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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
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第15話 銀の弾丸ゲーム

 家に帰った満だったが、今日は作業というわけにはいかなかった。


「今日はレニちゃんの配信日だ。次の生配信の参考にするために見なくっちゃ」


 家に帰ってきた満は、そんな事を呟きながらパソコンを立ち上げている。

 真家レニというアバター配信者は、配信日前日と当日の朝と配信4時間前に必ず告知を入れる。特に当日の告知には内容の予告も入っている。

 今回はゲーム実況ということらしくて、満はそわそわとしていた。

 なにせ現役中学生である満は、これといって面白そうな配信ネタは持ち合わせていない。能力も軒並み平均程度の平凡な中学生だ。話術だって見張るほどのものもっていないし、アバター配信者をしていくにあたって何かしら目立つ何かが欲しいものである。


(今日のレニちゃんの配信、楽しみだなぁ)


 わらにもすがる思いの満は、配信の時間までいつも通りの生活をして過ごすのだった。


 そして、迎えた夜の9時。

 予告通り、真家レニの配信が始まる。


「こんばんれに~」


 配信が始まって挨拶をするだけで、コメント欄には挨拶がびっしりと表示されていく。これが人気配信者のコメント欄だ。


「今日は人気のオンラインゲーム、SILVER BULLET SOLDIERを楽しむよ。BULLETというくらいだから、シューティングゲームだよ。レニちゃん、こういうの得意ですからね」


『おお、これかぁ』


『ゾンビだけじゃなくて、狼男や吸血鬼も倒していくやつだよな』


『そのタイトルってオンラインゲームだったのか。すっかりオフゲーだと思ってたぜ』


『ランキング制度があるのにオフゲーなわけがないwww』


『協力ミッションもあるぞ、このゲーム』


 次々とコメントが打ち込まれていく。

 しかし、銀の銃弾の戦士とは、今の満にとっては首を傾げるネタだった。なにせ自分のアバターは吸血鬼だし、なんなら吸血鬼に少し体を乗っ取られている。

 でも、今はそのゲームの視聴者側なので、満は一度しっかりと心を落ち着かせて画面を眺めている。

 分かりやすいくらいにおどろおどろしいタイトル画面が表示される。画面の左下にはレニの顔グラフィックが表示されている。画面を見ると周辺にもいろいろな情報が表示されていて、その左下が唯一隠しても大丈夫な部分だったようだ。


「さぁ、始めていくよ。とりあえず、タイムアタックモードだよ」


 すごくテンション高めに話すレニは、早速ゲームを始める。

 BGMはどういうわけか軽快なものだった。もはやゲームの世界観とはかけ離れたものだ。


『おい、BGMwww』


『これほどミスマッチなものがあるものか』


『恐怖を和らげるための音楽か』


『タイムアタックだからいいんだよ(目そらし)』


 相当に受けているらしく、『w』の乱発でコメントがどんどんと流れていく。満自身も唖然として配信を見守っている。


「ねー、この音楽気が抜けちゃいますよね。でも、ゲームはまったく気が抜けませんよ」


 レニはコメントに反応しながら、迫りくる敵を一体、また一体と撃ち抜いていっている。レニが説明するには、敵や当たりどころによっては一発で倒れてくれないので、いかに効率よく一撃で仕留めていくかがこのゲームのポイントらしい。

 コメントの勢いが落ち着いたところで、ゲームを知らない人のためにレニが説明を始める。この間も敵を撃つ手は止まらない。

 このタイムアタックでは、フィールドには99体のMOBと1体のボスが配置されているそうで、そのボスをいかに早く倒すかというのがこのタイムアタックの目的なんだとか。

 それにしても、説明をしているというのにまったく正確無比に敵を撃ち抜いていっている。相当にレニはこういう系統のゲームをやり込んでいるのだと思われる。


『ふぇ~、はっや』


『俺もこのゲームやってるけど、しゃべりながらのこの討伐スピードは見たことないわ』


『ああ、吸血鬼すら紙くずのように……』


 なんということだろうか。迫りくる敵をほぼすべてワンショットキルである。MOBの内容はランダムとはいえ、この討伐ペースはなかなかに速いらしい。

 気が付けば満も手に汗を握って画面に見入っていた。


「さあ、90体を超えました。ボスが出ますよ」


 レニの言葉と同時に、画面に赤字で大きく『BOSS』の表示が出る。


「ボスが出ちゃうと、雑魚を無視しても構わないですよ。数は知れていますからね」


『なるほ』


『それができりゃ、苦労しねえw』


『レニちゃん、いっけー!』


 ボスの出現にレニは雑魚を無視してボスにつっ込んでいく。しかし、さすがはボス、硬くてなかなかゲージが減らない。


「さすがボスですね。でも、このレニちゃんに不可能はないのですよ」


 動きが鈍いことを利用して背後に回ってヘッドショットを決めていくレニ。それを10発も決めれば、ボスは無事に倒れてしまった。


「やりましたね。う~ん、これでもトップ10には入れませんか」


『うっそだろ、おい』


『さすがガチ勢は違うぜ』


『魔境が過ぎる』


 コメント欄も、レニの技術と世界の層の厚さのそれぞれに驚いた反応を見せていた。

 その後も、ストーリーモードでのプレイ実況も行われ、なんとも濃い1時間半が過ぎていった。


「それでは時間も遅くなってきましたので、今日はこれにて。おつれに~」


『おつれに~』


『おつれに~』


 配信を見終わった満。少し呆然として椅子にもたれ掛かっている。

 そして、何かを思いついたらしく、急に背筋を伸ばす。


「そうだ。ボクのアバターは吸血鬼なんだから、このゲームをやればネタになるかも」


 思い立った満は、早速レニが配信していたゲームについて調べ始めたのだった。

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