表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
142/316

第142話 ブイキャスでの話題

 新学期が始まってからというもの、特に問題もなく時間が過ぎていく。

 問題があるとしたら、満が時々女性になってしまってクラスを間違えかけることくらいだった。


 気が付いたらあっという間に月末。世の中はゴールデンウィークと呼ばれる期間に突入していた。

 満はいつものように配信をしながら、時折風斗と出かけている。

 そして、香織はというと……。


「おはようございます」


「おはよう、マイカちゃん」


「あっ、ぴょこらちゃん。今日も一緒?」


 黄花マイカを演じる香織は、今日もVブロードキャスト社を訪れていた。

 長期休みに入ると、学生も都合が合わせやすくなるため、こうやって日中の配信の予定を組まれるのである。


「おはようございます、ぴょこらちゃん、マイカちゃん」


「おはようございます、ふぃりあさん」


 今日は四期生である女性三人が勢ぞろいで配信を行う。

 ふぃりあは免許を持っているので自力でここまでやって来ていた。マイカとぴょこらは社員による送迎である。


「勝刀さん、今日もいらっしゃらないんですね」


「仕方ないですよ。彼の仕事は交代制ですからね。なかなか都合が合わせられないみたいです」


 四期生の中では唯一の社会人である茨木勝刀は、都合が合わせにくい。会社の方も無茶を振ってくるのか、余計に穴が開くことがある。

 そのために、今年デビューした四期生の中では、配信数ではかなり水をあけられていた。でも、まだデビューから二か月半なので、リカバリーは可能な範囲である。今後の彼の活躍に期待である。


「それにしても、本当に三人でっていうのは初めてかしらね」


「そうですね。私たちは見ての通り学生ですから、平日の配信は厳しいですからね」


「それもそっか。私も週末はバイトを入れているから、余計に顔を合わせないものね。はあ、これだけ可愛い子が相手なら、もっと頑張りたいのにね」


 ふぃりあはため息をついていた。

 三人は控室で雑談に花を咲かせている。

 それというのも、配信予定時間よりも早めに集合したためだ。

 三人の配信は午後からだというのに、お昼は会社が用意するからといって午前中から集まってもらっていたのだ。


「どんなご飯が出るんですかね。すっごく楽しみです」


「仕出しのお弁当でしょ。普通の会社ならそんなものでしょ」


「とりあえず、それは運ばれてきてからの楽しみですね」


 うきうきしているマイカに対して、ふぃりあもぴょこらもものすごく落ち着いていた。性格の違いがよく分かるというものだ。


「まだお昼まで時間がありますし、別の話でもしましょうか」


「それは賛成ですね。それで、何を話しますか?」


「五期生のことかしらね」


 まだお昼が運ばれてこないし、打ち合わせまでも時間があるので雑談に入っている。

 ここで話題が出るのは、春休み中に告知のあった五期生募集のことだった。

 四期生のお披露目は二月の頭だった。そこからたったの二か月で発表された次の五期生の募集。気にならないわけがなかった。

 同じ会社に所属する仲間であり、配信の枠とファンを取り合うライバルになるのだから当然だろう。


「一番の驚きは、この本社スタジオ外からの配信を解禁することでしょうね」


「そうですね。それでやめられていった方もいらっしゃいますからね」


「三期生までの方で訴えてくる人も出てくるんじゃないかしらね」


「十分あり得る話だけど、それは会社の話だから、私たちは気にしなくていいと思うわよ」


 ふぃりあがぴょこらの懸念をひとまず脇へと置かせる。

 この問題に関してはVブロードキャスト社が向き合うもので、自分たちには関係のない話だからだ。


「ホームページを確認してきたけれど、募集に関しては七月いっぱいといったところね」


「ずいぶんと後ですね」


 ふぃりあが話す書類選考の募集時期を聞いて、マイカはちょっと驚いていた。


「多分、会社としても急な話だったからでしょうね。それと、私たち四期生たちの体制もまだきちんと整っていないから、その安定を見込んでの余裕なんだと思うわ」


「なるほど、そういうことね」


 確かにその通りである。デビューからまだ三か月にも満たない状況では、新人たちはまだまだ手がかかる。ある程度自信を持るようになる時期まで待つのは、基本というものだろう。

 それで、デビューから半年を迎える八月頭から選考にかかれるように募集期間を設置したのだと思われるのだ。


「とはいえ、早い段階で私たちに後輩ができるのは楽しみですね。二人もそう思わないかしら」


「はい、楽しみです!」


「そうですね」


 ふぃりあの問い掛けに、マイカとぴょこらは実に対照的な反応を見せていた。

 ちょうど話がひと区切りついたところで、森が入ってきた。


「ごめんなさい、お待たせしたわね。お弁当が来たから、食べながら打ち合わせをしますよ」


「分かりました」


 森に言われて、三人は改めて姿勢を正している。

 休憩室にお弁当が運び込まれ、それを食べながら今日の配信内容について入念に打ち合わせをする。

 そして、迎えた午後2時、今日のマイカたちの配信が始まったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ