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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
146/324

第146話 秘密を知りたい香織

『それでは、よい黄金週をお過ごし下さいませ。ごきげんよう』


 そういって配信が切れる。


「ふぅ、光月ルナの配信って生では初めて見たけれど、すごく慣れた感じだったわね」


 ヘッドフォンを外しながら、思わず感心しているのは香織だった。

 ゴールデンウィークの長期休暇に入ったということで、参考にしようと思って香織は光月ルナの配信を見ていたのだ。


「う~ん、それにしても聞いたことのある声だったなぁ」


 香織は光月ルナの声を聞いて、何かを感じ取っていたようだった。

 それもそうだろう。光月ルナの中の人は幼馴染みである空月満だからだ。今日の配信はルナ・フォルモントの状態で行っていたとはいえ、聞いたことがあって当然なのである。

 しかし、それでありながらも香織が特定に至っていないのは、マイクを通した満の声を聞くのが初めてだからだろう。

 別に加工されているわけではないものの、マイクを通すと違った声に聞こえることはありえることだ。そのせいで香織は特定に至っていないのだろう。

 気になるところはあるものの、光月ルナの配信は今の自分にとってはずいぶんと参考になるところが多かった。

 徹底したキャラへのなりきり、コメントをしっかりと拾い切るだけの能力。今の香織にはまだまだ足りないところだった。


「わ、私も黄花マイカになり切るために、がんばるんだからね」


 香織は椅子から立ち上がると、お風呂に入るために部屋を出ていった。


 週が明けた月曜日、香織は学校へとやって来た。

 教室へと入った香織は、クラスの中をきょろきょろと見回している。

 探していた姿が見つからないと、香織は残念という感じでため息をついていた。

 香織が探していたのは、満の姿だった。

 だが、しっかりいくら見回してみても、満の姿を認めることはできなかった。


(今日は女の子かぁ。お昼休みにでも会いに行こうかな)


 どういうわけか今の香織は満とものすごく話をしたくなっていた。

 隣のクラスであるので、学校のシステム上の関係で体育の時だけは一緒になれる。だからといって話ができるかどうかは微妙なところ。

 香織は仕方なく一度考えた通り、お昼休みを待つことにしたのだった。


 迎えた昼休み。早速隣のクラスに突撃する。


「満、風斗、二人ともいるかな」


「おう、花宮、いるぞ」


 クラスに顔を出せば風斗が受け答えをしてくれた。


「あれ、香織ちゃんじゃないの。どうしたの?」


 ルナの状態である満は、喋り方に気を付けていたらしく反応が遅れていた。

 香織の方もまだ少し慣れ切っていないのか、質問に答えるのに少し間ができてしまっていた。


「う、うん。久しぶりに二人とゆっくり話したいと思ったの。いつもの場所でいいかな」


「ああ、構わないぜ。早速行こうか」


 香織の申し出をあっさり受け入れた満と風斗は、香織と一緒によく使う秘密の場所へと向かった。


 屋上へと続く階段の最奥部。そこが満たちの秘密の場所となっていた。


「それで、話って何さ」


 いつもの場所に着くなり、風斗が口を開いていた。


「うん、光月ルナについて教えてもらいたいのよ」


 香織から飛び出た言葉に、思わずむせ返りそうになる満と風斗である。

 まさか自分たちに対して光月ルナの話題が振られるとは思っていなかったのだ。


「なんで光月ルナなんだ?」


 風斗が香織に尋ねる。


「うん、昨夜の配信を見てみたの。珍しく時間があったからね」


 香織の言葉を聞いて、満はものすごく驚いていた。ただ、自分が光月ルナであることは内緒なので、なるべく顔にも態度にも出さないように気を付けながらだ。

 アバター配信者の中の人バレは大事件であるし、中の人がまさか男女の性別がしょっちゅう変わるなど分かったら、非常に面倒この上なしだからだ。それだけ満は爆弾案件を抱えているのである。


「そ、そうなんだ。僕もよく見ていて気に入ってるんだけど、花宮さんはどうだったかな」


 思い切って香織に話し掛ける満ではあるものの、目があからさまに泳いでいる。あまりにもひどい状態に、風斗は心の中で「何やってんだよ」とツッコミを入れていた。


「うん、とても落ち着いていて慣れているって感じだった。コメントにも反応しながら、それでいて淡々と進めている感じだったかな」


「へえ、花宮にはそう見えたんだな」


 香織が話す内容を聞きながら、風斗はそのような評価を下していた。


「まあ、光月ルナは吸血鬼って設定だからな。そもそも人間社会には関心が薄いって設定だ。淡々と感じるやり取りも、そういった設定の影響だろうぜ」


「詳しいわね」


「まあな。俺は最古参だからよ」


 風斗は自慢げに話している。

 そう、最初期の頃の同接3のうち二人は、実は身内も身内だったのだ。一人は世貴、もう一人が風斗だったのだ。

 そんなスタートだった光月ルナも、チャンネル登録者数は5万超え、同接も常に5桁を叩き出すほどになっていたのである。

 ゆえに風斗は感慨深いのだ。


「さあ、じゃんじゃんと質問してくれ。答えられる範囲でまとめて答えてやるぜ」


「分かったわ、遠慮なく質問するわよ」


 こうして、本人がいる前で風斗と香織との間で問答が始まったのだった。

 この問答は(本人)が困惑する中、昼休みが終わるまで続けられたのだった。

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