモードでSILVER BULLET SOLDIERの実況配信を開始する。

 今回はソロクエストである。

 他のクエスト同様に99体の雑魚と1体のボスを倒すものだ。

 数の構成は変わらないが、登場するクリーチャーの種類、場面、地形などの条件がクエストによって違う。

 今回満が選んだのは、過去に遊んだことのない初めてのマップだった。つまりは初見プレイである。


「僕もこのゲームはそこそこやりこんできましたので、初見マップでどれだけ実力を発揮できるのか試してみたいと思います」


『まさかの初見プレイ』


『ルナちもいよいよこのゲームにのめり込んできたな』


『ゲームを楽しむのはいいけど、依存症はマジ注意な』


「ご心配ありがとうございます。僕はせいぜい週に一、二回しか遊んでおりませんので問題ないかと思いますわ」


『意外と少なかった』


『その頻度で初見プレイをしようとか普通は思わんぞ』


『頻度は少ないけど、十分ゲーマーの域やな』


 初見プレイという発言をきっかけに、リスナーたちのコメントは面白いほど流れていく。

 さすがにルナ・フォルモント状態の満でも追うのはギリギリ可能かどうかという速さである。


 無事に満の初見プレイ実況は終わる。

 結果としてはベストテンにも入れないほどに散々な結果だった。


「やっぱり僕では入ることは不可能でしたね」


『バケモンばっかりやからな、上の方は』


『上の方のゲームのやり込み具合は異常だよ』


 どこか諦めのついている満だったが、リスナーたちは一生懸命慰めようとしていた。

 リスナーたちの優しさに触れながら、今日の満の配信は終わりを迎えたのだった。


「本当に本日はお付き合い頂き、みなさまありがとうございました」


『ルナちは癒しだからな』


『心のオアシスだもん、当然よ』


 リスナーたちからは優しい言葉が投げかけられている。この状況に、満はとても嬉しく思っているようだ。


「このような方々に囲まれて、僕は本当に幸せでございます。では、また次回お会い致しましょう。ごきげんよう」


『おつるなー』


『おつるな~』


 締めもいつもの挨拶をして、満は配信終了のボタンをクリックする。

 無事に配信が終われば、満は胸に手を当てて、大きく息を吐いていた。


「本当にみなさんいい人で、僕は恵まれているよね。これからもリスナーのみなさんに元気を与えられるように、僕も頑張っていかないとね」


 満はむんと気合いを入れている。


「ははっ、この感触は慣れないなぁ。でも、今も女の子になっていることを忘れてるなんて、馴染みすぎちゃったな」


 満は改めて自分の姿を確認する。

 キャミソールとショートパンツというセパレートになっているパジャマを着ている。

 こんな姿で配信していたのかと思うと、今さらながらに恥ずかしくなってくる満なのである。

 しかし、男だろうと女だろうと、自分はアバター配信者『光月ルナ』なのだ。

 リスナーたちの言葉を胸に、満は今日も満足して眠れそうだなと思ったのだった。

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